追憶の迷宮7
ホーンバットの角を回収した後、三叉路のところまで戻って奥へと進む。
「そういえばあの角ってどうするんだ?」
黙々と歩いていたが、ふと疑問に思ったことをユキトに尋ねてみた。
「ギルドが買い取ってくれる。確か解毒剤を作るときに使う材料の一つだったはずだ」
「へぇ、薬になるんだな。てっきり討伐証明として使うのかと」
「そういうものもある。たまたまあの角は買い取ってもらえるだけだ」
「解毒剤にも使われますが、どちらかと言うと二日酔いの薬に使われていますね。なので需要はそれなりにあります」
ユキトが「あれ、そうだっけ?」という顔をしている。
そんな風に少し気が緩んでいるときの出来事だった。
―――。
「ん?」
何か踏んだような気がする。立ち止まり、恐る恐る回りの地面を見渡してみるが何も無い。
「どうした?」
「いや、何か踏んだような気がするんだけど何も無さそう?」
「エレナ」
「スイッチ式のトラップは見当たりません。魔術的なトラップが発動した形跡もないですね。今のところ何か起きる気配も無いので、おそらく気のせいでは?」
気のせいでは? と言われればそうであったような気がしてくる。
実際に回りには何もなく、エレナさんがサーチで調べたようだが何も反応はなかったみたいだ。
「少し気を付けながら進むか」
「そうですね、マサキさん」
「はいっ」
「真ん中へどうぞ。先頭にユキト様、真ん中にマサキさん、最後が私という並びで当分様子を見てみます」
「了解です」
サーチという魔術がこの世界の便利魔法トップ10に絶対入るだろう、そんなどうでもいいことを考えていると、いつの間にか話は進んでいたようだった。
それからはおかしな事が起こることも無く、しばらく歩いていると先程の部屋と同じような扉が視界に入ってきた。
サーチで作り出したマップには部屋の中に魔物らしきアイコンがまたもや5体。
「この部屋がちょうど一階の中間地点だ。ここからは少しずつ魔物と遭遇するようになる」
まじかーと思わなくもないが、さっきの脳震盪ホーンバットを思い出すと今度こそきちんと仕留める、という思いの方が強かった。
「今回はゴブリンが5体みたいですね。横に一列という感じなので右2体は私が、左2体はマサキさんが、中央の1体をユキト様が、という割り振りでよろしいでしょうか?」
「マサキはそれで大丈夫か?」
「たぶん大丈夫だろう」
「そうか、ならばそれでやってみようか」
「では開けます」
そう言うと杖を構えたエレナさんが最初に入り、ユキトと俺が付いて入る。
―――。
「!?」
まただ、また何かを踏んだような気がする。
「アイスニードル!」
「…アイスニードルッ!」
どうしようか一瞬固まってしまったが、エレナさんの魔術に続けて俺もアイスニードルをゴブリンに撃ち込む。それ自体はエレナさんのアイスニードルと同じように、綺麗にゴブリンの顔面に突き刺さる。
そしてゴブリンに向かって行ったユキトが真ん中のゴブリンの頭を落として戦闘終了。
正直なところ、過剰戦力である。そして今まで感じていた気持ち悪さもだいぶ小さくなっていた。
「…」
「マサキ、気分が悪くなったのか?」
何を踏んだのか気になり戦闘が終わって黙っているとユキトが話しかけてきた。
ユキトには気分が悪いように見えたのだろう。確かにまだゴブリンの死骸を直視することは難しいのだが、それどころでは無いと思える程度には慣れたのだろう。
「いや、この部屋の入り口付近でまた何か踏んだような気がする…」
そう言いながら部屋の入り口付近、そう感じた辺りを見つめる。
「一度しっかりと確認してみましょうか。《空間把握》」
そう言うとエレナさんの足元が転移の時と同じように光り始める。
「《標識―――マサキ》」
次に俺の名前が呼ばれたことで俺の足元にも光が集まり、これもまた転移の時と同じように模様を描いていく。
「《起動》」
最後に「起動」とエレナさんが唱えると、俺の足元の魔法陣が通路まで広がり集束する。
「…」
「どうだった?」
「マサキさんとダンジョンの間に、不可思議な魔力の繋がりのようなものが出来ています」
「魔力の繋がり、か。一度戻って調べてみた方が良さそうだな」
なんだか不穏な言葉が聞こえてきたような気がする。
ダンジョンと魔力的な繋がりってどう考えてもヤバそうだろこれ…。
「そうですね、下手に動くのも危険かもしれないので私の転移で一度戻りましょう」
「すまない」
そういうとエレナさんは再び詠唱に入る。
「なあユキト、実際俺ってどういう状況なんだ?」
「さっきエレナが言った通り、ダンジョンとの間に魔力的な繋がりができているそうだが…申し訳ないがわからない」
Oh、ユキトさんでもわからないのか。
「まあしょうがない、ということで」
ダンジョンってやっぱり怖いとこだよな、そう思っているとエレナさんの詠唱が終わり「起動」という言葉が聞こえてきた。
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