↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界のもふもふカフェレストランで、君は私を独占する  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/56

第56話 異世界のもふもふカフェレストランで、君は私を独占する

 あたりが静かになった頃、吸血鬼のような姿になりかけていた蒼生は、すっかり人間の姿に戻って、千尋に抱きしめられたまま、茫然と彼女を見つめていた。

「……よかった、蒼生……蒼生が死ななくて……。」

 千尋が、涙でぐしゃぐしゃの顔で微笑んだ。


 蒼生の声が、震えながら漏れた。

「千尋は本当に……こんな私でいいの……?推しより、彼氏より?」

 千尋は、蒼生の体をさらに強く抱きしめながら、明るく、はっきりと言った。

「私は、蒼生がいいの。推しより男より、親友でしょ? 蒼生が言ったんじゃない。」


 その言葉を聞いた瞬間、蒼生が初めて、心から子どものような無邪気な笑顔を見せた。だが、すぐにその笑顔が崩れた。蒼生の体が、小さく震え始めた。

「……本当に、いいの?私、さっき……本物の化け物になろうとした。千尋を守るためなら、自分を壊してでもいいって思った。牙が生えて、翼が伸びて……あのまま続けていたら、二度と人間に戻れなかった。それでも……。」


「それでも、私は蒼生がいい。」

 千尋は蒼生の背中に顔を埋めたまま、はっきりと繰り返した。

「化け物になろうとした蒼生も、私を守ろうとしてくれていた蒼生も、私の為に親を捨てた蒼生も……全部、私の蒼生だよ。嫌いになんて、なれるわけない。」


「気付いて……たの……?」

 蒼生の目から、また涙があふれた。今度は声を殺して、肩を震わせながら泣いた。

「……千尋がいなかったら、私は本当に……ただの化け物だった。千尋が抱きしめてくれなかったら、あのまま魂が抜けて死んでいた。千尋が『好き』って言ってくれなかったら……私、もう戻れなかった。」


 千尋は蒼生の頭を優しく撫でた。

「だから、今度は私が守る番だよ。蒼生が化け物になりそうになったら、私が抱きしめて、人間に戻してあげる。ずっと、そうするから。」

 遠くで、健吾とアズライアンが、動かないままその光景を見つめていた。


 アズライアンが低く呟く。

「……ああいう関係、俺には踏み込めねえな。」

 健吾も静かに頷いた。

「ええ。誰にも、引き離すことの出来ない、そんな関係なんだと思います。」

 幸せそうな二人の姿を、アズライアンと健吾だけが、ただそっと見つめていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 千尋が町に出かけている最中、もふもふカフェレストランに一人でやって来た健吾。

 蒼生が静かに紅茶を出し、向かい側に座った。

「……助けられなくて、ごめん。」

 健吾が頭を下げると、蒼生は小さく首を振った。


「未来のあなたなら助けられたと思うけど、今のあなたじゃ、そんな力はないから仕方がないわ。」

 健吾は紅茶のカップを見つめたまま、ぽつりと聞いた。

「僕が君を助けられたら……僕にも可能性があった?」

「……え?」


「今の僕は、君の推し……つまり、君の理想の姿なんだろう?僕には少しも可能性がなかった?高倉さんじゃなく、僕を選ぶ可能性は、少しもなかったのかな。」

 蒼生はしばらく黙っていた。そして、静かに微笑んだ。

「そうね……あったわ。」

 健吾が目を見開く。


「あなたは私を理解しようとしてくれた。そして実際、理解してくれた。千尋以外で初めてよ、そんな人に出会ったのは。前世でも、今も。私の独占欲も、千尋への執着も、全部わかったうえで、好きでいてくれた。」


「じゃあ……。」

「それでも私は、千尋がいいの。この先一緒に生きていく人を一人しか選べないんだとしたら、私は千尋がいいの。千尋がいない世界で、どれだけあなたが優しくしてくれても……私は生きていけない。」


 健吾は静かに息を吐いた。

「そうか。やっぱり勝てないかあ……高倉さんには。」

「でも……あなたの幸せを願うくらいには、あなたに感謝してるし、あなたの気持ちが嬉しくもあるのよ?こんなこと、千尋以外に感じたこと、ないんだから。これってすごいことなのよ?」


「ありがとう、っていうべき?」

 健吾がいたずらっぽく笑う。

「ええ、当然。でも、千尋には内緒よ?嫉妬させちゃうから。」

 そう言って、ふっと微笑みあう蒼生と健吾。


 そこに飛び込んでくる千尋。

「蒼生~!また人質になった~!アズアズが『また人質商売女が!』って言ったあ~!」

 半泣きの千尋が、蒼生に慰めを求めて抱きつく。


「──千尋?」

 スッと冷たい目で冷静に千尋を見る蒼生。

「あ、ごめん。アズアズはどうしても推しだから、大事だけど……私の一番は蒼生だからね?」

 上目遣いで蒼生を見る千尋。


「ええ、わかってるわ。ずっと独占させてね、千尋。」

 蒼生は千尋の額に軽くキスをして、健吾は眉を下げながら、二人を見ないように、やれやれ、と背中を向けた。



────────────────────


X(旧Twitter)始めてみました。

よろしければアカウントフォローお願いします。

@YinYang2145675


少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。

ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。