27 敗戦処理
その夜に俺は賃貸マンションへ帰って来た。今は便利になったもので、俺の親の代には埼玉からの帰路は、東京を経由して千葉に戻る路線しかなかったのに。直で帰ってこられる線があるなんて、死んだ親父もビックリだろうな。
11時近くになっていたが、セレは起きて俺を待っていてくれた。但し、晩飯の用意はしていなかった。これは仕様がない。帰宅が何時になるか分からなかったので、外で済ませてくると伝えてあったから。
風呂は? 用意してあった。これは当たり前。一旦沸かせば後は保温だけだから、○○でもチョンでもできる。
「ただいま、マ・シェリ」
「お帰り、モン・シェリ」
帰って直ぐ、俺は風呂に直行した。気を張っていたのもあっただろう。兎に角疲れた。こういう時はシャワーではなく、湯船に全身浸かると、疲れが取れるようだ。
親が仕事で忙しかったせいか、俺は子供の頃、祖父母と共に入浴していた。その影響なのか今も比較的熱い風呂が好きなので、43度の温度設定にしているが、セレの後の風呂は40度設定なのだ。
俺が設定温度を上げた途端、セレが戸を開けて入ってきた。何? と思っていると、「一緒に入りましょう」とさ。
間が悪いったら、ありゃしない。仕方ないので保温温度を下げ、彼女に合わせる。
「疲れた?」
「一寸ね」
「それじゃ私がマッサージしてあげる」
そう言って俺の後ろに回り、肩を揉んでくれた。こうしていると、普段は口うるさい癖に、妙に優しいところもあるんだなあと思う。肩も解れ、気持ちも和らいだので、お返しとばかりに「今度は俺がやるよ」と言って彼女に正対し、両肩から両腕にかけて揉む。そしてその手をバストに持っていき、揉みしだこうとすると、
バシッと彼女の平手がさく裂した。
「イテ!」
「余計な事しないで」
怒りながら、風呂場から出て行ってしまった。やっちまった・・・ 機嫌が良かったから、大丈夫かなと思っていたが、駄目だった。
急いで風呂から出て着替え、居間にいる彼女に謝った。
「ごめんなさい」
「もうしないでね」
「はい。唯ね、君の素晴らしい裸体を見ていたら、無性に欲しくなってね」
「場所が違うでしょ。風呂場は嫌よ」
この言葉で俄然萎えた気が盛り返してきた。
「じゃ、後でね」
「・・・」
このところご無沙汰だったから、俺の気力も臨戦態勢になってくれたし、彼女もこの時間まで俺を待っていたんだから、受け入れ態勢はOKな筈。
急いで歯磨きをして、口臭は大丈夫。トイレも済ませて、パジャマに着替え、寝室に行く。
セレは既にベッドの中で待っていた。俺はベッドに潜り込む前にパジャマを脱ぎ捨て、下着も脱いで身には何も着けない。勿論アレも着用しない。
遠慮なく頂きます。俺はベッドに入り彼女に軽く口づけをした。彼女もそれを待っていたかのように俺を抱きしめる。暖かい肢体だ。それに柔らかくて、弾力があり、肌の張りもほどほどにある。唯、一寸ヒゲが濃いのが気になるか。金髪だから見た目には分からないが、間近で見ると分かるから。
気分は盛り上がり、俺は両手を彼女の肢体に巡らし、軽いタッチを繰り返す。彼女の気分も随分解れてきたのが分かる。
頃合いは良し。俺が身体の向きを変え、彼女の下半身に向かおうとしたら。
「ご免ね。どうもアレが近いの。だから・・・」
それはないよ、モン・シェリ。
「駄目なの?」
「うん」
「近いの?」
「多分」
「本当に?」
「うん」
「どうしても?」
「無理みたい」
「無理か・・・」
準備万端整えたのに。諦めきれない俺は、無理を承知でお願いしてみた。
「せめて口は?」
「駄目。又にしましょう」
「でもなあ・・・」
「・・・」
「手でも駄目?」
「又ね」
何度彼女に懇願しても駄目だった。気力充満の俺は萎える事を知らない不動明王だ。怒髪天を衝くこの状態を如何にして鎮めるというのだ。猛り狂う俺をどうしてくれよう。
ベッドで考えても状況は変わらない。俺はベッドを出、トイレに入った。そして敗戦処理。




