第8話 <もふもふカフェレストラン・ルルゥ&パルゥ>オープン
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一方、アズライアンはアジトに戻る途中の路地で、通りすがりの男たちの会話を耳にしてしまった。
「またあの女、人質ビジネスやってるらしいぜ。」
「おまけに犯人をたらしてるってよ。六番目の男がアズライアンとはな……。」
ゲラゲラと笑う下卑た声。アズライアンはエアバイクを静かに動かし、その場を通り過ぎた。
アジトに戻ると、部下たちが待ち構えていた。
「ボス、お帰りなさいやし!で、どうなったんですか?例の女の子。ちゃんと送り届けたんですよね?」
アズライアンはソファにどかっと座り、ため息をついた。
先代が亡くなり、まだ組織を引き継いだばかりの最年少ボス。
子供の頃から組織の人間に面倒を見られてきた彼は、今も部下たちに完全に子供扱いされていた。一人の部下がニヤニヤしながら切り出した。
「さっき女性を組織に入れたいって話になったんですけど……ボスの女はどうすか?」
もう一人が追撃した。
「確かに、ボスの女いるじゃん!ボスの女、組織に入れないんすか?」
アズライアンは顔を覆った。
「……俺は、六人目だった……。」
部下たちが一瞬固まり、不思議そうな表情を浮かべた。
「六人目!?なんの話すか?」
「ボスはもともと六代目じゃないですか?」
アズライアンはガチで凹みながら訂正した。
「いや……俺はあいつの六人目の男だった。」
「六人目の男!」
そのワードに部下たちは床を転げ回って笑い転げた。
「ウケる!六人目の男って!あの子意外と遊んでるんすね!」
「六人いるうちの一番下ならいいわよってことですか?」
「それとも元カレが五人ってことっすか?」
「六番目ってことじゃね?」
「ボス、手際悪いですからね。」
「カッコ悪いとこ見せちゃったんじゃないすか?人質に、傷の手当てまでしてもらっちゃって!」
アズライアンはソファに顔を埋め、声が震えていた。
「……もう、黙れ……。」
不死王と恐れられる男は、今この瞬間、ただの不憫で可愛い少年に戻っていた。
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カフェレストランがオープンし、もふもふたちに癒される人たち、料理やスイーツを求める人たちで連日大盛況だった。
教会のすぐ横に建てられた小さな白い建物は、まるで童話から飛び出してきたようだった。看板には優しい手書き文字で<もふもふカフェレストラン・ルルゥ&パルゥ>と書かれ、入口のドアには小さな鈴が付いている。
ドアを開けると、ふわっと甘いバターとハーブの香りが迎えてくれ、嫌がおうにも鼻孔と食欲を刺激される。店内は木の温もりに溢れ、天井からは柔らかな光が差し込むガラス張りの屋根が癒しの空間を与えてくれる。
壁一面や、もふもふ専用スペースには、千尋が集めた可愛い魔物や動物たちが、自由に飛び回ったり、座ったり、寝転がったりしている。
そこにいるのは、ゲームでお馴染みの「もふもふ」たち。
手のひらサイズで、ぴょんぴょん跳ねながら客の膝に飛び乗る、ふわふわのピンクの毛玉のような<シルビィパフ>。銀色の毛並みを持つ小さな<シルバーフォックス>が、尻尾で客の頰をくすぐる。
ふさふさの青い毛並みの子犬のような<チェルシードッグ>が、四つ足でちょこちょこ歩き、客の膝に前足を乗せる。
他にも、角が生えたぬいぐるみのような熊型魔物の<ホーンベア>や、宝石のような目をした<ウサギリス>などが、店内を自由に動き回っている。
彼らは千尋のテイマー能力で呼び寄せられ、皆に危害を加えることなく、ただ「癒し」を与えるよう調整済みだった。
客が疲れた顔で入ってくると、膝に飛び乗り、頬にスリスリし、客たちはたちまち、肩の力が抜け、頰が緩む。
「ここ……本当に癒される……。」
「ああ……魔物がこんなに可愛いなんて……。」
「もちろん普通の動物も可愛いけど、魔物の可愛さは意外だったな。」
魔物の他に普通の猫などの動物もいる。客たちは好みのもふもふたちに、有料で購入したおやつをあげるという楽しみにハマッていた。
そして、なぜか料理やスイーツを食べると、体力が回復する、古傷がよくなる、力が強くなる、と評判になっていた。
聖女の蒼生の料理は祝福で、千尋のスイーツは錬金術師の力で、特別な付与を施してあるのだ。
初日の開店直後、近所の冒険者風の男性が、カウンター席に座ってため息をついた。適当におススメを、と言われ、蒼生が厨房から出てきた。
可愛いエプロンを着け、熱々の料理を運んでくる。
「本日のスペシャルランチ、『ハーブチキンソテー』です。熱いので気を付けてどうぞ。」
皿の上には、色とりどりのハーブに付け込まれ、黄金色に焼けた鶏肉が、新鮮な野菜に囲まれていた。
一口頬張ると、口いっぱいに広がるのは、ただの美味しさだけじゃない。
聖女の祝福が直接体に染み渡るような、温かい光が、知らず知らずのうちに、男性の全身を駆け巡る。
古い傷が疼いていた男性の肩が、みるみるうちに軽くなった。
「うわっ……!?肩の古傷が……嘘だろ、今まで何年も痛かったのに……!」
男性の目が大きく見開かれる。
隣のテーブルでは、若い女性客が千尋のスイーツにスプーンを入れていた。
「アマルソフィアさんの『チョコレートムース』、ほんとにおいしいわあ……!」
ふわふわのムースは、口に入れた瞬間、舌の上でとろける。
中には千尋が錬金術でクリエイトした特別な付与が練り込まれている。
甘さの奥に、ほのかな苦み。食べ終わる頃には、女性の顔色がぱっと明るくなり、猫背気味だった背筋がピンと伸びている。
「これ……まるで魔法みたい!食べただけで、なんだか体が軽い……!」
自然とうわさが広がり、だんだんと遠くからもお客が通い詰めるようになった。
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