追憶の迷宮3
「くそっ! これなら!!」
「…」
カチャ、カチャと音が響く。その度に俺は追い詰められる。
何でだよ、なんでこうなったっ!?
「ならっ…!!」
「マサキ、それは悪手だ」
「あっ………」
最早、俺は風前の灯というやつだ。しかし何か、何か手はあるはずだと頭を回転させる。
普段あまり使わない頭をフル回転させ、どうにかしてこの状況を打破できないかと考える。
どこだ。何だ。どうすれば良い。
必死に考え、どうにか考え出した答えは全てユキトに否定される。
それは無意味だ、と。
何の意味もない、と。
そう、もう何もかもが無駄な足掻きなのだろう。
先程から何度も、どうしてこうなったのかと考えているが答えは出ない。
そして俺は敗北した。
「ユキト様の勝利ですね」
「チクショーーー!!」
ボードを見ると黒一色と言えるほど黒い駒が多く、所々に白い駒があるくらいだ。
小さい頃によくやったこの『リバーシ』というゲーム。その頃は結構勝っていたはずなのだが、ユキトには惨敗である。
角を取った者が有利にゲームを進められるというセオリー通り、四つの角は全て黒色だ。
最初は俺が勝っていたのだ。勝っていたのだが、気がついたら一つ目の角を取られていた。角を取られたがそれでも白の駒が多く、俺が有利な状況は続いていたと思う。
二つ目の角が取られて危機感を覚えた俺は、角を取られないよう慎重にゲームを進める方針に変えた。そのおかげで二つも角を取られている割には白い駒が多く残っていた。そのため、ゲームは順調に進んでいると感じていた。
しかし何の前触れもなくあっさりと、白いボードが黒く塗りつぶされていった。
白い駒は大量に黒い駒へと変わってゆく。けれど同じように黒い駒が白い駒へと変わることはなかった。
やはり角を取られたことが敗因だろう。
「マサキさん、次は私と勝負しませんか?」
「望むところです」
そして続く敗北の連鎖。
展開が全く一緒だった。違う部分と言えば白い駒がゼロという所か。
最初は俺が有利で、最終的には真っ黒。今回は完全に真っ黒で、駒を全て置く前に決着がついてしまっている。
打ちひしがれる俺をニヤニヤと見つめてくるエレナさんと苦笑しているユキト。
「リバーシは序盤に動きすぎると負けてしまう。序盤はあまり相手の駒を取らず、自分の駒が取り尽くされないよう気を付ける。そしてできれば中心付近に自分の駒を一つ置いておく。このゲームは終了時に、自分の駒の数が相手の駒の数を上回っていれば勝ちなんだ。序盤で大量に駒を持っているということは終盤で大量に駒を取られやすい。そんな考えでいいだろ」
見兼ねたユキトがコツのようなものをおしえてくれた。
ただ多く取れば良いと考えていた俺と、戦い方を知っているユキトやエレナさん。勝負すれば後者が勝つのは当たり前だった。
異世界にリバーシがあったことも驚きだが、異世界でリバーシの勝ち方を教わることの方がもっと驚きである。
ちなみに、リバーシは勇者によって広められた娯楽の一つだ。娯楽があまりなかったこの世界では爆発的な人気を博しており、現在も貴族や平民の垣根を越えて親しまれている。
そしてチェスも勇者が広めたのだが、大人から子供まで楽しめるリバーシの方が人気は高いようだ。
「さて、次はこれだ」
そう言って先程のリバーシと同じようにユキトの拡張鞄から取り出されたのは木の箱のようなものだった。
「それも勇者が広めたものなのか?」
「そうだ。勇者がいた国ではリバーシやチェス以上に親しまれていたらしいぞ」
ユキトが箱を開けるとそこにはカードが入っていた。
そのカードを取り出し、ユキトが広げたそれはトランプだった。元の世界との違いはパッと見たところマークくらいだろうか。スペード、ダイヤ、クローバー、ハートではなく剣、槍、杖、弓だった。
「冒険者御用達のトランプだ。遊び方が複数あり、賭け事にも使われる道具だ。マサキ、遊び方は?」
「だいたい知ってると思う」
「じゃあまずは三人で7並べでもしようか」
言うが早いかユキトはカードをシャッフルして全員にカードを配っていく。
「私からですね」
そう言いながらエレナさんが槍の7を出した。
残り三枚の内、俺が剣と弓の7を出し、残りの杖の7をユキトが出してゲームが始まった。
読んでくださった方に感謝。




