黒き魔王のヤマツミプロジェクト
前書き
2020年1月。物語の舞台は、爆速で世界規模の事業拡大を続ける茅野建設。東京都墨田区・押上の社長室と、山梨県・甲斐の国大学のセイタンシステムズ拠点を結ぶ、全盛期の熱量あふれる一幕だ。
お嬢様CEOである舞桜と、その兄にして「赤い社長」こと淳二。そして、あらゆる事象を「バグ」と断じ、和算と合理性で世界を再構築していく野生児・万桜。
彼らが挑むのは、既存の土木概念を根底からデバッグする「ヤマツミプロジェクト」であった。
最新鋭の「蒟蒻繊維土ブロック生成器」や「摩擦抵抗軽減台車」を駆使し、獣害や地滑りといった山の不具合を即日解決していく一行。
「山を建て、次は湖を建てる」
そんな万桜の不敵な提案が、地球を一つの巨大な箱庭へと作り変えていく。
自然と科学、そして合理性が交差する、新時代の「地球リフォーム」の様子をご覧あれ。
2020年1月下旬。東京都墨田区、押上スカイツリーの麓にそびえ立つ茅野建設の社長室。
「舞桜……お兄ちゃんに話さなアカンことあるんやないか?」
茅野建設のトップ、赤い社長こと茅野淳二は、妹である舞桜を真っ赤な顔で問い詰めていた。
社長室に鎮座するのは、本人の意識と同期した精巧な二体のアンドロイドだ。
一方で、山梨県。甲斐の国大学のセイタンシステムズ拠点にて。
「なんのことよ?」
茅野舞桜は、優雅に紅茶を啜りながら、しれっととぼけてみせた。
「なんのことよ、やあらへんがな! この数週間の茅野グループの肥大化、医学的にも経済学的にも説明がつかんレベルやで!」
淳二の操作するアンドロイドは、デスクを激しく叩き、全盛期の熱量で吠えた。
「地中海のレアメタル利権に、ハリウッドの広告独占、極めつけは日米合同の『リトル・ジャイアント』計画や!」
淳二は、手元の端末に次々とレンダリングされる新規事業のリストを指し示す。
「建設会社がなんでマッハで走る半潜水艦の運行管理までしてんねん!」
淳二の悲鳴が、電子回路を通じて押上の社長室に虚しく響く。
「現場の職人らが『社長、次はなにを建てればええんですか?』って、白目むいて震えとるわ!」
舞桜は、お嬢様らしい所作で、カップをソーサーに戻した。
「あら、兄さん。茅野グループの全盛期をリブートしてあげたんだから、喜んでいいのよ?」
「リブートの規模が地球サイズなんやわ! 黒木くんの合理性のハンマー、俺の胃袋に直撃しとるんやで!」
淳二は、領収書と契約書の山に埋もれながら、絶望に近いツッコミを投げた。
「エネルギー革命に交通インフラ、果ては育毛ビジネスまで押しつけられて、茅野グループはもう、単なる建設会社の枠を越えて『世界の背骨』になっとるわ!」
淳二の嘆きを背中で聞きながら、舞桜はふふっと不敵な微笑を浮かべた。
「いいじゃない、兄さん。我慢は身体に良くないんですもの」
舞桜は、兄の困惑を「贅沢なノイズ」としてデリートするように言い放った。
「世界中のバグをデバッグして、すべてを茅野の看板に書き換える。それが一番合理的だわ~」
舞桜のその瞳には、さらなる「全盛期の略奪」を企む経営者としての輝きが宿っていた。
「舞桜。お兄ちゃんは、舞桜にセイタンシステムズホールディングスをやりなさいと言いましたよね?」
ジト目を貼り付ける淳二に、
「ええ、茅野建設グループ・セイタンシステムズホールディングス。なにか問題でも?」
舞桜は、どこまでもすっとぼける。
「問題大ありや! 名前の順番が逆やろ! セイタンシステムズが茅野建設を飲み込んで、巨大なクジラになっとるやないか!」
淳二のアンドロイドは、激しく両手を振り回し、全盛期のツッコミを炸裂させた。
「地中海の資源も、音速の半潜水艦も、挙句の果てにアメリカの自動車産業のリブートまで! 全部うちの連結決算に入ってきとんねん!」
淳二は、パンク寸前のタブレットを指差し、白目をむきそうになりながら捲し立てた。
