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8話 ダンジョンー1階層 その2

「あ、トーヤさんいけません、離れて!!」


「え?」


 突如としてミイの叫び声が洞窟内に響き渡った。


 その直後、静寂を保っていたはずの古びた宝箱が、『ギギギ……』と不気味な軋み声を上げて一気にその口を開く。内側に並ぶのは、金属の装飾などではなく、びっしりと生え揃った鋭利な牙と血走った巨大な眼球だった。


  凄まじい勢いで床を蹴り、首元を目指して跳びかかってくる!


 避ける暇はない!俺は無我夢中で眼前に向けて両手を強く突き出した。


――ボンッ!!

 

 両手から放たれた猛烈な炎の塊が、空中で開かれた宝箱の大きな口へと激突する。火花と熱風が吹き荒れ、不意を突かれた魔獣は苦悶の声を上げながら後方へと怯んで着地した。


(危な……! 直前でなんとか魔法が出てくれて助かった……!)


 額に汗が伝うのを感じながら、急いで後ろへと跳び退き、身構えていたミイの元へと素早く戻った。


「あれは【パンドラ・ボックス】、深層にしか生息しないはずの魔獣です。想像以上の強敵です。ここは一度逃げましょう」


「分かった、走ろう!」


 俺達は来た道を全力で引き返そうと足を踏み出す。


――ガァンッ!!


 次の瞬間、突風のような風圧と共に重々しい衝撃音が目の前で轟いた。

 視線を向けると、怯んでいたはずのパンドラ・ボックスが俺たちの頭上を飛び越え、いつの間にか進行方向を完全に塞ぐ形で着地していたのだ。木と金属でできた武骨な箱のくせに、信じられないほどの跳躍力と速さだ!

 鋭い牙をガチガチと鳴らしながら、パンドラ・ボックスは行く手を阻むようにじわじわとこちらへ距離を詰めてくる――。


「ぐっ、トーヤさん戦うしかありません。私が魔法で倒します。トーヤさんは身を守る事に集中して下さい」


「わかった!」


 ミイの殺気が凄い、アイツはかなり強いのだろう。俺はまだ足手まといになるしかない。身を守るために剣を取り構える。


 パンドラ・ボックスの頭上に3つの魔法陣が現れ、その瞬間、炎、雷、氷の魔法が噴射する。


「【地獄の業炎】(じこくのごうえん)、【天雷一閃】(てんらいいっせん)、【氷刃・神威】(ひょうじんかむい)!!」


 パンドラ・ボックスは素早く魔法をかいくぐり回避する。


「くっ! 箱のくせに素早いですね!」


 パンドラ・ボックスはミイの懐に入り体当たりをしようとする! 


「土の壁(アーセン・ウォール)!!」


 地面から土の壁を出現させパンドラ・ボックスを壁に衝突させ回避する。


 凄い!これがS級ランクの戦いか。ただ見ているだけしか出来ない。


 態勢を整えたパンドラ・ボックスはミイを強敵とみて、ターゲットを俺に変えた!


「しまった!トーヤさん逃げて下さい!」


 パンドラ・ボックスは俺めがけて体当たりをする。「ぐっ!」必死に剣で防ぐ。噛みつき、体当たりの攻撃を剣で防ぐのがやっとだ。俺とパンドラ・ボックスが近い為、ミイも魔法で攻撃出来ない。


「トーヤさん、なんとか離れて下さい!」


「わかった、やってみる!」


 パンドラ・ボックスの体当たりを剣で受け止めると、「おりゃー!」力尽くで振り払った。パンドラ・ボックスが空中に投げだされた瞬間


「天雷一閃(てんらいいっせん)!!」


 四方八方に魔法陣が現れ、雷が放出された。


 ズドドドド―――ン!!


「やったか」


「まだです!」


「【地獄の業炎】(じこくのごうえん)!!」


 ミイは魔法を更に発動して攻撃している!

 俺も魔法を撃てれば援護できるのだか。

 ………そうだ!

 俺は左手を剣の柄から離し、目の前に出すと集中して魔法陣を出した。その魔法陣の中心に向けて剣の刃をゆっくり差し通す。

 

――バチバチバチッ!!


 イメージ通りだ! 魔法陣から溢れ出た蒼白い電流が、勢いよく剣の刃全体へと巻き付き、バリバリと眩しい音を立てて激しく励起する。


「いっけぇぇ!魔法剣、雷(いかずち)!」


 パンドラ・ボックスの煙が漂う影めがけて剣を思い切り振り抜いた!

 刃から解き放たれた雷光の斬撃波が空気を引き裂き、パンドラ・ボックスに直撃する。

 夢中で何度も雷の斬撃を連続で撃ち込んで爆発を巻き起こした。


 やがて静寂が戻り、激しい爆炎と黒煙がゆっくりと消えていく。

 

 倒したのか?煙が消えると、パンドラ・ボックスは宝箱の蓋が外れて下の箱はバラバラになってひっくり返っていた。残骸の側には魔石が転がっていた。


「はぁ、はぁ、ミイ、倒したのか?」


「はい、トーヤさん!倒しました!深層の魔獣を倒しましたよ」


 全身の緊張が切れたのか俺は立っていられなくて座り込んだ。ミイは安堵の笑みを浮かべ、魔石を拾い俺の元にやってきた。ゴブリンなんかより透き通る綺麗な魔石だ。


「トーヤさん、さっきのは何をしたんですか?」


「いやぁ、まだ魔法で援護で出来ないから、剣に纏わせて斬撃として飛ばしてみようと思って。やってみたら出来ちゃった」 頭を掻きながら笑って答えると、ミイは呆れたように目を丸くして、ハァと小さな溜め息をついた。


「出来ちゃったじゃないですよ……(普通はそんな直感で剣と魔法を融合なんて出来ません…。なんてセンスの持主なの……)」


「でも殆んどミイの魔法で倒した様なものだからね、凄い魔法の威力だね」


「上級魔法ですが、私なりのアレンジが入っています。基本の魔法がありますが、熟練者はアレンジを入れて差別化をしてます。同じ魔法を使うのは嫌なんですよ」


「へぇ~、まだまだ覚える事一杯だ。まだまだ助けて貰う事だらけだ。これからもよろしく!」


「こちらこそです。今日はもう帰りましょう」


「そうだね。疲れたよ」


 起き上がり、魔石を袋にしまう。


「これも持って帰ろう」


 そう言ってバラバラになったパンドラ・ボックスを回収した。


「持って帰ってどうするのですか?」


 ミイが困惑しながら尋ねる。


「いい事思いついちゃったんだよねぇ、よし!帰ろう」 


「……変な事しないで下さいね」


 重い荷物を引きずりながら帰路についた。


(もう、今日は魔獣に会いませんように……)


 ー初めてのダンジョンの成果ー


魔獣ーゴブリン5体(内2体ミイが倒す)

   パンドラ・ボックス1体


手に入れた物ー魔石6個 


       壊れた機械兵


       パンドラ・ボックスの残骸


読んでいただきありがとうございました!


次回投稿 11/5 7時 予定


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