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14 ジンクス


 代行で川村の自宅に戻り、俺はタクシーを呼んでもらってマンションの近くで下車した。マンションまでの道すがら、俺はつやから教えてもらった携帯に掛け、一度会おうという事で、今週の土曜日の昼、新橋で会う事に決定。


 何故、新橋かって? ここには“LAPISTA”があるんですよ。昔は会員制の場外車券売り場だったんだけど、今じゃ誰でも入れるのよ。俺が払った入会金はどうなるの? 

 3階から5階が競輪フロア、6階がオートレースフロアで、大概ここで、俺は土日を過ごしています。つやを連れて行くか考えて、止めた。だってギャンブルに女性連れて行くと、ギャンブルの女神さんが嫉妬するらしく、雀荘に或る女性を連れて行ったら殆ど負けたね。

 これは俺の実体験だから、信じて。かつて付き合っていた女子高生を雀荘に連れて行ったら、彼女を見る客の目つきがねちっこくて、麻雀どころじゃないのよ。

 そんな訳で彼女と食事を終えたら、一人で行く積もりだから選んだのよ。ジャンブル好きなら理解してくれるでしょう。


 話しが逸れるけど、このジンクスは日本だけだと思う。去年ラスベガスのホテルで、ブラックジャックで遊んでいた時に、中年のアメリカ人夫婦が俺の隣の席に座ってね。奥さんが愛想の良い人で、俺にも「頑張ってね」って英語で話しかけてきたの、多分だよ。俺、英語駄目だから。

 それから数ゲームは、全て俺が勝ったのよ、連荘で。旦那はと言うとツキがないらしく、負けてたね。夫婦が席を離れる時、俺は彼女に彼女の手を握りながら言ったんだ。「貴女は勝負の女神だ」って。勿論日本語でだよ。それでもニュアンスが通じたのか、彼女微笑みながら去って行ったんだよ。

 以上の体験から、日本ではギャンブル場には、女とは行かない。但し、海外は例外。

 脱線したんで、話しを戻しましょう。


 それで土曜日に逢って食事をして、その日はそれで別れたのよ。でも翌週土曜のデートの約束はしたんだね。

 又、土曜日になりました。場所は錦糸町北口、東部ホテルのレストラン。食事が終わり、次はどうするのかと思いきや、そこから数分の処に彼女のマンションがあるので、行こうとの事。“据え膳食わぬは男の恥”とも申します。俺は彼女の豊満な肢体を想像しながら、付いて行きました。


 道々彼女の後ろ姿をチラチラ見ながら進み、会話を上の空で聞いてしまったのが失敗だった。彼女の部屋に入ると、4、5人の男女がいるじゃあーりませんか。

 期待に胸を膨らませ、欲望に下半身をたぎらせて部屋に入ったら、そりゃあ萎えますよ。


 何の会合なのか身構えていると、仲間だと言う訳です。何の仲間なのか知りたいの、こっちとしては。マルチだったり、統合教会だったり、池田教だったりしたら無理、無理。


「実は・・・」とつやが切り出した。

 俺はそら来た、と思ったね。絶対勧誘なんかされるもんか。俺マルチは大嫌い。無限連鎖だから、有限社会じゃ必ず破綻するから。霊感商法は人の不安を煽るもの。日蓮上人はそんな事言わないでしょ。


「さあ、来い」俺は心の中で気合を入れ、彼女の言葉を待った。

「今日、田中さんをお呼びしたのは教えて頂きたい事があって、皆さんと相談して来てもらいました」


 何? 勧誘するんじゃないの? 水晶を売りつけるんじゃないの? 信者にするんじゃないの? どういう事?

 俺の拍子抜けした顔を見て、つやが俺に声を掛けてきた。

「大丈夫ですか?」


 俺は一旦、頭の中で想像していたマルチや統合教会や池田教の姿を整理した。そしてどういう事か、彼女に尋ねた。

 4人の見知らぬ男女はつやの顔を覗き込み、不安気に俺の顔も見る。


「兎に角、俺を連れて来た理由を教えて、つやちゃん」

「はい。お店で田中さんが宗教に詳しい方で、ご実家がお寺さんというのお聞きして、お呼びしたのが第一の理由です。私達、ある宗教団体の信者なのですか、最近私達の属する宗派の教義が疑わしいと言うか、教義の整合性が取れないと言うか、判断できない事例が多々ありまして。専門家の方に相談した方が良いのじゃないか、という意見がありまして」


「それで俺を」

「はい。私達の宗派は既存の宗門と対立と言いますか、論争がありまして、余り僧侶の方は・・・」


「専門家だと容赦がなくて、反駁がきついからか」

「はい。それで、こう言う人がいると皆さんに相談したら、一度お会いしたいとなりまして・・・」


「漸く、理解出来ました。第三者目線でアドバイスしてくれる人材が必要だと言う事ですよね」

「はい。それが私達グループの総意です」


 俺は「宗門と争論」、「僧侶」の言葉で既に目星をつけていたが、いきなり踏み込むのもアレだし、一応建前として質問する。

「それで、キリスト教系ですか? 神道系ですか? それとも仏教系ですか? まさかイスラム教系、はたまたヒンドゥー教じゃないですよね?」


「仏教系です」


「なら話し易いな」

「ありがとうございます」


「それで教団名は?」


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