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異世界転移なんてありふれている  作者: たかしゅー
ラントヴァッサ王国
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追憶の迷宮2

 エレナさんのお勧めの店に入り、エレナさんに注文してもらう。

 その際聞こえてきた言葉に驚いた。チャーハンに八宝菜に水餃子、そして麻婆豆腐。どれも馴染みのある料理名だったからだ。最後の『リトチリ』はよくわからなかったが、なんとなく響きがエビチリのようだ。

 そして運ばれてきた料理はやはり馴染みある中華料理であり、味も食べ慣れた中華料理だった。


「これって勇者が広めた料理だったりします?」


「はい。勇者が広めた料理、『ちゅーか』です。他にも『いたりあん』や『ふれんち』などもありますが一番有名なのは『わしょく』ですね」


 よくそんなに広められたな、勇者。そしてよくここまで味を再現できたな勇者。と思うくらい食べ慣れた味であった。おそらくイタリアンやフレンチもかなりの精度で再現されているのだろう。

 そしてこの『リトチリ』も名前こそ変わっているがエビチリだった。いないのか仕入れられないのかはわからないが『リト』というものがエビの代わりに使われているエビチリというところだろう。


「リトチリも勇者が広めたんですか?」


「そうです。本当はエビを使って作るエビチリを広めたかったようなのですが、なかなかエビが見つけられずエビチリの代わりにできた料理がリトチリです。現在は港町などに行けばエビチリが食べられるのですが、内陸ではリトチリが主流ですね」


「やっぱり内陸ならエビをわざわざ運んでくるより、木の実の方が安いからリトチリが広まったんですかね」


「? いえ、リトチリは木の実ではなくシェルリットという魔物の目玉ですよ?」


「ブフッッッ!!!!!?」


 思わず口の中にあったリトチリを吹き出してしまった。


「汚いですね、マサキさん」


「マサキ、大丈夫か?」


「わ、悪い…」


 まさかこれが目玉だったとは誰が想像できよう。

 このリトチリ以外は普通の中華だ。そのせいで確かに名前は異世界風なのだが、何の警戒もなく食べてしまった―――目玉を。

 魚の目玉が食べられるということは知っているが、俺自身は食べない派である。美味しい美味しくないの問題ではなく、生理的に無理なのだ。

 うわっ、確かに目玉だ。

 リトチリをつつきながら観察しているとソースで分かりにくいのだが、元の色は白色のようで一部に黒目部分らしきものが見えた。


「食べないのか?」


 と聞かれても、もう無理だ。食欲なんて消し飛んだ。


「もう食えねぇ…」


「そうか」


 それからしばらくの間、目玉を見ないよう目を瞑ってユキトたちの食事が終わるのを待った。


---


 中華料理を堪能した―――リトチリの衝撃は大きかったが、美味しかったのも事実である―――次は、予定通り食料の買い出しである。

 案内されて入った店はダンジョン用に保存の効くものばかりを売っている食料品店だった。

 そこでパン・塩づけ肉・根菜・果物・調味料こういったものを、だいたい2週間分買う。拡張鞄はあくまでも『拡張』なので、保存の効く食品が必要なのだ。それらの会計を済ませ、本日俺とユキトが泊まる宿へと向かう。これもエレナさんのお勧めだが、級の低い冒険者も泊まりやすいリーズナブルな宿らしい。

 ちなみに拡張鞄のワンランク上に時空鞄というものがあり、これが容量無制限だったり無制限に近い容量だったり、鞄内の時間を停止させたりできる物らしい。ただし本当に貴重なものだとか。


「現在確認されている時空鞄は、全て超巨大ダンジョンと呼ばれているダンジョンの下層から持ち帰られたもので、それを所持しているのは国か一等級冒険者だ。多くの者が時空鞄を手に入れることを夢見て、けれど手に入れられない、そんな物だな」


「神器クラスの魔法具です。それを巡って血みどろの争いが起こり、一つの領土が焦土と化した、なんていう話もあります」


「神器?」


 なんとなく想像はできる。とりあえずヤバイ物だ、と。


「神器と呼ばれるものはそのどれもが『神の奇跡を起こす』と言われている。『神が創った魔法具』や『神を殺すために造られた魔法具』などとも言われているな」


「神器はどれも言い表すことのできないくらいデタラメな力を有していますが、神器に選ばれた者のみがそれを使えます。なので学術都市国家シーアが現存する神器の七割を保持するなんていう現状ができてしまったんですが…」


「小国からすれば使えない神器より時空鞄や金の方が価値がある。結果として神器より希少な魔法具を巡って血みどろの争いが起こったわけだ」


 神器なんてろくでもないものだろうと考えたのだが、まさか時空鞄の方がろくでもないものだとは思わなかった。

 あと学術都市国家って魔導騎士を貸し出している国だったような。


「魔導騎士ってそのシーアって国が作ってるんだっけ?」


「そうだ。シーアでは神器の研究が盛んなんだが、その研究成果の一つが魔導騎士だ」


「じゃあもしかしたら、魔導騎士もオリジナルは神器だったりする可能性もあるのか」


「大いにあり得るな」


「そんなに簡単に研究ってできるものなのか?」


「簡単、ではないだろうが不可能ではないのだろう。だからこそ魔導騎士なんていうものが存在している」


「研究することすら危険な神器がいくつも封印されている、なんていう話を聞いたことがあるので何度も失敗しているのは事実だと思いますが」


「そもそも研究は魔導騎士や危険なものだけではなく、人々の生活に役立つ研究も多い」


「マサキさんはまだ疑問があるかもしれませんがそれはお部屋でユキト様を質問攻めしてもらえれば。とりあえずここが私のお勧めの宿『ねぐら・ポット』です」


 そう言いながらエレナさんが扉を開けて入って行った。

読んでくださった方に感謝を。

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