「経理部がな、『社長、この地中海の金銀財宝は、勘定科目のなんに分類すればええんですか?』って、泣きながら稟議書持ってきたんやぞ!」
舞桜は、扇子で口元を隠し、お嬢様らしい優雅な溜息をついた。
「あら、兄さん。それは『全盛期の雑収入』でよろしいんじゃないかしら?」
「雑すぎるわ! 数兆円規模の雑収入があるか!」
淳二の声が、電子音の限界を超えて社長室に響き渡る。
「黒木くんが『我慢は身体に良くない』言うて放り投げた世界のバグを、全部俺に押しつけるのやめてくれへんか? 茅野建設の全盛期はな、もっと地味に、丁寧にビルを建てることなんや!」
「いいえ、兄さん。今の茅野グループは、地球という名の構造物をデバッグして、全盛期の輝きへ再構築する工務店なのよ」
舞桜は、兄の抗議を心地よいノイズとしてデリートし、さらに不敵な笑みを深めた。
「兄さんも我慢しないで。世界を茅野の看板で埋め尽くす。それが一番合理的だわ~」
「そう言えば、勇希が言ってたわ『万桜に折衝任せると、話がスケールアップする』って…」
舞桜は、虚空を見つめるような遠い目をして、言葉を紡いだ。
「兄さん、合衆国大統領と折衝担当してみる?」
疲れた声音でユラリと淳二を恫喝する。
肥大化の原因は、他でもなくそれであった。
万桜の「我慢は身体に良くねえ」という不遜な合理性が、アメリゴの全盛期の熱量と共振し、すべてのプロジェクトを地球規模の略奪へと書き換えてしまうのだ。
「合衆国大統領」という単語の重みが、電子回路を通じて淳二の脳内にオーバーフローを引き起こす。
「……気張りやぁ~! ウチの看板でも法務でもなんでも使ってええで!」
淳二は手のひらをマッハで大回転させた。
国家のトップと「全盛期」を競い合うなど、いくら赤い社長でもバイタルが持たない。
「舞桜! おまえこそが茅野の、いや全人類の全盛期を背負うリーダーや! 俺はな、押上の隅っこで大人しく地鎮祭の段取りでもしとくわ!」
そして、淳二は全盛期の速度で、妹にすべての利権を丸投げした。
★ ◆ ★
「……結局、こうなるのよね」
舞桜は、通信が切れた後の静寂の中で、小さく溜息を吐いた。
「まあいいわ。兄さんが逃げ出した分のリソースも、万桜くんの和算で最適化して、すべて茅野の血肉に変えてあげるわ~」
舞桜は、扇子を優雅に閉じ、次なる「世界のデバッグ」へと意識をデプロイした。
その傍らで、梅コーラを飲み干した万桜が、ジト目で呟く。
「……舞桜、兄ちゃんに押しつけるのは、兄ちゃんの身体に良くねえだろ」
「うるさいわね、万桜くん! あんたが大陸横断鉄道を音速にしたせいでしょうが!」
甲斐の国大学のキャンパスに、再び全盛期の喧騒が響き渡った。
2020年1月下旬。山梨・甲斐の国大学にあるセイタンシステムズの拠点にて。
「じゃあ、スーファミっぽいこともしてみようぜ」
そう言って、万桜は部屋の隅でアンドロイドを操作していた淳二に声をかける。
「誰がファミコンやねんッ! ゼネコンや!」
コクピットから這い出してきた淳二が、全盛期のキレでノリツッコミを叩き出した。
これで押上のアンドロイドは、魔王システムによるオートパイロットへと切り替わる。
「じゃあよ。こうしようぜ……山、建てようぜ?」
万桜の不敵な提案に、
「「また、おかしなこと言い出したよ。この子!?」」
淳二と舞桜は、声を揃えてオヨヨと泣いた。
「山を建てるって、あんた……土地の造成じゃなくて、山そのものをデプロイするつもり?」
勇希は、医学的な血圧の上昇を抑えながらジト目で万桜を睨んだ。
「ああ。我慢して既存の地形に合わせてインフラ引くのは非合理的だろ。複合滑車で100キロのブロックを積み上げて、理想的な地層を設計するんだ。名付けて『ヤマツミプロジェクト』だわ」
万桜は、傲慢なまでに平然と言い放った。
「ちょっと待ちなさい! 山を造るなんて、茅野建設の全リソースを投入してもパケットロスが多すぎるわよ!」
舞桜が、CEOとして、経済的な損失を懸念して叫んだ。
