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異世界転移なんてありふれている  作者: たかしゅー
ラントヴァッサ王国
14/36

トリフト領にて11

 街に入り、寄り道などはせずにベジタブルまで帰って来た。

 相変わらず食堂部分は大盛況だが、カウンター前の空きスペースに作られた即席テーブルは空いているのが見える。


「ここまで賑わうということは料理が美味しい証拠でしょう」


 扉を開け、中の様子を見たエレナさんはフリーズしたが、すぐに持ち直したようだ。 


「ありがとうございます、美味しいですよ!」


 エレンさんがボソッと呟いた言葉に、いつの間にかそばに来ていたサラが反応した。

 確かベジタブルに入った時には向こうの方にいたはずなのに、いつの間にこちらへやって来たのだろうか。つい一瞬前まで、向こうの方でおっさんにちやほやされていたはずだ。

 そんなはずは無いと分かっているが、エレナさんが転移させたのではないかと思ってしまう。


「なあサラ、いつの間にそばに来てたんだ?」


「マサキ達が入って来てすぐに来てあげたんだよ、嬉しいでしょ?」


「このブーイングの嵐がなければな!」


 俺がサラに話しかけた途端に起こったブーイングの嵐はすぐに笑いへと変わったが、このテンションは本当に疲れる。今日は休ませてくれ、と懇願するか悩む。


「マサキ、入り口で突っ立ってないで奥に行った行った!」


 そう言いながら俺はサラに背中を押され、ユキトとエレナさんが俺に付いて来る。もちろん奥とは最初に確認した即席テーブルのことだ。

 即席テーブルまで来てみると、遠目からは気づかなかったが箱ではなく、少し古いがちゃんとしたテーブルとイスになっていた。

 エレナさんが来るなど想定はされておらず、イスは当然二個しかないので今日も俺は箱に座ることになったのだが。


「お姉さんも食事はユキトさん達と一緒でよろしいですか?」


「はい、それでお願いします」


「かしこまりました!」


 俺に絡むことなく、注文を確認してすぐにサラは厨房の方に入って行った。


「エレナさん、こういうところで食事ってよくするんですか?」


「そうですね、よくという程頻繁ではありませんがたまにこういった食堂に来ます。ここまで混んでいるところは初めてですけど」


 勝手にこういう大衆食堂などで貴族は食事をしないと思っていたが、一等爵であるトリフト家とルーデンドルフ家の人が普通の食堂で食事を取る。まあユキトは家を出て今は冒険者なのだが。

 エレナさんやユキトを見ていると、貴族は横暴で平民を見下しているかそもそも平民などに関心が無いものだというイメージが間違っていたように思える。


「貴族ってこういうところ嫌いそうなイメージだったんですが、案外そうでもないんですね」


「マサキさん」


「はい?」


「私やユキト様が特別なだけです」


 少しエレナさんの表情が険しくなったような気がした。


「私やユキト様に対する態度。これを他の貴族の前ですれば簡単に首が飛ぶものだと思っておいて下さい。トリフト家かルーデンドルフ家寄りの貴族なら大丈夫かもしれませんが、ヴォワール家とグーリエ家寄りの貴族ならば必ず首が飛びます」


「そもそもそいつらと関わる気はなく、マサキを関わらせる気もないのだがな」


 エレナさん以上に険しい表情でユキトが口を挟む。


「ユキト様、それは不可能です。近い未来必ず関わることになります」


「面倒なやつらだ」


 いつの間にかユキトとエレナさんが二人の世界に入っていた。二人の世界といってもイチャイチャしているわけではないのだが。

 エレナさんの口からサラッと出てきたヴォワール家とグーリエ家の問題。いや、トリフト家、ルーデンドルフ家、ヴォワール家、グーリエ家の四家の問題か。エレナさんは婚約云々の話をしに来たのではなく、もっと大きな問題について話しに来たのではないだろうか。


「お待たせしました! ベジタブル特製セットです!」


 この空気どうしたものかと思っているところに、ちょうどサラからアシストが入った。本人は何も考えていないと思うが、タイミングがナイスである。

 今日は野菜炒めと野菜スープ、野菜の天ぷらのようなもの、パン、という献立だった。野菜炒めと野菜スープとパンは固定らしい。


「冷めないうちにお召し上がりください!」


 今日は忙しいのかそれだけ言うとサラは厨房の方へ戻っていった。


「冷めないうちに頂きますか」


「そうだな」


「そうですね」


 今日のスープは少しスパイシーな味だった。スパイシーと言ってもそこまで辛くなく、具の野菜を引き立てるすごくいい味だった。

 昨日のスープは強烈な旨味のスープがメインだったが、今日はスープに引き立てられた具が「俺を食せ」と強く訴えてきていたように感じる。

 そしてやはり、気が付いたら俺の前から料理は消えているのだった。


「確かにありえないくらい美味しいのですが、マサキさんは食べ方が乱暴すぎます」


 険しい表情は収まったが、代わりに呆れた表情で注意されてしまった。

 その後はユキトとエレナさん共に先程の話題は一旦置いておくことにしたのか、軽い雑談をしながらゆっくりと味わって料理を食べていた。

 途中、あまりにも物足りなさそうな顔をしていたのかユキトが野菜炒めを分けてくれたのだが、それを見たエレナさんがボソッと「打ち首」と呟いてビクッとなってしまった。その反応をユキトとエレナさんに笑われたが、険しい表情であーだこーだと話し合うより断然マシなので甘んじて受け入れた。


読んでくださる方が増える喜びを知る。

ありがとうございます!

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