↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界のもふもふカフェレストランで、君は私を独占する  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/56

第36話 魂の交換③

「一応、上位貴族でしたし、なおかつ令嬢でしたから、自害に使えそうなもの以外は、手元に残しておりまして……。」

「それを見越しての行動だったのであろうな。」

 ルーク王子が言う。


「そして第二工程、魂の交換。解放された二つの魂を、強制的に入れ替えます。この工程が最も魔力を消費し、失敗すれば両方の魂が消滅するリスクがあります。」


 ルーク王子の顔が青ざめた。

「消滅する……だと?」

 クロイツが静かに頷いた。


「はい。魂の交換が禁忌とされる理由がここにあります。失敗すれば、両者の魂が消え、肉体だけが残る空の器になってしまいますので。」

「よくもそんな危険な真似を……。」

 アインが親指の爪を噛んだ。


「最後に第三工程、魂の定着。入れ替えた魂を、それぞれの新しい体に強く結びつけます。魔法陣の術式が完成すれば、魂は新しい体に完全に定着し、元の体に戻ることは極めて困難になります。今は既に魂の入れ替えが完了している状況でしょうから、そこからもとに戻すのは難しいと言わざるを得ませんな。」


 アインが息を呑んだ。

「では……どうすれば元に戻せるのですか?」

 クロイツが羊皮紙をめくり、別の紙を開いて見せた。


「解除の儀式は、交換の逆を行います。ただし、より危険で複雑です。第一に、重力魔法で対象者の体を完全に固定します。これにより、魂が勝手に逸脱しないようにします。第二に、特殊な呪いを施します。この呪いは三つの効果を同時に発動させます。」


 クロイツが指を三本立てて、順に説明した。

「一つ目、トラウマの増幅。対象者の最も深いトラウマを、強制的に呼び起こします。これにより、魂がこの体にいたくないという強い拒絶反応を起こします。二つ目、逃避衝動の植え付け。元の体に戻りたいという強烈な欲求を、魔力で強制的に植え付けます。この欲求が強ければ強いほど、魂が自ら新しい体から離れようとします。三つ目、魔力の強制排出。対象者の体から、徐々に魔力を奪い取ります。魔力が低下すると、魂を体に繋ぎ止める力が弱まるため、魂が元の体へ戻ろうとする動きが加速します。」


 ルークが歯を食いしばった。

「その呪いを……アリシアの体にかけるのか?」

「はい。魂をもとに戻すことをお望みであるのなら。ただし、注意点が二つあります。一つは、呪いが完成する前に肉体が崩壊するリスクです。もう一つは、術式を発動させた側の魂が、極めて強い抵抗を示す可能性が高いことです。相手の体を奪いたいという執着が強ければ強いほど、魂は新しい体にしがみつこうとします。」


 ホークが拳を握りしめた。

「ならば、呪いをより強力にすればいいのではないか?」

 クロイツが静かに首を横に振った。


「強すぎる呪いは、逆に危険です。魂を無理やり引き剥がそうとすると、双方の魂ごと消滅するリスクが高まります。そのため、呪いは新しい体を奪った魂だけを苦しめ、奪われた体の魂は守るという、極めて精密な調整が必要です。その場合、魔法陣を発動させた側の魂は、元の体に戻れない可能性が高いです。」


「そんな……。」

 全員がうなだれる。

「ですが、今回は別です。何より、相手が聖女の体だったということが大きいので。」


「どういうことだ?」

 ルーク王子が尋ねる。

「殿下は魔力と神聖力の違いはご存じですか?」


「魔力は自ら持つ力と、大気中の魔素を集めて使うもの。神聖力は神から授けられた加護により使えるもの、と聞いたが。」

「その通りです。」

 クロイツがうなずく。


「魔力が抜ければ人は気絶するか、最悪死に至りますが、聖女アリシアさまの体には、もともと神聖力がある。魔力が抜けたとしても、死ぬことがないのです。魔力を持っているのは、体に入っている魂の方。魂の魔力を抜き出すことで、魂を抽出しやすくなるのです。」


「おお……では……!」

「魔塔では、現在、その調整を行える魔導師を数名選抜しています。ご希望であれば、いつ頃実行に移せるか、ご連絡いたします。」


 ルーク王子が、眉間にしわをよせながら、静かに呟いた。

「アリシアを、必ず元に戻す。アマルソフィアの魂など、苦しめて追い出してしまえばいい。国の防衛など知らん。アリシアさえ戻ってくれれば、それでいい。」

 ルキウスたちが、それに同調するようにうなずいた。


 クロイツが最後に、厳しい表情で告げた。

「重力魔法で動きを封じ、呪いを完成させるまで、対象者を絶対に動かしてはなりません。下手に対象者にかかわらないようになさってください。刺激して逃げられでもしたら、呪いをかけることは出来ませんので。」


 ルーク王子が、血走った目で悔し気に唇を噛む。

「殿下、アリシアの為です。アマルソフィアにその間好き勝手させるのは業腹ですが、手出しせず見守りましょう。」

 ルキウスがルーク王子をいさめる。


「……アリシアとアマルソフィアに逃げられぬよう、警備を強化する為、すぐに特別部隊を編成しろ。それが俺たちに出来る唯一のことだ。そしてアリシアを、俺の手で取り戻す。」

 勘違いから生まれた悪魔の儀式が、千尋と蒼生に迫っていた。





────────────────────


X(旧Twitter)始めてみました。

よろしければアカウントフォローお願いします。

@YinYang2145675


少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。

ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。