「いいや、舞桜。これは最高の不動産パッチだぜ。グルコマンナンをアルカリ反応でコンニャク化させた疎水性ゲルのブロックは、天然の岩盤並みの強度を持つ『崩れにくい地層』になるんだ」
万桜は、ニヤリと悪ガキの笑みを浮かべて、空中に山の設計図をレンダリングした。
「……黒木くん。そのブロック、中身は粉豆腐とおからでカサ増しした蒟蒻繊維なんか?」
淳二は、建築家としての全盛期の知性を働かせ、身を乗り出した。
「当たり前だろ。多孔質な構造にすりゃ、天然のフィルター層として機能する。沢の周囲にこれを配置すれば、土砂崩れを防ぎながらクリスタルクリアな水を保てるんだわ。不衛生な環境で動物が病気にならなきゃ、鳥インフルエンザのパンデミックだって防げるぜ」
万桜の不遜な合理性は、山の源流から公衆衛生の最適化までを視野に入れていた。
「清潔な水場と餌場。医学的には、山そのものを検疫システムとして設計するわけね。確かに、沢が濁れば動物のバイタルが落ちるし、そこが病の連鎖の起点になるわ」
勇希は、万桜が提示した「山の末端」ではなく「源流の清潔さ」を保つ理論に、納得の溜息をついた。
「兄さん、聞いた? これ、単なる建設工事じゃないわ。地球の免疫システムをリブートする聖戦よ。兄さんがさっき『法務でもなんでも使え』って言ったんだから、当然このプロジェクト、兄さんが引き取ってくれるわよね?」
舞桜が、逃げ腰の淳二にユラリと微笑みを向けた。
「……わ、わかった。気張りやぁ~! 地中海の略奪よりは、山を建てるほうがゼネコンらしい仕事やわ!」
淳二は、手のひらを大回転させて快諾した。
「よっしゃ。まずは猛獣のシッコの匂いをパウダーにしてブロックに練り込むぞ。野生と人間の『全盛期のゾーニング』をデプロイして、この国のバグだらけの山河をデバッグしてやるぜ」
万桜の号令とともに、あまりにも「渋い」新時代の土木工事が、山梨の地から始動しようとしていた。
「ねえ、拓矢。このジェルのぷにぷに感、どっちが『全盛期』の山っぽいかな~?」
莉那は、無数の素材サンプルが並ぶトレイを前に、疎水性ゲルの感触を確かめながら遠い目をした。
「……莉那、それはもはや哲学の域だ。でも、このアルギン酸ナトリウムにカルシウムイオンを架橋させたタイプなら、弾力と強度のバランスが最適化されるはずだ」
拓矢もまた、知性を「山造り」という非日常に全振りし、虚空を見つめながらジェルの分子構造を脳内でレンダリングしていた。
二人は、自分たちが今、世界規模の「山のパッチ当て」という狂気的な作業の、最も重要な「触感」を選定している事実に、全盛期の眩暈を感じていた。
「これなんか超いい感じ! グルコマンナンに石灰を混ぜて、不可逆的な疎水性ゲルにしたやつ! これなら雨が降っても溶けないし、お肌みたいにプルプルなのに岩盤みたいに強いよ!」
莉那が天真爛漫な声を上げ、選定したコンニャクベースの素材を高く掲げた。
「さらにセルロースナノファイバーを混入すれば、鉄の5倍の引張強度で土粒子を繋ぎ止められる。植物の根が斜面を守る原理を、和算の幾何学でシミュレートできるわけだ」
拓矢が、パウダー状の補強材を指に取って、うっとりと補足した。
その傍らでは、万桜と藤枝が、異様な熱気を放つ巨大な金属塊に齧り付いていた。
「藤っち。スチームの圧縮率がまだ甘いわ。漸化式で計算した膨張圧のピークに、あと0.03秒足りねえ」
万桜は、ジト目をモニターに固定したまま、スチームの噴射ノズルをミリ単位で調整していく。
「わかった、魔王さま。ノズル内部の摩擦係数をリブートして、ファンネルの回転数と同期させる。これで断熱膨張の爆風が、ブロックを吊り上げる『全盛期の力』に変わるはずだ」
藤枝は、万桜の不遜なオーダーに対し、職人じみた手際でパッチを当て、風洞ファンネル発電機の唸り声を一段と高く引き上げた。
「……たく。既存の重機使ってる暇はねえんだよ」
万桜は、鼻を鳴らして噴き出す蒸気を手で払い、満足げに口角を上げた。
