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異世界のもふもふカフェレストランで、君は私を独占する  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第45話 自分に似た人

 アグノラが苛立ちながら、一歩あとずさり、結界を張り直そうとするその時――「アグノラ!!」アクセルが、手紙を握りしめたまま森に飛び込んできた。


 アグノラの顔が、瞬時に明るくなる。

「アクセルさま!やっぱり私の為に来てくれたのね!」

 しかし、アクセルは彼女を見もせず、蒼生と千尋の方を向いた。


「御堂さん!高倉さん!大丈夫か!?アグノラから、この場所で待ってると手紙をもらって、何の妄想かと一瞬思ったんだけど、ひょっとして御堂さんが、アグノラを呼び出したんじゃないかと思って、来てみたんだ。」


「ええ……とりあえずはね。でも、あの子が聖女の力に覚醒しちゃって、魔法攻撃が届かなくて、苦戦してるの。」

「でも、結界に物理攻撃は有効だから!私が代わりに戦うよ、蒼生!」


「私を無視して、アクセルさまとイチャイチャするな!」

 その隙を突くように、アグノラがナイフを振り上げ、蒼生に向かって突き出した。

「邪魔をする女は、消えなさいよ!!」


 アクセルが咄嗟に動いた。

「……っ!」

 彼は蒼生の前に飛び込み、背中をナイフで貫かれた。


「名高さん!?」

「アクセルさま!?」

 アグノラが絶叫する。アクセル──健吾は膝をつきながら、苦しげに笑った。


「今度は……君を守れたようだな、御堂さん……。」

 蒼生は目を大きく見開いた。

「名高さん……どうして……。待っててください、今の私は聖女なので、すぐに治療できます。」


 蒼生が治そうとするのを、アクセル──健吾が片手で止めた。

「まだ……治すな。警備兵と魔塔に連絡した。すぐにここに駆け付けて来る。現行犯で捕まえられる。今、状況を見せれば……彼女を捕縛できる。」


 アグノラが、血のついたナイフを握りしめたまま、震える声で叫んだ。

「なんで……!アクセルさまを傷付けるなんて……!そんなつもりは……!」


 しかし、すでに遠くから警備兵の足音が近付いてきていた。アグノラは歯を食いしばり、今はとりあえず逃げようとしたが、千尋がさらに酸の瓶を投げつけ、動きを阻む。やがて、魔塔の賢者たちと警備兵が到着し、アグノラは現行犯として捕縛された。


 傷を負ったアクセルを、もふもふカフェレストランの二階の部屋に運び、蒼生が治療を施す。千尋は部屋の外で待機し、蒼生はアクセルと二人きりになった。アクセル──健吾は痛みを堪えながら、傷を癒されたことで、ようやく穏やかな表情に戻った。


「なんで……こんなことを。アクセルの体なら、魔法で止められたはずなのに。原作じゃ、聖女に匹敵する程の強さの、魔塔の賢者のトップに将来なる人よ?覚醒したばかりの聖女より、今のあなたのほうが強い筈だわ。」

 健吾は薄く目を開きながら答えた。


「魔法は、まだうまく使えないんだ。教わってないからね。それに……だって僕は、君が好きだから。好きな人が殺されかけたら、誰だって守るだろ?」

 蒼生がわずかに動揺した。蒼生こそが、それを一番わかっている筈の人間なのに、他者のそれには想像が及ばなかったらしい。それを見た健吾は苦笑した。


「前世の時も、今も。変わらないよ。御堂さんが好きなんだ。君を失って、何もできなくて、僕はずっと後悔してたんだ。」

 蒼生は、静かに目を閉じた。心の中に、罪悪感が広がっていく。


『6年後のアクセルなら……こんなことにはならなかった。結界の聖女相手でも、十分に戦える力を持っていたのに。私が……今彼と出会ってしまったせいで、彼をこんな目に……。』

 蒼生は静かに呟いた。


「……ごめんなさい、ありがとう。」

『千尋を大事にするあまり……自分を好きになってくれた彼の気持ちを、ないがしろにしてしまった。それは許されることではないわ。いくら気持ちに応えられないとは言え。』


 健吾は優しく微笑んだ。

「謝るなよ。僕がただ…自分で君を守りたかっただけなんだから。」

 千尋が、治療、終わった?と部屋に入ってきた時、蒼生はすでにいつもの無表情に戻っていた。


 しかし、千尋は蒼生の背中を見て、そっと近付いた。

「蒼生……大丈夫?。」

 蒼生は千尋の手に、自分の手を重ねた。

「……うん。大丈夫よ。」


 だが、その目は、どこか遠くを見ていた。

『千尋を、絶対に傷付けるわけにはいかない。でも……この罪悪感も、消えない。』

 回復魔法では、失った血液まで元に戻すことは出来ない。疲れたのか、貧血なのか、健吾は静かに目を閉じた。


「今日は名高さんを、この家に泊めましょう。女性だけの家とはいえ、私たちの為に、頑張って、怪我まで負った人を、このまま追い出せないわ。」

「うん、そうだね……。」

 蒼生の言葉に、千尋が同意した。




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