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異世界のもふもふカフェレストランで、君は私を独占する  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第12話 ヘタレメンヘラヒーロー

「離せ、このクソ野郎ども!」

 男たちは慌てて逃げ散り、千尋はアズライアンの胸に倒れ込むように寄りかかった。

「ありがとう……ございます。」


「まったく、どんだけ巻き込まれんだよ。」

 アズライアンは部下から受け取った小袋を差し出した。

「ほら、これ。賠償金だ。人質になった奴には、法的に必要らしい。」


 千尋は慌てて首を振った。

「いりません!誰からも受け取ったことないですし……!」

 部下の一人が、ニヤニヤしながら横から口を挟んだ。


「ボス、俺だけの人質になって下さい、とか言った方がいいんじゃないすか?」

 アズライアンは顔を真っ赤にして怒鳴った。


「なんだよ、俺だけの人質って!言うかそんなもん!つか人質なんて誰だっていいわ!」

 ふてくされたようにそっぽを向くアズライアン。


 千尋は思わずくすっと笑ってしまい、すぐに慌てて口を押さえた。その日は解放され、そこで別れた。だがしかし。


 ――そして後日。アズライアンが銀行強盗を計画した。前回は警備兵の目を散らす為、同時多発で、複数個所の銀行を狙った為、アズライアン一人行動だったが、今回は全員でひとつの銀行を襲う手はずだ。


 その日、部下たちが「人質を連れて来ました!」と得意げに連れてきたのは、またしても千尋だった。


「誰でもいいって言ったじゃないですか。」とニヤつく部下たち。

 銃を突きつけられたままの千尋は、意外と落ち着いている。


 アズライアンは机を叩いてキレた。

「なんでこいつ連れて来るんだよ!」

 銀行の奥の待機部屋で、二人は並んで座らされた。


 アズライアンが、苛立ったように尋ねた。

「最近どうなんだ?忙しいのか?」

 千尋はぱっと顔を明るくした。

「忙しいですね!」


 千尋はもふもふカフェレストランの話を振られたと思ったのだったが。アズライアンはそれを聞いて眉を寄せた。


「また人質になってるんじゃないのか。最近はどうなんだ、人質何人目なんだよ。人質業がメインなんだろ。」


「お金もらってませんよ!」

「それにしては慣れ過ぎだろ。人質の立ち回り、完璧じゃねえか。逃げれんだろ、本当は。」


「出来ませんよ!怖いですよ、今も……!」

 千尋は銃口をチラチラ見ながら、本気で震えた。

 アズライアンはさらに声を荒げた。


「この後カフェの仕事あんのに、こいつ手際悪いなとか、馬鹿にしてんだろ!」

「思ってませんって!」


 先日から、妙に手際の評価についてこだわるのは、部下に普段そう言われているからなのかなと、千尋は考えた。


「……俺は、六人目の男なのか」

 アズライアンがポツリと呟いた。千尋が首を傾げる。


「え?」

「人質ビジネスやって、その犯人を次々落としてるって聞いたぞ。ちまたじゃ俺は六番目の男だ、ってよ」


 千尋は必死に手を振った。

「誰とも付き合ってませんよ!確かにプレゼントはくれましたけど……。」


「やっぱりもてあそんでんじゃねえか!俺のことも、もてあそんでんのか!」

 アズライアンが憤慨する。


「プレゼントは返し辛いじゃないですか!賠償金は高すぎるから、お返ししてますよ!」

 アズライアンの赤い目が大きく見開かれた。


「誰とも付き合ってねーんだな!?」

「付き合ってません!」

「お、おお……そーかよ……。」


 アズライアンは照れくさそうに目線をそらし、銀髪を指でいじり始めた。

 その様子があまりにも可愛くて、千尋の頰も少し熱くなった。


 銀行強盗が無事(?)終わった後、アズライアンは千尋を連れて外に出た。

「慰謝料いらねえなら……どっか連れてってやる。」


 千尋は胸の内で、ふと思いついた。

『……ヒロインがアズアズに連れて行ってもらった、思い出の景色が見たいな。』


 千尋はアズライアンの顔を見上げて、微笑んで言った。。

「あなたの好きなところに、連れて行って欲しいです。」

 アズライアンは一瞬固まり、次の瞬間、顔を真っ赤にしてキレた。


「男にそんなこと言ったら、どこに連れて行かれるか、わからねえだろうが!ホテルでもどこでもってことか!やっぱ色んな男と遊んでんのか、てめーは!」


「違います!あなたの好きな景色が見てみたいんです!」

「……なんでそんなもん見たいんだよ……。」

 ブツブツ言いながらも、アズライアンは照れ隠しに千尋の手を引いた。


 エアバイクに二人乗りをし、二人が辿り着いたのは、街外れの高台だった。

 アズライアンが子供の頃、一人でよく来ていた場所。

 夕陽が沈む街並みが、黄金色に染まっている。千尋は息を飲んだ。


「綺麗……。」

 そして、静かに微笑んだ。

「この景色が見られて……本当に嬉しいです。」


 その笑顔を真正面から受け止めたアズライアンは、赤い三白眼を逸らし、耳まで真っ赤になった。

 直視していられないほど照れながら、そっと横に並んで、夕陽を見つめた。


 銀髪が風に揺れ、それを見つめる千尋の心臓が静かに高鳴る。

 不死王と呼ばれる男は、今この瞬間、ただの照れ屋の少年だった。




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