「このスチームで、百キロの蒟蒻ブロックを羽根みたいに軽く飛ばしてやる。それが一番合理的だろ」
「魔王さま、それだと山を『建てる』っていうより、空から『降らせる』ことにならないか?」
藤枝が苦笑いしながら指摘するが、万桜の論理はすでに、重力という名のバグをデリートする段階に突入していた。
「あー、もうこの素材に決めた! キサンタンガムの粘性と、グルコマンナンの剛性をハイブリッドしちゃおう!」
莉那が選定した植物性最強パウダーを高く掲げると、その背後でチューニングを終えたファンネルが、新時代の夜明けを告げるような咆哮を上げた。
「いいか、舞桜の兄ちゃん。山を建てるってのは、単に土を盛る『バグまみれの工事』じゃねえんだ。俺たちが作るのは、数万年かけて押し固められた洪積層をも凌駕する、全盛期の人工地層だわ」
万桜は、ジト目でモニターの地質データを指し示した。
「魔王さまの言う通りです、社長。既存の地盤工学における『崩れにくい地層』の条件を、俺たちが選定した植物性素材で完全にシミュレートするんです」
佐伯は、防大組の冷静な知性で、淳二に向かってタブレットを差し出した。
「……なるほどな。岩盤とか砂礫層みたいな、N値がアホみたいに高い理想の支持層を、コンニャクパウダーとスチームでデプロイするってわけか」
淳二は、ゼネコンとしての全盛期の感性を研ぎ澄ませ、佐伯の資料を凝視した。
「はい。まず、基盤には火成岩並みの強度を持つ『アルギン酸架橋ブロック』を配置します。これは地震の揺れをいなす粘り強さを持ちつつ、沈下の心配をデリートした人工岩盤です」
佐伯が、分子結合のシミュレーション図を表示させた。
「その上に重ねるのが、保水性と透水性を両立させた『グルコマンナン砂礫層』です。キサンタンガムの糊作用で土粒子をしっかり繋ぎ止め、液状化のリスクをパッチで書き換えます。これで水はけの良さは、天然の砂礫層以上になります」
佐伯は、淡々と、しかし情熱を込めて解説を続けた。
「舞桜の兄ちゃん、古い地学の教科書を信じてる暇はねえんだよ」
万桜は、鼻を鳴らしてモニターに新たな図面を叩き出した。
「普通の盛土は締め固めが甘くて崩れるが、俺たちの山はセルロースナノファイバーを格子状に張り巡らせた『構造体』だわ。一万年かけて固まる洪積層を、スチームの圧力パッチで一瞬にしてリブートしてやるんだよ」
「それや! その『時間の加速』こそが、俺たちゼネコンが夢見た全盛期の技術や!」
淳二は、膝を叩いて全盛期の笑みを浮かべた。
「粘土層の圧密沈下っていうバグも、多孔質の植物繊維で水分を強制排出させて解決済みだわ。見かけ上の安定じゃねえ、論理的に崩れようがない山を、そこら中にデプロイしてやるよ」
万桜の不敵な言葉に、佐伯も静かに頷いた。
「社長、これでハザードマップを書き換える準備は整いました。俺たちの作る人工地層は、もはや自然のバグに左右されない、完璧な『全盛期の基盤』になります」
「よっしゃ、気張りやぁー! 全盛期のゼネコンとして、この最強の地層の上に、歴史に残るビルを建てまくってやるわ!」
淳二の咆哮が社長室に響き、ヤマツミプロジェクトは地質学の常識をデバッグする段階へと突入した。
★ ◆ ★ ◆ ★
「よし。まずは複合滑車で100キロのブロックを吊り上げて、この国のバグだらけの山河をデバッグしてやるぜ」
万桜の号令が、寒空の下の山道に響き渡る。
その傍らには、最新鋭の「蒟蒻繊維土ブロック生成器」を誇らしげに積み込んだセイタンシステムズの特装車両が、スチームを吐きながら鎮座していた。
「あれ、俺なんで現場出てんねん? まあいっか」
赤い安全ヘルメットに、シリコン製のツノが不釣り合いに突き出した姿で、淳二は首を傾げた。
淳二の周囲には、茅野建設が甲斐の国市各地から呼び集めた、筋金入りの「村の男たち」が、やる気を漲らせて整列している。
彼らが手にするのは、重機ではなく、重機に匹敵する超軽量な複合滑車を備えた蒟蒻繊維土ブロック生成器のセットであった。
