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異世界のもふもふカフェレストランで、君は私を独占する  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第47話 蒼生包囲網

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 魔塔中枢の広間。重厚な魔力灯に照らされた机の上に、マルカール王国から持ち込まれた資料が山積みになっていた。第一王子ルーク・バレンシアの特使であるルキウス・エンヴィーが、冷たい声で説明した。


「これが証拠です。聖女アリシアの体にアマルソフィアの魂が入り込んでいる、つまり魂の交換の痕跡です。マルカール王国の筆頭魔法使いが解析した結果、聖女の魔力波に異なる人物の魔力波が混じっていることが確認されました。」


 資料には、偽造された魔力解析データと、情報部が無理やり作成した「魂の干渉痕跡」の報告書が並んでいた。マルカール王国の筆頭魔法使いとは、当然アインのことだ。資料を捏造するくらいはわけはない。


 実際には証拠など何一つ存在しなかったが、ルーク王子の聖女アリシアを取り戻したいという執念と、聖女アリシアと悪役令嬢アマルソフィアの中身が入れ替わっていると言う妄執、そして魔塔が欲する<禁忌級のハイブリッド能力>という餌が、完璧に一致した。


 魔塔とて、提出された資料をそのまま信用するわけではないが、聖女アリシアの体には、本来魔力は宿っていない。

 その為魔力があることを調べれば、異なる人間の魂が入っていることは調べが付く。それが魂入れ替えの証拠として、魔塔を納得させるにはじゅうぶんな事実だった。


 ヴェルフェス・クロイツは資料をめくりながら、静かに頷いた。

「……確かに、これは無視できない。聖女の体に賢者が入り込み、双方の力が使えることで、雷の牢獄でとらえた人間を、無限に回復し、攻撃し続けるという、拷問を行うことが可能です。」


「彼女はその力を使って、我が国の兵士を攻撃し、トラウマを与えるレベルの拷問をかしたのです。」

 真面目な顔をして、語るルキウス。


「……魂の交換は、あくまでも可能性でした。過去に成功例も少なく、我々も文献でしか知りえぬ内容です。……ですがそれを成功させた人間がいる。それも、自らの力を引き継ぎ、聖女という最も抵抗され奪い辛いであろう体を奪うことに成功した。彼女をとらえ、その力を我々魔塔も研究したい所存です。」


 これは原作のバッドエンドにもある展開だ。本来、好きな職業を選んで、その職業に転職して働いていたヒロインが、ある日聖女の力に目覚める。もともとの職業の能力に加え、聖女の力を使うというハイブリッドな、史上最強の聖女、という肩書。


 それを狙う魔塔、諸外国などと、ヒーローと共に戦うことになるのだ。バッドエンドでは、主人公はとらわれ、そのハイブリッドな力を利用される。

 千尋がヒーローと出会う当初の、❝2❞のヒロインの人質体質を受け継いだように、蒼生が❝2❞のヒロインのバッドエンドを引き継いだかのようだった。


「もちろんです、我々は聖女アリシアさえ取り戻していただければ、アマルソフィアはどうしていただいてもかまいません。」

 父である宰相は、アマルソフィアの魔物を操る力を取り戻し、国防強化に役立てたい考えであり、それをルーク王子も最初は考えていた筈だったが、聖女アリシアとアマルソフィアが入れ替わっているという妄執にとりつかれたルーク王子たちは、もはやアマルソフィアを取り戻して国防の役に立てるということなど、どうでもよくなっていた。


 魂を引きはがされたアマルソフィアが死んだところでどうでもいい。無事に元の体に戻り、魔塔がその力を役立てたいというのであればそれでもいい。それで聖女アリシアを取り戻せさえするのであれば。


 こうして、魔塔とマルカール王国は正式に共闘を決定した。しかし、魔塔所属の若き賢者・アクセル・ラーゲンは、即座に反対した。

「待ってください。この資料……あまりに都合が良すぎます。魂の交換の証拠としては、決定的とは言えません。ましてや、聖女アリシアを強制的に拘束して、魂をもとに戻す為に、呪いをかけるだなんて……最悪両方死ぬ可能性がある、危険すぎる行為です。」


 ヴェルフェス・クロイツが、アクセルを冷たく睨みつけた。

「アクセル・ラーゲン。魔塔の命令に逆らう気か?禁呪を使用した時点で、捕縛の許可は国から降りる。本来であれば重罪で捕まるところを、魔塔の研究に協力することで、生かしてやろうと言うのだ。」


 アクセルは拳を握りしめたが、それ以上強く反対することはできなかった。国が背後についた、組織の命令は重かった。

 6年後、魔塔の賢者の頂点に立ち、ありとあらゆる権力を握っているアクセル・ラーゲンと違い、今のアクセル・ラーゲンは無力であった。




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