第37話 イケメン2人が常連になりました
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もふもふカフェレストランは、開店からわずか数週間で、町の名物になっていた。国境近くの小さな町にできたこの店は、魔物や動物をペットのように従え、回復効果と身体強化効果のある料理を提供する、珍しい場所として、近隣の村人だけでなく、冒険者や商人、時には王都から足を運ぶ貴族までが訪れるようになっていた。
だが、特にここ数日、店内の空気が少し変わっていた。それは二人の常連客の存在が理由だった。
一人は、青みがかった黒髪に、青い瞳をした将来の魔塔のトップ賢者──アクセル・ラーゲン。
整った顔立ちにどこか優しい雰囲気を残す、涼しい目元をした美青年。
前世では高級レストラン「ガストロノミー・ルシェル」のフロアマネージャーだった名高健吾が転生した男だ。
もう一人は、魔道大国ブリュンヒル王国の不死王と呼ばれる、裏社会のボス、アズライアン・ソーサレス。銀髪に赤い目、頑健な体躯に野性味を併せ持つ美青年。
第二部の攻略対象者である二人のイケメンが、ほぼ毎日通うようになったからだ。
二人が同時に店に現れる日が増えるにつれ、町の女性たちの間で噂が広がった。
「聞いた?もふもふカフェレストランに、とんでもないイケメンの常連が通ってきてるの!」
「私もう見たわよ、料理も、もふもふたちにも癒されるけど、あの二人がいるのも、ほんとに目の保養……!」
女性たちは、まるで祭りでも見に行くようにして店に足を運んだ。
中には、わざわざ遠方から馬車を飛ばしてくる者までいた。ある午後、店内は、いつものように賑わっていたが、空気が明らかに違っていた。
アクセルとアズライアンがそれぞれ店に入ってきた瞬間、店内の女性客の視線が一斉に集中した。
「……来てる。」
「二人とも……本当に素敵。」
「何してる人なんだろうね?」
「あんた、どっちが好み?私、黒髪の方!」
「私は銀髪のほう……ワイルドでたまらないわぁ~。」
小さな悲鳴のような囁きが、店内のあちこちから漏れた。いつものように、2人は並んで中央のカウンターに腰掛ける。2人が来るのがわかってから、カウンターを選んで座る客はいなくなった。座るにしてもお年寄りばかりになるようになってしまった。
女性客に2人と比べられてはたまらないという男性客と、遠くからそっと眺めていたいという女性客が、隣を遠慮した結果である。
結果として、千尋と蒼生に最も近く、かつ常に眺めていられる、カウンターの中央の席が、常にぽっかりと空いて、2人の定位置のようになってしまった。
ゲーム内では6年後であれば、2人を知らない人間はこの国に存在しない、という設定であったが、まだ魔塔のトップになっていないアクセルと、裏社会のボスとはいえ、すべての組織を統一して束ねる前のアズライアンは、そこまで有名ではなく、ただの目立つイケメンという認識をされている。
その日も、もふもふカフェレストランのカウンターは、いつものように二つの席が空いていた。
女性客たちが遠巻きに視線を寄せる中、黒髪のアクセルと銀髪のアズライアンが、ほぼ同時に店のドアを開けた。
「……また被ったか。」
アズライアンが低く呟くと、アクセルは穏やかに微笑んで軽く頭を下げた。
「偶然ですね。お先にどうぞ。」
アクセルが先にカウンターの席を譲ると、アズライアンは面倒くさそうに肩をすくめてカウンター席に座り、アクセルがその隣に座った。
「偶然が多すぎんだよ、最近。」
アズライアンが店に来る時に、アクセルが先にいるか、後から来ることが非常に多く、また、どちらもカウンターに座る為、そこが定位置のようになっている。
「そうですね。この店の味が、どちらにとっても忘れられないんでしょう。」
アクセルがそう答えると、アズライアンは鼻を鳴らして魔物の子犬を膝に乗せた。
千尋が笑顔で二人の前に水の入ったグラスを置いた。
「いらっしゃい、アクセルさん、アズライアンさん。今日は同時ですね。」
「おう、アマルソフィア。」
アズライアンが短く返事をすると、千尋は少しだけ頰を緩めた。
「昨日のチーズケーキ、気に入ってくださったみたいで嬉しいです。今日は新しいタルトも焼いたので、よかったら。」
「……食う。でも、例のスープのほうが食いてえな。」
「あれはまだメニューに加えてなくて……でも、アズライアンさんだけに特別に、今日は少しだけ作ってお出ししますね。」
千尋がそう言って厨房へ戻ると、アズライアンの赤い瞳がわずかに細められた。
隣でそれを聞いていたアクセルが、静かに口を開く。
「……彼女、あなたには特別扱いをしてるみたいですね。」
「はあ?俺が特別だってのか?」
「はい。少なくとも、他の常連にはあんな風に『あなただけに』とは言いません。」
アズライアンは紅茶のカップを見つめながら、短く息を吐いた。
「……あいつ、人なつっこすぎんだよ。つい、調子に乗っちまう。」
「調子に乗る、ですか。」
「ああ。優しくされると、つい調子に乗って、余計なこと言っちまう。……アリシアにはそのせいで嫌われてるみたいだがな。」
水を飲もうとしていたアクセルの手が、わずかに止まった。
「……気づいていましたか。」
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