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異世界のもふもふカフェレストランで、君は私を独占する  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第37話 イケメン2人が常連になりました

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 もふもふカフェレストランは、開店からわずか数週間で、町の名物になっていた。国境近くの小さな町にできたこの店は、魔物や動物をペットのように従え、回復効果と身体強化効果のある料理を提供する、珍しい場所として、近隣の村人だけでなく、冒険者や商人、時には王都から足を運ぶ貴族までが訪れるようになっていた。


 だが、特にここ数日、店内の空気が少し変わっていた。それは二人の常連客の存在が理由だった。

 一人は、青みがかった黒髪に、青い瞳をした将来の魔塔のトップ賢者──アクセル・ラーゲン。


 整った顔立ちにどこか優しい雰囲気を残す、涼しい目元をした美青年。

 前世では高級レストラン「ガストロノミー・ルシェル」のフロアマネージャーだった名高健吾が転生した男だ。


 もう一人は、魔道大国ブリュンヒル王国の不死王と呼ばれる、裏社会のボス、アズライアン・ソーサレス。銀髪に赤い目、頑健な体躯に野性味を併せ持つ美青年。

 第二部の攻略対象者である二人のイケメンが、ほぼ毎日通うようになったからだ。


 二人が同時に店に現れる日が増えるにつれ、町の女性たちの間で噂が広がった。

「聞いた?もふもふカフェレストランに、とんでもないイケメンの常連が通ってきてるの!」


「私もう見たわよ、料理も、もふもふたちにも癒されるけど、あの二人がいるのも、ほんとに目の保養……!」

 女性たちは、まるで祭りでも見に行くようにして店に足を運んだ。


 中には、わざわざ遠方から馬車を飛ばしてくる者までいた。ある午後、店内は、いつものように賑わっていたが、空気が明らかに違っていた。

 アクセルとアズライアンがそれぞれ店に入ってきた瞬間、店内の女性客の視線が一斉に集中した。


「……来てる。」

「二人とも……本当に素敵。」

「何してる人なんだろうね?」


「あんた、どっちが好み?私、黒髪の方!」

「私は銀髪のほう……ワイルドでたまらないわぁ~。」


 小さな悲鳴のような囁きが、店内のあちこちから漏れた。いつものように、2人は並んで中央のカウンターに腰掛ける。2人が来るのがわかってから、カウンターを選んで座る客はいなくなった。座るにしてもお年寄りばかりになるようになってしまった。


 女性客に2人と比べられてはたまらないという男性客と、遠くからそっと眺めていたいという女性客が、隣を遠慮した結果である。

 結果として、千尋と蒼生に最も近く、かつ常に眺めていられる、カウンターの中央の席が、常にぽっかりと空いて、2人の定位置のようになってしまった。


 ゲーム内では6年後であれば、2人を知らない人間はこの国に存在しない、という設定であったが、まだ魔塔のトップになっていないアクセルと、裏社会のボスとはいえ、すべての組織を統一して束ねる前のアズライアンは、そこまで有名ではなく、ただの目立つイケメンという認識をされている。


 その日も、もふもふカフェレストランのカウンターは、いつものように二つの席が空いていた。

 女性客たちが遠巻きに視線を寄せる中、黒髪のアクセルと銀髪のアズライアンが、ほぼ同時に店のドアを開けた。


「……また被ったか。」

 アズライアンが低く呟くと、アクセルは穏やかに微笑んで軽く頭を下げた。


「偶然ですね。お先にどうぞ。」

 アクセルが先にカウンターの席を譲ると、アズライアンは面倒くさそうに肩をすくめてカウンター席に座り、アクセルがその隣に座った。


「偶然が多すぎんだよ、最近。」

 アズライアンが店に来る時に、アクセルが先にいるか、後から来ることが非常に多く、また、どちらもカウンターに座る為、そこが定位置のようになっている。


「そうですね。この店の味が、どちらにとっても忘れられないんでしょう。」

 アクセルがそう答えると、アズライアンは鼻を鳴らして魔物の子犬を膝に乗せた。


 千尋が笑顔で二人の前に水の入ったグラスを置いた。

「いらっしゃい、アクセルさん、アズライアンさん。今日は同時ですね。」


「おう、アマルソフィア。」

 アズライアンが短く返事をすると、千尋は少しだけ頰を緩めた。


「昨日のチーズケーキ、気に入ってくださったみたいで嬉しいです。今日は新しいタルトも焼いたので、よかったら。」

「……食う。でも、例のスープのほうが食いてえな。」


「あれはまだメニューに加えてなくて……でも、アズライアンさんだけに特別に、今日は少しだけ作ってお出ししますね。」

 千尋がそう言って厨房へ戻ると、アズライアンの赤い瞳がわずかに細められた。


 隣でそれを聞いていたアクセルが、静かに口を開く。

「……彼女、あなたには特別扱いをしてるみたいですね。」


「はあ?俺が特別だってのか?」

「はい。少なくとも、他の常連にはあんな風に『あなただけに』とは言いません。」


 アズライアンは紅茶のカップを見つめながら、短く息を吐いた。

「……あいつ、人なつっこすぎんだよ。つい、調子に乗っちまう。」


「調子に乗る、ですか。」

「ああ。優しくされると、つい調子に乗って、余計なこと言っちまう。……アリシアにはそのせいで嫌われてるみたいだがな。」


 水を飲もうとしていたアクセルの手が、わずかに止まった。

「……気づいていましたか。」




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