4話 調合で器用さ覚醒―1
翌朝、宿で朝食を二人で食べながら、
「こっちの世界のご飯も美味しいな。三食付いているのは助かるね」
「はい、良心的な宿で良かったですね」
この宿は3食付きで一人一泊15ゴールド。二人で30ゴールド、10日間だから300ゴールド。ミイが立て替えてくれているがやっぱりお金は返したい。それには最低300ゴールドは稼がないといけない。
「ところでミイ、今日のその服は何?」
ミイは麦わら帽子にオーバーオールの姿だ。
「はい、今日はポーションの調合ですよね。薬草を摘みにいきますのでこの服がいいかと」
「いいけど、この世界では浮いてない?」
「ふふ、大丈夫ですよ」
ミイは笑いながら答える。どうやらミイの服は魔法で編み込まれていて自由に変身出来るそうだ。便利でいいなと羨ましかった。
「さぁ、飯も食ったしギルドに行くか」
「はい!」
ギルドに入ると今日もメリッサさんが明るく受付の対応をしていた。
「メリッサさん、おはようございます」
「あ!おはようございます、クロフトさん。今日はお仕事の受注ですか?」
「はい、ポーションの調合納品をお願いします」
「わかりました。ポーションの納品ですね。ポーションを作る為の薬研《やげん》やろ過の紙、空き瓶を支給します。何処に届けますか?」
「宿屋にお願いします」
「では、宿屋に届けて置きますね。10本納品で300ゴールドです」
「ありがとうございます」
「納品お待ちしています」
ギルドを出るとミイが待っていた。何か皆に見られているような…。本人は何も気にしていないようだ。(やっぱりその服はこの世界は目立つなぁ)
町を出てミイに話しかける
「薬草は何処にあるのかな?」
「薬草は何処にでも生えてますが、町の近くは他の人が採っていてあまり量がないですから、少し離れた所に行きましょう。魔獣に気をつけてくださいね」
「わかった、あっちの丘の方へ行ってみよう」
町から少し離れた丘の上にやってくると薬草が沢山生えていた。俺は万能ナイフで薬草を刈りだした。ミイも手伝ってくれている。ミイは魔獣が近寄らない様に結界を張っていてくれていた。本当に魔術師なんだ。
「これくらいの量でいいのかな」
「そうですね。十分だと思います」
ある程度薬草を摘み小川で薬草を洗う。汚れを落とした薬草を持ち一度宿屋に帰ることにした。
宿屋に戻るとギルドから薬研等が届いていた。(
ギルドの仕事は早いな)
メリッサさんから貰った【調合指南書】を見てみる。
1.薬草を薬研で磨り潰す
2.不純物を取り除く
3.ろ過をしながら水を加える
4.瓶に詰める (黄緑色)
そんなに難しそうではない。指南書を横目に調合を始めた。
(こんなもんか、ちょっと飲んでみるか)
ひと口飲んでみると
「ゲホゲホ、うげぇぇぇ、まずぅぅぅ」
想像通りの草の味。
「トーヤさん、大丈夫ですか?」
ミイがコップに水を入れて渡してくれる。
「ありがとう、大丈夫だけど不味い。こんな不味いもので回復出来るの?」
「ポーションは飲んでもいいんですが、傷に塗ってもいいんですよ」
「そういう問題?青汁より不味いよ。飲みやすくし改良しないと。果物屋にリンゴとブドウがあったね、混ぜてみよう。」
「なら私が買ってきますね。トーヤさんは残りの薬草を磨り潰していて下さい」
ミイが軽やかな身ごなしでスッと立ち上がり部屋から出ていった。
(またミイにお金を使わせてしまったな。俺はまだお金がないからしょうがないけど。早く稼がないと。)
万能ナイフで机の上に並べた薬草の茎を一つひとつ丁寧に切り落としていく。不思議なことに、以前の自分では考えられないほど思った通りに手がスルスルと動き、刃先を繊細にコントロールできる。こちらの世界に来てから、どうやら指先の手先や器用さも格段に上がっているようだ。
茎を綺麗に取り除いた葉をすり鉢へ移し、薬研を使ってさらに細かく磨り潰していく。葉の繊維を潰し、混ざり込んだ不純物を丁寧に取り除いていると、部屋の扉が開き、ミイが息を切らすことなく爽やかに帰ってきた。
「トーヤさん、買ってきましたよ」
「ありがとう、ミイ」
ミイから瑞々しいリンゴとブドウを受け取る。
リンゴの皮には豊富な栄養が詰まっているため、万能ナイフで芯の部分だけを綺麗にくり抜き、皮ごと細かく刻んですり鉢で入念に磨り潰した。ブドウの方は手絞りでギュッと果汁だけを搾り出し、小鉢に溜めておく。
磨り潰した薬草のベースに、果肉感を残したリンゴと少量の水を少しずつ加え、滑らかになるまで慎重に混ぜ合わせていく。そして最後に、美しい紫色のブドウ果汁を注ぎ入れ、丁寧にろ過してから透明な小瓶へと詰め直した。
出来上がったポーションは、さっきより色が濃いが緑色のポーションが出来上がった。
「よし……どれ、ちょっと試飲してみるか」
小瓶に口をつけ、少しだけコクりと飲み込んでみる。
「美味い!、ミイ!美味いよ、飲んでみて!」
俺は目を輝かせながら、感動のままに瓶をミイへと手渡した。ミイは少し半信半疑のような表情を浮かべつつも小瓶を受け取り、慎重に一口分だけ口に含んでみると――
「美味しい!、トーヤさんこれ高級ポーションですよ。この緑色は高級ポーションです」
「え?、そうなの。よくわかんないけど」
「そうですよ。しかも美味しい。自作で高級ポーション作れるなんて凄いですよ!」 ミイは興奮していた。
そうして、高級ポーションらしい物を俺は10本作り上げた。
「完成!じゃ、ギルドに行ってくる」
「あ!そうだ。ギルドからレシピを聞かれても答えないで下さい。量産されると価値が下がりますので(器用さMAXのトーヤさんにしか出来ない品物だから誰も真似できないですが)」
「わかった、秘密にする」
「いってらっしゃい」(さて、私も出掛けますか)
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