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19 尋問

連続投稿です。


 テスからの国際電話が、その日の夜11時過ぎに架かってきた。フランスの時間で言うと午後4時頃だ。セレが受話器を取り、結構な時間話していた。会話の途中で笑い声が聞こえてきたので、俺は安堵の思いに浸った。彼女も納得したかも知れない。淡い望みがじわじわと俺の気持ちを楽にさせる。大事にならなくて良かった。


「アジメ」

「はい」元気よく応える。


「テスが大司教様から聞いたそうよ。彼がオロバスを召喚したんだって」

「そうだよ。俺が言った通りでしょ」


「その点は本当のようね」

「『本当のようね』って。真実だから、真実!!」


「それで、今回も彼との契約は交わさなかったそうよ。でも『召喚に対する対価として貴方への面談を求められた』と言っていたそうよ」

「その通りです」


「何で、貴方の処に来るの?」

「知りません」


「嘘仰い。何か隠しているでしょ」

「何もありません。ございません」


「信じられない」

「俺が何を隠すの? 知ってるなら言ってごらん」


「知らないから聞いているのでしょ。何で逆切れしているの? やましい事があるんだ」

「何もないよ。邪推は止めて」


「邪推も何も。私は貴方に尋ねているのよ」

「知らないよ、彼の意図なんか」


「可笑しい。彼と会ったんでしょう?」

「はい」


「何を話したの?」

「何も」


「嘘仰い」

「分かりました。『反逆者のマラドゥレスを処刑する』って言ってました」


「それだけ」

「それだけです」


「嘘!!」

「本当だって。何か言いたそうだったけど、急に彼の方から姿を消したんだよ」


「ふーん」

「何? その言い方」


「何か隠しているわね」

「隠してなんか、いないって」

 押し問答の繰り返しで会話が進まない。業を煮やしたセレが攻め口を替えて俺に迫る。


「何処で彼が出現したの?」

「え?」


「何処で、彼が、貴方と会ったの?」

「えーと、何処だったかな?」

 俺は思い出そうとするポーズをとったが、彼女は疑わしそうな顔で見ている。つやのマンションで会ったなんて、言える筈がない。言えば新橋に行っていた事が嘘になるし、食事した事がバレるし、彼女のマンションに行った事も。


「確か、ラピスタだったな・・・ うん、ラピスタだ。そこで第6レースの予想をトイレでしていたんだよ。そうしたら急に現われて」

「そうね。昨日『競輪に行く』って貴方言っていたものね」


「そうでしょ、そうですよ。それでびっくりして、動転しちゃったんだ」

「それから?」


「『マラドゥレスを処刑する』って言って、俺に何かを要求するような雰囲気だったんだけど・・・」

「それで?」


「それでお仕舞。急に消えたんだよ、それっきりさ」

「そうなんだ」

 依然として疑わしそうな顔で俺を見ている。俺、余分な事言ってないよね。聞かれた事に対して整合性を整えて応えているし、脈歴のない話しにもなっていないし・・・


「それで何を買ったの?」

「え?」


「車券は何を買ったの? それは当たったの?」

 不味い。ラピスタに行っていないから、車券を買っていないし、勝った選手も知らない。


「どうしたの、マ・シェリ?」

 話しを創らなけりゃ。どういうストーリーにしよう。後で言い逃れできるようにしなきゃ。


「気分でも悪いの?」

「大丈夫、大丈夫だから」


「そう? 良かった。それで?」

「うん。彼の出現でパニックになって、車券は買えなかったんだよ。今日は全滅でした」


「そうなのね」

 そう言いながら納得した様子ではなく、かと言って競輪の成績に不信を抱く訳でもない。勿論、不倫を疑う風でもない。

「そろそろ良いかな。今日は俺疲れて、そろそろ寝ませんか?」


「そうね。今日は一応、これまでにしましょうか」

 何か奥歯に物の挟まった言い方をする彼女の対応に一抹の不安を覚えるも、ストーリー展開に疑念を持たれる事のないよう、対策を考えねば。


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