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異世界のもふもふカフェレストランで、君は私を独占する  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第22話 蒼生の過去②

 だが、それはすぐに千尋の知ることとなる。転校した少女の一人が、意趣返しとして、千尋に経緯を知らせたのだ。千尋に問い詰められた蒼生は動揺した。

 大勢を引き連れて人を脅し、意のままに操り、何人もの人生に影響を与える自分。とても中学生のやることではない。


「怖いと思われても仕方ないと思ってる……。自分でも、こんな自分、化け物みたいって思ってるわ。でも、千尋のことを守りたかったの。」

 自嘲するように、自分を自分で抱きしめるように、右手で左手を掴み、千尋から目線をそらして言う。


 だが、千尋はあっさりと微笑みながら、蒼生に抱きついて言った。

「蒼生が化け物でもいいよ、だって私の蒼生だから。私の為に、やってくれたことでしょう?」


「ええ……そう……ね。」

 蒼生は千尋を抱きしめ返しつつも、そう言われてもまだ、本気で本性を見せたら……化け物の自分を見せたら嫌われる、いつか見捨てられる日が来る、と怯えていたのだった。


 またある時。高級レストラン<ガストロノミー・ルシェル>での出来事。ある後輩の男性が、千尋を執拗にストーキングしていた。

 蒼生は後輩を店の裏の路地に呼び出した。


「……千尋に近付かないでくれる?ストーキングとか、いいご趣味ね。」

 後輩はそれを聞いて笑った。

「御堂さん、嫉妬?いや、別に高倉さん、可愛いけどさ……俺はそんなつもり……、」


 蒼生は後輩の襟を掴み、壁に押し付けた。その目は完全に冷えていた。

「千尋の髪の毛一本でも、触れたら……お前の家族とここの職場にも、お前がこの先どこにいこうとも、千尋をストーキングしていた写真と、あんたがヤバいとこから借りてる借金の明細を全部送るわ。あんたの親……警察官だってね?あんたの親がクビになっても、知らないから。」


 後輩の顔から血の気が引いた。蒼生はゆっくりと手を離した。

「次はないわよ。千尋は私のものだから。あんたごときが近付けると思わないでね?」

 嫣然と微笑みながら、蒼生はそう言った。


 後輩は転げるように、蒼生のもとから逃げて行った。

『……もし千尋が私のこの姿を見たら?私が毎回こんな風に、千尋に近付く人や、危害を加えようとしている人間を、残酷な方法で排除していることを知ったら……。きっと、怖がる。千尋はとても純粋だから。そして私から、離れるかも知れない。』


 蒼生は一瞬、指先を震わせた。しかしすぐに、冷たい笑みを浮かべた。

『でも、千尋を守るためには、これしか方法がない。千尋に嫌われても……千尋が無事で、生きて私のそばにいてくれさえすれば、それでいい。私は、千尋さえいれば、化け物でも構わない。』


 そう思っていた千尋の前に、ゴミ捨て場にごみを捨てに来た千尋が現れた。怖い表情をしている蒼生を見て、一瞬ビクッとする。それを見た蒼生は悲しくなった。

『さっきまで普通だった。店から出て来た瞬間までは。だから見られてない、話しも聞かれていない筈。それでもやっぱり……ああいう反応を見てしまうと、辛いわね。』


「蒼生、どうしたの?顔、怖いよ?ずっと帰ってこないしさ。どこ行ったのかと思ったよ。休憩室にいないんだもん。なんか、やなことでもあった?」

「ん……ちょっとね。千尋もこれから休憩?」


「うん。まかない二人分もらってくるから、一緒に食べよ?」

 千尋が無邪気にほほ笑んでくれる。蒼生は改めて、千尋に近付く人間や、危害を加える人間を排除する決意を固めるのだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ご飯出来たよ、千尋。」

「やったー!蒼生のご飯、今日も楽しみ!」

 嬉しそうな千尋に、蒼生は破顔する。いつも通りの、千尋にしか向けない笑顔だった。


 だが次の瞬間、蒼生は千尋の背後から強く抱きついていた。いつもより力が入りすぎていて、千尋の体が少し浮くほどだった。


「わっ……蒼生?急にどうしたの?」

「ううん……ただ、ちょっとこうしたいなって。」


 蒼生は千尋の首筋に顔を埋め、深く息を吸う。千尋の匂い。誰にも汚されていない匂い。その匂いが何より蒼生を落ち着かせてくれる。


 千尋は少し戸惑いながらも、蒼生の腕を優しく撫でた。

「もう、私が喜ぶとすぐそうなるんだから。」


 その夜、二人はいつものように狭いバスタブで一緒にお風呂に入った。蒼生は千尋の背中を丁寧に洗っていた。タオルを優しく滑らせ、肩から背骨をなぞる。千尋は目を閉じて、気持ちよさそうに息を吐いていた。


「……ねえ、蒼生。なんかあった?」

「ん?」

「なんか、今日の蒼生、いつもよりボーッとしてる気がする。なんて言うか……昔蒼生が、私を守ろうとして、いろいろしてくれてた時みたいな。」


 蒼生の手が、わずかに止まった。蒼生に背中を向けていた千尋は気づかなかったが、蒼生の目が一瞬だけ、虚ろになった。


 森で自分がやったこと。男たちの絶叫。自分が雷を落とし、回復させ、また落とした光景が、脳裏を過った。




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