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異世界のもふもふカフェレストランで、君は私を独占する  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第28話 転生者、アクセル・ラーゲン

 その頃、蒼生たちを追いかけて見失った警備兵たちは、息を切らしながらとある場所に駆け込み、報告をしていた。


 街の警備本部に重要な報告をする為だ。

「大変です!星降りの泉近くで、魔法を使用した者が現れました!魔力追跡の魔道具を使用しましたが、未登録と表示があった為報告に参りました!」


 詰め所の責任者である中年男性が、書類を置いて顔を上げた。

「何だと?未登録だと?」

「はっ!若く美しい女性でした。黒い球体を三つに分裂させて、のちに誘拐犯だとわかった男三人を同時に攻撃していました。」


「球体の中で雷が走り……男たちは絶叫を上げて転げ回っていました。見たことも聞いたこともない魔法です!」

 責任者の顔色が一瞬で変わった。


「雷を閉じ込める黒い球体……?聞いたことがあるぞ。賢者だけが使える高度な魔法だ。そんな高度な魔法を、街中で無差別に使っただと?」


「はい。しかも、攻撃対象は誘拐犯だけでした。とらわれた被害者を救う目的だったと思われます。」


 その言葉を聞くと、責任者は拳を机に叩きつけ、それから頭を抱えた。

「そんな高度な魔法を、対象を指定して操れるような力を持つ、未登録の賢者が、この国に住んでいるなど由々しき事態だ!」


 すぐにそのことは、国を通じて魔塔へと伝えられた。そして魔塔では、すぐに野良賢者の調査に向かわせる為、一人の男を呼び出していた。


 黒髪に青みがかった瞳をした若い男性だった。整った顔立ちに、どこか優しい印象を残しながらも、目にはわずかな困惑の色が浮かんでいる。


 アクセル・ラーゲン。前世では高級レストラン「ガストロノミー・ルシェル」のフロアマネージャーだった男は、この世界に転生してからまだ日が浅かった。


 自分のこの身体が、ゲーム『悠久のロマンスを君と2人で』の攻略対象者であるアクセル・ラーゲンであること。


 そして、自分がなぜこの世界にいるのかも、その立場も役割も、まだ完全に理解できていなかった。


 責任者がアクセルを見上げ、即座に命じた。

「アクセル・ラーゲン君。君がこの件を担当しろ。野良賢者の調査だ。」

 そう言って、詳細がまとめられた資料を手渡す。


 アクセルは一瞬、目を瞬かせた。

「未登録の賢者……ですか?」

 そもそも賢者がなんであるのかすら、よくわからないのだ。


「そうだ。黒い球体の中に雷を閉じ込める魔法を使ったという。しかも、街中でだ。誘拐事件を防ぐ目的だったらしいが、そもそも街中での魔法の使用はご法度だ。そんなことも知らない人間が、賢者などという強い力を持っているなど、近隣住民からすれば恐ろしいことこの上ないだろう。」


 責任者はアクセルに渡した資料と同じ資料をめくりながら続けた。

「目撃情報によると、魔法を使ったのは若い女性だ。整った顔立ちだと言うから、すぐに見つけられるだろう。君は魔法の感知能力が高いと聞いている。適任だ。」


 そう言われても、能力の使い方もよくわかっていないのだが。だが小さく息を吐き、静かに頭を下げた。

「わかりました。すぐに調査に向かいます。」


 もとの世界への戻り方もわからない今、この体がやっていたらしい仕事を引き受ける他、生活のすべはないのだ。


「念を押しておくが、相手は未登録の賢者だ。危険が伴う可能性が高い。無理はするな。」

「はい。」


 アクセルが責任者の部屋を出ようとしたとき、責任者がもう一つ言葉を継いだ。

「ついでに、最近国境近くで噂になっている店も調べておけ。もふもふカフェだとかいうところだ。」


「もふもふカフェ……ですか?」

 アクセルは足を止めた。こちらの世界にもそんなものがあるらしい。


「そうだ。魔物や動物をペットのように従えている店らしい。聖女アリシアが行方不明になって以来、回復効果のある料理を出しているという話がある。」

「聖女、ですか。」

 そんなものまでいるのか。ファンタジー世界だな、とアクセルは思った。


「ひょっとしたら、聖女を取り戻しに来た、マルカール王国の影の部隊の人間かも知れない。それならば未登録も納得だ。もしもその店の回復効果のある料理を作っているのが聖女であるならば……そこに現れるかも知れない。」


「……承知しました。」

 アクセルはもう一度頷き、部屋を後にした。街路を歩きながら、彼は自分の手に視線を落とした。


 この手で魔法を操ったことはまだない。だが自分は魔塔の賢者だと、あの日部屋にいたメイドが教えてくれた。


 念のため魔法の使い方の本は読んだが、力を使うことはできなかった。万が一相手の賢者から襲われた場合、戦う手段がない。


 慎重に対象者かを確認し、報告をあげるだけにしようと思いつつ、アクセルは国境近くの町へと向かった。



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