第31話 僕のことタイプだったの?
「この世界で、この体になって、アクセルって名前、聞き覚えがあると思ってたんだ。あの女が言った名前だよ。」
「名高フロアマネージャーがアクセルに似てたから、好きだったってこと……?」
「え?僕って、このアクセルって人物に似てる?」
「ええ、日本人だってことをのぞけば、かなり……私たち、入社した時、似てるねって騒いでたので。アクセル・ラーゲンは、蒼生の推しなんですよ。」
「そうなんだ……まあ、自分でも、ちょっと似てるなと思ったけど。──え?待って、アクセル・ラーゲンて、御堂さんの推しなの?御堂さん、こういう顔が好きだったの?」
「ええ、まあ。推しですね、私の唯一の。好きですよ、そういう顔。千尋以外では、唯一。」
「え、待って、そのアクセルに似てるってことは、御堂さん、僕の顔、タイプだったの?」
「そうですね、顔は、まあ。」
「……それなのに振られたの?僕。──よっぽど僕のこと、嫌いだった?そんなに性格問題あるほうじゃないと思ってたんだけどな……。」
健吾は泣きそうな表情を浮かべて凹んでいる。
「名高さんに問題はないです。あの時も言いましたけど、推しより男より親友ってだけなので。」
蒼生はクールにきっぱり言い捨てる。
「確かに当時もそう言ってたね。君たちはいつも、互いが特別というか……それは今も変わらないっていうことなんだろうな。」
「蒼生は元々、男の人にあまり興味がなくて……。」
「それに……今はもっと、千尋が一番です。前世のときより、ずっと。」
蒼生はきっぱりとそう告げた。
「そっか……まあでも、死んだと思ったのに生きてたし、君たちにもまた会えた。転生ってのも、思ったより悪くないな。」
健吾は静かに紅茶を一口飲み、ゆっくりとカップを置いた。
「ところで、何を目的に、名高フロアマネージャーはここに来たんですか?」
「え?」
「私たち、ゲームを周回してるので知ってるんですけど、アクセルはゲームの❝2❞のヒーローなんです。今は❝1❞の悪役令嬢が追放された直後で、❝2❞の6年前の世界です。私たちはその❝1❞のキャラクターです。」
「悪役令嬢ってのは聞いたことがあるよ。君たちはそういう役割のキャラクターに転生したということだね?」
「はい。そこでアクセルがこのあたりに来るって設定はなかったし、ましてや、私たちは❝1❞の悪役令嬢とヒロインに転生したんです。その2人が、❝2❞の登場人物と絡む設定って、ないんですよ。アクセルがここに来て、私たちと出会うこと自体、異質なんです。」
健吾が少しビクッとする。
「……この世界での僕の役割もよくわかってないし、君たちに話して助力を求めた方がいいかもしれないな。」
「なんです?」
千尋が尋ねる。
「僕はね、このもふもふカフェレストランと、野良賢者を調べに来たんだよ。」
「……うちを調べに?」
蒼生が眉間にしわを寄せる。
「この店が、回復効果のある料理を出すといううわさがあってね、それと同時にマルカール王国の聖女がいなくなったと言う情報が入っている。」
「その聖女が、蒼生ですよ、聖女アリシアと、ここでは名乗っています。」
「そうなのかい?」
「さっき、悪役令嬢が、とか言ったじゃないですか。それを害する立場の悪役令嬢アマルソフィアが、私です。」
「それはまた……皮肉な関係性に転生したものだね。君たちの仲の良さからすると、考えられないことだ。」
「まあ……私になる前のアマルソフィアは、実際聖女アリシアを殺そうとするキャラクターなので。」
「私たちが転生したタイミングが、悪役令嬢アマルソフィアが断罪されて、追放されるタイミングだったのよ。千尋が国外追放されるのよ?だったら私が付いて行くのは当然でしょう?」
「君たちの関係性からすればね。」
「未登録の賢者って言うのは、なんですか?」
千尋が尋ねる。
「ブリュンヒル王国には、魔塔がある。そこでは、各国の賢者を登録しているんだ。そこに登録されていないのが、未登録の賢者というものらしい。基本はありえないけれど、例えば王家の影部隊に所属するような人間であれば、登録自体を拒否するわけだから、未登録の賢者もいるにはいるらしい。」
「それがうちと、なんの関係が?」
「魔塔は、もふもふカフェレストランに聖女が隠れていて、聖女を取り戻しに来た、マルカール王国の影の部隊の人間が、野良賢者として、街中で暴れたんじゃないかって思っているみたいなんだ。」
「──野良賢者が暴れた?」
「街中で魔法を使ってはいけない決まりがあるらしいんだけど、賢者にしか使えない魔法を使った人間が現れたらしくてね。それがマルカール王国の人間なんじゃないかっていう話だね。」
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