↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/41

34 シニア・エグゼクティブ・スーパーバイザー


 俺は大井との年俸交渉にて妥協し、2億円で東密国立宗のシニア・エグゼクティブ・スーパーバイザーとなった。同時に幹部待遇も認めてもらい、管長室と同じ位広くて豪勢な部屋を用意してくれる事も。

 住まいはどうするかとなったが、俺が今の賃貸マンションを出て行く気がないと告げたので、埼玉の本部には専用の車で出勤する事になり、専属のドライバーも付けてもらえた。管長のように毎週行事がある訳でもないので、出勤は多くて週1回、少ないと月1回の頻度になる。それで2億円ですよ。管長が如何に切羽詰まった状況だったか分かるね。俺がいなけりゃ、教団が終わっていたんだから。

 この勤務条件のお陰で俺は事務所も辞めずに済んだし、教団に出勤する時は有給も使えて御の字だ。


 そうなると金の使い道だよね。俺は川村に電話して投資の相談に乗ってもらう事にしたんだ。一生教団から報酬がもらえる訳でもないし、第一、大井がそれを望んでいない事は重々承知していたから。

 大井は自分が観音を招来できたら、さっさと俺の首を切りたいんだろうけど、それは無理だね。交渉の時に言っていた「最初は招来できた云々」は、エドが彼女に見せた幻影、幻聴だからね。最もプラシーボ効果で特殊能力が一時的に備わった可能性もあるけど、そんなの一度きりさ。永続していないから俺に依頼するんだよ。

 そういう背景もあって、俺は2億円しかもらえないと思っているんだ。だからこれを元手にファイヤーしたいのさ。


 6時に仕事を終え、事務所の外でタクシーを拾い、俺は川村の自宅に向かった。



 相も変わらず、川村は和室にて俺を待っていた。

「どうしたの、田中君、相談て」

「一寸した金が入りましてね。何の銘柄が良いか、川村さんにご教授頂けないかと思いまして、お伺いした次第です」


「へえ。宝くじにでも当たったの?」

「違いますよ」


「遺産かい?」

「そんなところです」


「幾らだったの?」

「言うんですか?」


「大丈夫だよ。税務署にはチクらないから」

「御冗談がキツイですよ」


「それで幾らなの?」

「2億です」


「ふーん。2億か・・・ それでどれ位にしたいの?」

「そりゃ、多ければ多い程良いですよ」


「どの位の期間で?」

「早ければ早い程」


「真面目に聞いているのよ、私は」

「すみません。具体的にはありません」


「“おんぶに抱っこ”ってところだね」

「申し訳ありません」


「確かナスダックに投資しているんだよね」

「はい」


「それでどこの市場?」

「東証でお願いします」


「ナスダックでなくて良いの?」

「アメリカは日本時間の夜間にならないと市場が始まらないので、市況を見ていると寝不足になってしまうんです。事務所の仕事にも支障が出そうなので、東証に資金を移そうかなと思いまして」


「為替は良いんだ」

「ずっと円安が続くとは思いません」


「分かりました。それじゃ、私の投資手法を教えるから、参考にしてね」

「はい」


「先ず、何処の市場にも必ず自分と波長の合う株と合わない株があるから」

「『合う株と合わない株』ですか?」


「そう。こう言うと、非科学的だと言う人もいるけど。株式と言うものは理論で割り切れるものじゃないよ。確かに売り上げ、純利益、PER、PBR、キャッシュフロー等は知っておくべきものさ。だけど売り上げが良くてPERの低い株が全て上がるかい?」

「いいえ」


「何で上がる株と下がる株があると思う?」

「業績の良い会社と悪い会社の違いですか?」


「前提条件は同じとしてだよ」

「さあ・・・ 株数ですか?」


「それもある。他には?」

「分かりません」


「それですよ。理屈で分かったら、株で蔵建てる奴なんざ、五万といる筈さ。実際はいないだろ」

「そうですね」


「分からないという前提で買うんだよ。そしてその中から、宝を探し出す」

「それじゃ、運否天賦じゃないですか」


「そうだよ。だから言ったろ。理屈では勝てないって」

 納得できるような、できないような?


「その為には何が必要か、という事だよ。運を味方につけるには?」

「それは何ですか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。