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序章 傀儡のささやき

ワイルドウインド滅3開幕です。

楽しんでいただけたなら幸いです

 15代目風の王・リティルの治世は安泰だった。

精霊達の異界・イシュラースの風の領域を治める風の王は、世界の刃として異界をも股にかけて安寧の為に戦い続ける運命を負っている。不老不死でありながら、これまで短命だった運命を変え、リティルは、世界の命運を握る精霊の1人に数えられるほどになっていた。

そこへ、未来を視、心のままに変えてしまう至宝、天照大鏡が現れた。彼の至宝の精霊は、リティルの為に集まった者達・風一家に所属する百花の治癒師、牡丹の精霊・ペオニサの弟で、リティルと風の王妃、花の姫・シェラの実子である闇の王、陰りの女帝の王配であるミモザの精霊・アシュデルの息子だった。

リティルは、天照大鏡・ギンヨウが至宝の精霊として目覚める事案に関わり「風の王の犠牲の鏡」と呼ばれている彼は、当然風の城に風一家として住むと思っていた。これまで関わってきた一家の者達がそうだったのだ。風一家には、風の精霊の垣根を越えた多種多様な精霊が揃っている。皆、リティルが関わったことで恩を感じたり、過酷な風の王の運命を共に背負おうと集まってくれた者達だった。

覚醒に携わり、あんまりな異名だが「風の王の」とつくのだから、ギンヨウも当然風一家に入ってくれるものと思い込んでいた。娘である流星姫・シャナインと結ばれ、ギンヨウは娘婿なのだ。夫婦は一緒にいるものだ。

「ねえ、ギンヨウ、風一家に入れちゃダメじゃない?」

言い出したのは、牡丹の精霊・ペオニサだった。彼は繁栄と衰退の異界・グロウタースで官能小説家としての顔も持つ、イシュラースに殆どいない放浪の精霊だった。彼はリティルの息子で副官の雷帝・インファの親友というよしみで一家入りした精霊だった。彼は、ギンヨウが長らくアシュデルに人造精霊・特殊中級精霊だと偽られて、グロウタース・白虎野島でアクセサリー作家をしていたことを知っている。それにギンヨウをアシュデルがリティルの目から隠したのには理由があったのだ。

「風の王に渡してはならない」

それは、グロウタース・黒夜の曙に国宝として安置されていた天照大鏡を、アシュデルが托された時に一緒に托された遺言だった。

天照大鏡は、過去に2度風の王の前に現れ、その事案を平定すると同時に力を使い果たして割れてしまっている。それもそのはず、未来を視、それを変える固有魔法・因果分岐は、天照大鏡自身の何かを犠牲に行われるのだ。それは天照大鏡達の命を要求し、天照達は儚く割れていったのだ。それを知る何者かが、グロウタース・黒夜の曙に隠した時伝えたようで、預言書を持つ彼の国は、預言書にしか従わない。風の王であっても彼の国は従わない。

「あの遺言、忘れたとは言わせないよ?」

ペオニサに指摘されてしまえば、リティルも多少は怯んだ。だが、ギンヨウに因果分岐させなければいいだけの話で、彼にはもう1つ、とんでもない固有魔法があるのだ。

極楽の料理法。彼の作る料理には、体力、霊力を回復させ、精神を安定させ、穢れを祓う力がある。日々戦い続けて心身共に疲弊し、なおかつ殺される者の恨みである血の呪いを祓う力のあるギンヨウの料理は、リティルにとって喉から手が出るほどほしかったのだ。

「でもな、ギンヨウは訳ありだろ?オレが引き受けた方が安全だぜ?」

風一家は、このペオニサも含めて元訳ありの精霊だらけだ。ペオニサもギンヨウが訳ありなのはわかっているらしく、不満げにだが説得する言葉を持ってはいない様子だった。

「発言を許せ」

そこへ、殆ど自分から会話に入ってこない、濡羽色の短い髪、同色のオオタカの翼を持ち、顔を額から鼻までを仮面で隠した、ミステリアスな長身の男が声を上げた。

力の精霊・ノインだった。風の精霊ではないがリティルの兄という位置づけで、風一家という事になっている。なっているが、どこか定まらない感じがしている。しかし、現状は風一家に籍を置く世界最強の精霊だ。知識量が多く、聡明で冷静、一家内でも一目置かれ浮いている存在だ。その彼が、発言?嫌な予感しかしなかった。これまで、彼がリティルを阻んだことはない。だが今、明らかにペオニサの肩を持ちそうな雰囲気だった。

「天照大鏡・ギンヨウは風の王預かりとし、住まいはこれまで通りグロウタース・白虎野島にしろ」

簡潔な物言いだが、反発なく心に響く声だ。黙していた雷帝・インファが頷いた。

「それが、いいでしょうね。「風の王の犠牲の鏡」ですか……風の精霊は近づきすぎない方がいいでしょう。遺言という名の警告を無視して一家に入れ、この城に住まわせれば、闇の王夫婦との間にしこりができかねません。ノイン、彼の様子はどうですか?」

聞くまでもない。ノインがキッパリと言ったのだ。ギンヨウにはなんの問題もないのだ。ノインが風の王預かりと言い出したのは、リティルが納得しないと見透かされていたからだ。風の王預かりで住まいはグロウタースでは、実質風の王には何もできないということだ。用事や問題がなければ、風の王はグロウタースに行かない。リティルはそれほど影響力の強い精霊なのだから。それを言ったらノインもと思うが、彼は誰よりも力の扱いが上手くグロウタースへ出ようが影響を及ぼさない。インファが問うたのは、ギンヨウに接触しましたよね?という確認と彼の審美眼への信頼だ。

「まったく問題がない。因果分岐を使わせなければ彼が損なわれることはないだろう。ギンヨウの話では、因果分岐は縁の魔法だという。一家と関わりがなければ、因果分岐できないはずだ」

そうして、ノインの太鼓判で、ギンヨウはこれまで通りグロウタース・白虎野島に暮らす、風の王預かりの、リティルとは接点のない精霊となってしまったのだった。


「ああ……ギンヨウ……引き入れられなかったぜ……」

「そう。けれども「風の王の鏡」なのだから、あなたの物よ?」

「はは、オレのものなんて言っちまったら、インファに激怒されるぜ?」

「宝をあなたに盗られそうで悔しいのよ。あの子も、王の血を引いているわ」

「!?インファがギンヨウを狙っているって言うのか?」

「あの子こそ、ほしいのではないの?副官として魔物狩りの采配をしているのよ?蓬莱の料理人としてのギンヨウを傍におければ、一家を守れるかもしれないのだから」

「あいつ!一家に入れて城に置いておいたほうがいいじゃねーか」

「あなたは間違っていないわ」

「そうだよな?」

「インファもだけれど、ノインには注意が必要ね」

「兄貴?あいつがギンヨウを見ててくれるなら、オレが抱えなくても安全だぜ?」

「リティル、ノインは風一家ではないのよ?至高の宝を盗られてしまうわ」

「そ……そうだな。ノインにはやれねーよな……」

「リティル、ギンヨウを手に入れなければならないわ」

「そうだな。ギンヨウはオレの物、だもんな」

風の王妃・シェラは、リティルの影で、美しい悪魔のような笑みを浮かべていた。


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