「魔王さま、スチームの充填、完了しました。グルコマンナンにアルギン酸を架橋させ、セルロースナノファイバーを混入した植物性最強パウダーを、現地の土にデプロイします」
佐伯は、泥に汚れながらも、防大組の知性を瞳に宿してタブレットを叩く。
生成器から吐き出されたブロックは、一瞬にして人工の岩盤へと硬化し、N値が測定不能なほどの支持層を形成していく。
「赤い社長、そこだわ! その角度で滑車を引けば、物理法則という名のバグが消えて、ブロックが自重を忘れて積み上がるぜ!」
万桜が、ジト目で崖の上から指示を飛ばす。
「よっしゃ! 村の力、見せたるわぁー!」
淳二が叫び、男たちが一斉にロープを引くと、100キロの巨大な蒟蒻ブロックが、まるで羽根のように軽々と宙に持ち上がる。
「ねえ、拓矢! あの斜面にジェルを流し込むタイミング、今じゃない?」
莉那は、天真爛漫な笑顔で、キサンタンガムベースの安定剤が詰まった噴射ノズルを構えた。
「最高だ、莉那。キサンタンの糊作用で土粒子をパッチしつつ、地層の『全盛期の柔軟性』を確保するんだ!」
拓矢もまた、虚空を見つめながらジェルの浸透率を計算し、現場の「触感」を完璧に制御していた。
「自然に任せてるから、土砂崩れなんてバグが起きるんだわ」
万桜は、組み上がっていく人工の稜線を眺め、鼻で笑った。
崩れかけの斜面は、今や「火成岩並みの強度」と「クリスタルクリアな水を保つ浄化能」を兼ね備えた、新時代の聖域へとリフォームされていく。
「兄さん、いい汗かいてるわね。これで山のバイタルも最適化されるわ」
舞桜が、現場に似合わない優雅な足取りで近づき、泥まみれの淳二に扇子を向けた。
「舞桜……俺、社長やねんけど、この『ツノ付きヘルメット』の重心移動、妙に合理的で動きやすいのが悔しいわ!」
淳二は、全盛期のゼネコン魂を燃やし、崩落という名の「絶望」を論理のブロックで埋め尽くしていった。
「よし。まずは猛獣のシッコの匂いをパウダーにしてブロックに練り込むぞ。野生と人間の『全盛期のゾーニング』をデプロイして、この国のバグだらけの山河をデバッグしてやるぜ」
万桜の号令が響くと、山を貫くように「匂いの境界線」が敷設されていった。
「いい、万桜。山を建てるなら、熊たちの導線と、人の導線を論理的に切り離さなきゃダメよ」
勇希は、斜面に展開されたサーモグラフィのデータを指し、医学的な厳格さで告げた。
「わかってるよ。この『境界線ブロック』には、熊が本能的に忌避する成分を和算の配合比で凝縮してあるんだ。あいつらにとっちゃ、ここは絶対に踏み込んではいけねえ『全盛期の他人の縄張り』として認識される」
万桜は、鼻を鳴らしてモニターに新たな導線図を叩き出した。
「……なるほどな。無理に追い出すんやなくて、熊には熊の、人間には人間の『通り道』を物理的に分権させるわけか」
淳二は、ツノ付きヘルメットの重心を安定させながら、熊たちが迷わず奥山へ向かうための「誘引経路」を眺めた。
「その通りよ、兄さん。あちら側には、サブリナたちが選定した栄養価の高い餌場と、クリスタルクリアな水場をセットでデプロイしてあるわ。我慢して人里に降りてくるコストをデリートしてあげれば、熊たちだってわざわざ人間に会いに来たりしないわよ」
舞桜は、泥に汚れない安全なエリアから、優雅に扇子を振った。
「やっぱ、現場はええなあ」
淳二は、熊たちの唸り声が遠ざかり、代わりに平和な森のバイタルがリブートしていく気配を感じて、全盛期の笑みを浮かべた。
「これこそがゼネコンの仕事や。コンクリートで固めるんやなくて、論理で世界を棲み分けさせる。最高に『渋い』工事やないか!」
「共存だなんだと言ってるから、獣害なんてバグが起きるんだわ。あいつらにはあいつらの、俺たちには俺たちの、領分をきっちりパッチ当てしてやるのが一番合理的だろ」
万桜は、梅クラフトコーラの最後の一口を飲み、完璧に分断された二つの導線を満足げにジト目で見届けた。
