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ジノを寝室のベッドの上に下ろし、アレクは自分が借りている部屋に戻り、手近にあるシャツを掴んでジノの部屋に引き返した。勝手にジノのクローゼットやタンスを開けるのは躊躇われたからだ。
「ジノ、着替えられるか?」
夏場ならそのままでも良かっただろうが、まだ春先なので濡れた服のまま寝れば体温が奪われて風邪を引く可能性がある。
「んー……」
ジノはもう目を閉じたまま動かず、アレクは仕方なくジノのシャツに手をかけた。
服を捲ると、まず少しの筋肉がついた薄いお腹が露わになり、アレクは思わず目を逸らした。男の裸など、珍しいものではない。旅の途中、仲間がすぐ隣で着替えることもあったし、上裸で働く労働者だって見たし、大浴場に行ったこともある。そのときは何も感じなかったし気にも留めなかったのに、何故かジノの裸は見てはいけないものを見ているような気持ちになった。
腕を上げさせて薄目で見ながら、素早く服を抜き取ろうとするが、水で肌に張り付いてしまい、中途半端なところで服が止まってしまう。ふと、小さな乳首が目に入り、アレクは思わず服から手を離してしまう。
布は重力に従ってジノの肌の上に落ち、ジノはくすぐったかったのか、濡れた感触が不快だったのか、薄目を開けた。
「アレク……?」
「ジノ……服を脱げるか?」
「うん……」
ジノはのそのそと起き上がり、服を脱ごうとしたが、やはり濡れた生地が張り付いて中途半端なところで服が止まってしまった。
「アレクひっぱって」
眠いのか、ジノはどこか幼い口調で言い、アレクは今度こそ服を引っ張って脱がせることに成功した。
アレクは濡れている胸元とお腹をタオルで拭い、手早く服を着せる。着せるのは服のサイズが大きいし、ジノが体を起こしていたため、スムーズに済んだ。
「アレク、ありがとう」
ジノは乾いた服に着替えてサッパリしたのか、ふにゃりと嬉しそうに笑い、再びベッドに横になった。
「……ああ、おやすみ、ジノ」
「ん……おやすみ……」
ジノはすぐに寝息を立て始め、アレクは起こさないようにそっとジノの寝室を後にした。
***
「アレク、おはよう」
翌日、ジノはいつもより遅い時間に起きてきた。
「ああ、おはよう。体調はどうだ?」
「すっかりいいよ。昨日は迷惑をかけてごめんね」
「いや、迷惑のうちに入らない」
アレクは言いながら、まだアレクの服を着て無防備に鎖骨を晒しているジノから目を逸らした。
「あれ、朝ごはんも作ってくれたの?アレク、ありがとう」
「ああ、簡単なものだが」
テーブルの上にはサラダやパン、干し肉のスープなどが乗っている。ジノは嬉しそうに微笑んで椅子に腰を下ろした。
「いただきます」
「ああ」
(アレクの作るご飯、シンプルだけど美味しいんだよな。今までは長いこと自分の料理しか食べてなかったし、なんかこういうの、いいなぁ)
「今日はお祭りの翌日で、お客さんもほとんどいないと思うからのんびりしよう」
「そうか、しばらく忙しかったし丁度いいな」
そんなことを話しながら、ジノは日持ちのする硬いパンをスープに浸し、穏やかな気持ちに浸っていた。
そのとき、急に店のドアが開かれた。
「ジノー!!元気かい??」
アレクは反射的に立ち上がったが、店に入ってきたのはどうやらジノの知り合いらしい眼鏡をかけた若い男だった。
「エリック、久しぶり」
「!!」
(ジノが敬語を使っていない?街の若者にも敬語だったのに)
「3ヶ月ぶりくらいかな。そこの大きな人は用心棒かなにか?」
「アレクだよ。2ヶ月くらい前に崖から落ちてたところを治療して、今は友だちなんだ」
「ふーん?」
エリックはアレクを頭の先からつま先まで見て、目を細めた。
「まるで勇者様みたいに立派な体と整った顔だね?」
顔は微笑んだまま、意味深な目配せとともに言われ、アレクの肩がピクリと跳ねた。
「少し話がある。先に食べていてくれ」
そう言ってアレクがエリックを連れて外に出るのを、ジノはきょとんとした顔で見ていた。




