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異世界のもふもふカフェレストランで、君は私を独占する  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第41話 届いた脅迫状

 夜の町は、すでに人通りが少なかった。アクセル・ラーゲンは、魔塔からの帰り道で、背筋に冷たい視線を感じていた。

 三日前から続いている違和感。最初は気のせいだと思っていたが、今日で三度目だ。路地を曲がるたびに、誰かの気配がする。


「……またか。」

 アクセルは足を止め、ゆっくりと振り返った。路地の奥、月明かりが届かない暗がりに、黒いマントを被った人影が静かに立っていた。


「アクセルさん……。」

 柔らかい、高くて甘ったるい声。アクセルは眉を寄せた。知らないはずの声だ。しかし、次の瞬間、彼の体がわずかに強張った。その声の響きが、どこかで聞いたことがある。


「ずっと、探していました。あなたがここにいるって、聞いて……。私はアグノラ・エンデル。将来聖女になる女で、あなたのお嫁さんになる相手なんですよ。」

 人影がゆっくりとマントのフードを下ろす。少しウェーブのかかった明るい茶髪をポニーテールにまとめた、整った顔立ち。貴族の令嬢らしい上品な佇まいだった。


 アグノラ・エンデルは微笑みながら、ゆっくりとアクセルに近付いてくる。

「前世でゲーム画面越しに見てた時より、ずっと素敵。」


 アクセルの瞳が、わずかに細まった。

「……前世?」

「私、ずっと、画面の向こうに行きたかったんです。私の理想が、そこいたから。あなたに似た人を見つけて好きになったけど、やっぱり本物は違うわ。アクセルさまは、私のすべてをささげて愛するのにふさわしい人。私の為に、この世に生まれてくれてありがとう。」


 そのセリフを聞いて、アクセル──健吾は背筋がぞわっとした。

 その言葉は、前世で自分を刺し殺して来た女が、自分をアクセルと呼ぶ時に、言ってきた言葉だったから。


 アクセルは一瞬、息を飲んだ。背中が、刺されたあの夜の痛みを、幻のように思い出す。アグノラの瞳が、優しく細められる。


「なのにまた、変な女が近付いて。どうして前世といい今といい、似たような女が邪魔に入るのかしら。それもよりにもよって、❝1❞のヒロインだなんて。今度も排除するしかないかしら。そうすれば、アクセルさまは原作通り、私のものになってくれますよね?」


 その言葉を聞いた瞬間、アクセルの体が凍りついた。

「……お前。」

 声が掠れる。前世の最期に聞いた、狂気じみた甘い声。アクセルはゆっくりと後ずさりながら、絞り出すように言った。


「まさか……お前も、転生していたのか。このクソ女め……また僕と御堂さんを付け狙うのか。」


 アグノラは嬉しそうに微笑みながら、近付いてくる。自分より弱い筈の女性に、アクセルは恐怖を覚えて、逃げることしか思いつかない。

「……僕は、お前を選ばない。」

 アクセルははっきりと、そう告げた。アグノラの表情が、一瞬で歪む。


 しかし、次の瞬間、彼女は静かに笑い直した。

「そう。やっぱり、ライバルを排除しなくちゃならないのね。……まあ、悪役令嬢が、❝1❞のヒロインに変わったってだけよね。」


 彼女は自分の胸に手を当て、独り言のように呟いた。

「今度は、ちゃんと計画を立てないと。本物のアクセルさまなんだもの。失うわけにはいかないわ。」

 アグノラの瞳に、冷たい光が灯った。


「すぐにまた会いに来ますね、アクセルさま。待っていて下さい。あなたは、❝2❞の正ヒロイン聖女、アグノラ・エンデルのものなんですから。」

 嫣然と微笑みながら、マントを翻し、アグノラはアクセルの目の前から姿を消した。


「直接ライバルを消しても、アクセルさまに似た人は手に入らなかった。なら……今度は、ライバルの一番大切にしているものを傷付けて、身を引いてもらおうかしら。」

 アグノラはそう呟きながら、夜道を恐れることもなく、小走りに走って行った。


 数日後、蒼生はもふもふカフェレストランを一人切り盛りしていた。ランチタイム終了し、人がまばらになった店内であれば、蒼生一人でも事足りる。千尋はお金を銀行に預けに出ていて、まだ戻っていない。


 蒼生は一人で、静かにグラスを拭いていた。その時、店の入り口に、誰かがそっと封筒を滑り込ませた音がした。蒼生は眉を寄せ、封筒を拾い上げる。

 中には、短い手紙が一枚入っていた。


<聖女アリシアへ、

 アクセルに近付くのをやめなさい。

 やめなければ、あなたの大切にしている、悪役令嬢アマルソフィアがどうなるか、覚悟しておくことね。

 どうせあなたも、転生者なんでしょう?

 アクセルさまは、❝2❞の正ヒロインである、アグノラ・エンデルのものなんだから、つまらない気を起こさないことね。>


 それは確かに、日本語で書かれていた。この世界の文字や言葉は、異世界転生特典であるのか、日本語とは違うと思いつつも、読み書きすることも、話すことも出来る。だが、日本語で書かれたそれは、相手も日本人であり、異世界転生者であることを物語っていた。





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