「プレハブ設置するまでもなく工事終わるってどうなん?」
淳二社長は、あまりの爆速ぶりに呆れ返った。
しかし、深刻な獣害や地滑りが即日に対策できたなら、ゼネコンのトップとして否やはない。
「年一でメンテナンスすれば、公共事業になるんじゃねえのか? 山は広いし、危ないところは人が入らないでアンドロイド使えばいい」
万桜は、なんてことのないように言ってのける。
「やりっぱなしにならねえんだから、いいじゃねえか。ここが済んだら、別のところで別の泥んこ遊びをすればいい。今度はそうだな……湖でも建ててみるか?」
万桜の不敵な提案が、爆速でリフォームを終えたばかりの山に響き渡った。
「湖を『建てる』って……あんた、今度は水文学のバグをデバッグするつもり!?」
勇希は、医学的な常識が通用しない万桜のスケール感に、めまいを覚えたように額を押さえた。
「でも、魔王さま。止水域の浄化プロトコルにアルギン酸の架橋反応を応用すれば、沈殿汚泥を瞬時にパッチ当てして、超全盛期の透明度をデプロイできるかもしれません」
佐伯は、泥にまみれたタブレットを叩きながら、すでに湖底の分子構造を脳内で再構築し始めていた。
「なにそれ、超楽しそう! 湖の底をぷにぷにのジェルで固めて、巨大な『コンニャク・プール』にしちゃうのはどうかな!」
莉那が天真爛漫な声を上げ、空中に青い飛沫をイメージするように手を広げた。
「いいね、莉那。万桜の言う通り、湖そのものを一つの『構造物』として設計すれば、増水という名のバグを完全に制御できる。流体計算、俺が担当するぜ」
拓矢もまた、進学校出身の知性を「地球の器造り」に全振りし、虚空を見つめて期待に胸を膨らませた。
「いいじゃない、万桜くん。全盛期の茅野グループに相応しい、贅沢な泥んこ遊びだわ」
舞桜は、山頂の涼風に髪をなびかせ、優雅に扇子を広げて微笑んだ。
「兄さんも、今度は『赤い水夫』にでもなって、湖底の地鎮祭の段取りを整えておきなさいな。既存のダムなんて信じてるより、よっぽど合理的だわ」
「誰が水夫やねんッ! 俺はゼネコンや! ……って、湖まで茅野建設に建てさせる気かぁー!」
淳二は、ツノ付きの赤いヘルメットを振り回しながら吠えた。
「でも、なんや……山を建てて湖を配置する。これって究極の『庭造り』やないか! 気張りやぁー! 全盛期の村の男たちと、地球を最高の箱庭にリフォームしたるわ!」
淳二が手のひらを大回転させて快諾すると、村の男たちからも地鳴りのような歓声が上がった。
スチームを吐き続ける「蒟蒻繊維土ブロック生成器」の傍らで、万桜は静かに不敵な笑みを深めた。
『鋼鉄のポジティブ ~未来の世界のネコ型ロボットを迎えに行こう~』をお読みの地球の皆様へ!
いつも拙作『鋼鉄のポジティブ ~未来の世界のネコ型ロボットを迎えに行こう~』をお読みいただき、本当にありがとうございます!
物語の中で、「魔王」こと黒木万桜は、時には「水嚢の川」で災害に立ち向かい、時には中古スマホを活用したクローズドネットワークなんて突拍子もないアイデアまで生み出しています。
実は、この物語には、万桜のそんな「もしかしたら、これって本当に役立つかも?」と思えるような、たくさんのアイデアが散りばめられているんです。読者の皆さんも、「これ、面白い!」「こんな風に使えるんじゃないか?」なんて、閃いたことはありませんか?
地球のみんなぁ~! オラに「★」をわけてくれーっ!
もし、この物語を読んで、少しでも「面白い!」「次の展開が楽しみ!」「万桜のアイデア、イケるかも!」と感じていただけたなら、どうかページ下部の【★★★★★】ボタンをポチッ!と押して、星評価を分けていただけないでしょうか!
皆さんのその「★」一つ一つが、作者の大きな励みになり、万桜の次の「魔王案件」へと繋がるエネルギーになります!
引き続き、『鋼鉄のポジティブ ~未来の世界のネコ型ロボットを迎えに行こう~』をどうぞよろしくお願いいたします!




