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異世界のもふもふカフェレストランで、君は私を独占する  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第44話 ❝2❞のヒロインvs悪役令嬢

 蒼生はもう限界だった。アグノラの白銀の結界が、じわじわと彼女を追い詰めていく。雷の牢獄を何度叩き込んでも、結界の表面で弾かれ、逆に魔力を削られていく。

 体のあちこちをナイフで斬られ、肩を結界で焼かれ、膝をつきそうになる。


「もう終わりよ。アクセルさまと私が結ばれる邪魔をする女は、みんな消してあげる。」

「……くっ。」

 蒼生は歯を食いしばり、もう一度黒い球体を生成しようとした。しかし指先が震えて、魔力が上手くまとまらない。アグノラが冷たく笑った。


「よくもアクセルさまの名前を騙って、私を呼び出したわね。アクセルさまと勝手に親しくして。❝1❞のヒロインなら、大人しく❝1❞のヒーローとくっついてなさいよ!」

 アグノラはゆっくりと歩み寄りながら、懐にしのばせていたナイフを抜いた。


「手を引くだけで済ませてあげようと思ったのに……やっぱり今度も、ライバルは殺すしかないのね。」

 ナイフを構えた彼女が、蒼生に飛びかかる。蒼生は咄嗟に後ろに飛び、風の魔法で距離を取ろうとするが、結界に阻まれて効果が薄い。アグノラのナイフが、蒼生の頰をかすめる。血が一筋、頰を伝う。


「はあ……はあ……!」

 蒼生は初めて、死を意識した。この世界に来てから、初めて圧倒されている。

「くっ……千尋……。ごめん、私、戻れないかも知れないわ。……もう、人間には。」


 蒼生は覚悟を決め、全身から黒いオーラがにじみだし、蒼生の全身を包んだ。その様子の変化に、アグノラも脅威を感じ、おびえたように一歩後ずさる。


 その瞬間。

「──蒼生!私を見て!」

 森の入り口方向から、千尋の声が響いた。蒼生が振り返った瞬間、千尋が全力で駆け込んできた。息はもう上がっていて、顔は真っ赤に上気し、目は涙でぐしゃぐしゃになっていた。


 しかしその目は、迷いなく蒼生だけを見ていた。

「千尋……!?なんで──」

「黙って!蒼生に人殺しなんてさせない。蒼生のことも殺させない!」


 千尋は蒼生の言葉を遮るように叫びながら、すでに両手に錬金術でクリエイトした小瓶を複数握っていた。中には強力な酸が詰まっている。アグノラが振り向いた瞬間、千尋は瓶を全力で投げつけた。


「これでもくらいなさい!!」

 瓶がアグノラの結界に激突したかと思うと、スッと結界をすり抜けて、中身がアグノラにぶちまけられた。強烈な酸が飛び散り、アグノラのマントと髪、結界の表面を溶かしていく。


「きゃあああっ!?な、なにこれ!?」

 アグノラが悲鳴を上げて後ずさる。結界が一瞬揺らぎ、表面が歪んだ。結界は魔法や魔物を退けるが、物理的な液体までは防げない仕組みなのだ。


 聖女の結界の為、内側では常時、回復効果が発動しているが、千尋のクリエイトした酸が強すぎて、回復が追い付いていない。集中力が途切れて、結界が外れた。

 千尋は構わず、次から次へとクリエイトした瓶を投げ続ける。走りながら、転びそうになりながら、それでもあらゆる角度から投げ続ける。


「蒼生に近付くな! 近付くなら、私の蒼生を傷付けるつもりなら、全部溶かしてやるんだから!!」

 声が恐怖で掠れて震えている。でも止まらない。アグノラが苛立ちながら結界を張り直そうとするが、千尋の酸が次々と当たり、結界の維持が追いつかない。


「この……生意気なっ!」

 結界をなんとか張り直し、千尋に体当たりしようとする。しかし千尋はそれを避けようともせず、もう一つの瓶を全力で投げつけた。


「蒼生を……私の蒼生を傷つけるな!!」

 瓶がアグノラの腕に直撃し、酸が服と肌を溶かした。アグノラが激痛に顔を歪める。その隙に、千尋は蒼生の元まで駆け寄り、彼女の腕を掴んだ。


「蒼生! 大丈夫!?」

 千尋の声は震えていた。でもその目は、蒼生から一度も逸らさなかった。蒼生は息を切らしながら、千尋の顔を見た。


「……千尋。危ない……逃げて。」

「いやだよ。」

 千尋は即答した。


「逃げるなら、一緒にだよ。私は絶対、蒼生を見捨てないんだから。」

 その言葉を聞いた瞬間、蒼生の胸が大きく揺れた。

「千尋……どうやってここに……。」


「すぐに戻るからって書置きだけ残して、いつまで経っても蒼生が戻って来ないんだもん。おかしいなと思って、お客さんにお詫びして、店を閉めて探しに来たんだよ!こんなことになってるとは思わなかったけど……。あれって、❝2❞のヒロインの、アグノラだよね?なんで蒼生と戦ってるの?」


「あれが、私を駅のホームに突き飛ばした女の、転生した姿なのよ。今度もアクセルを──名高フロアマネージャーを狙って、私宛に、千尋を害されたくなければ、手を引けって手紙を送りつけて来たの。だから決着をつけようと思って、アクセルを語ってあの女を呼び出したのよ。」


「うそぉ!?そんなことありえるの!?……でも、蒼生がそう言うからには、確信があるってことだよね。❝2❞のヒロインが、犯罪者なんかに乗っ取られちゃうなんて……。」

 ❝2❞が何より好きな千尋は、醜い姿と表情をしたアグノラに、がっかりしたような表情を浮かべた。



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