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山賊と小鬼の争いに介入して

地面にダイビングする


左脇腹で荒野の地面を削りながら倒れる

その上へ、敵が左手の何か武器をぐわあっ、と


覆い被さる大きな影へ、右へ向き直りながら右足を蹴り上げて、懸かった荷重を上へ蹴り飛ばす


同時に左手左脚で地面を掻き、反動で身を竦めて、股を中心に身を回し

頭を引っ込めた直後に何か重たいのが頭の近くの地面へ突き立ち、土を爆発的に撒き散らすが、もう縮めた左足は尻についてて、間髪入れずに地面を蹴りながら反動つけて起き上がりながら

右足も引き寄せて地面を蹴りつけ

浮いた敵の尻の下、股の間を身を擦りつけるように潜り抜けながら身を捻り


四つん這いに接地した直後の敵の背へ吸い付くように這い乗ると、

即座に片膝付いて振り向こうとする敵の両脇に両手両足を挿し込む


両足を鼠径部へ

左手は得物を握ったまま振り上げる敵の左腕の動きを抑える。

右手は右脇へ入れて上げるが、なかなか自由にさせない


跳びかかられてから背後をとる迄、息をもつかずに一瞬に一気に動いたので、今頃になって酸素を求めて肺が大きく激しく動く


こちらが有利な姿勢なのに、力が拮抗している

力の強い奴だ。


だが、俺が体重をかけて仰け反り、背後へ引き倒すと、奴はその右手を地面に突こうと下げる。

そこで俺は右手を奴の右手首に沿わせて強く握りしめると、ぐっと上から地面へ抑えつけて、その上で無理やりに少し横へずらしながら、上体を左から右へハンマーのように素早く振り、その勢いを自分の左腕と敵の体側を通じて伝達し、二人分の体重をその一点へ持っていく。


「アアアッ!」


敵が吠えた。

さぞ痛かろうな、二人分の体重が掛かった手首の捻挫は。


暴れようとするが、下半身は鼠径部にガッチリきまった俺の脚が決して許さない。

スリムな鎧にしておいて良かった。

あのデブい草の鎧ではこうは行かなかっただろう。

それに外装材を張ったのも良かった。

ごつごつした骨片が引っかかって、こんな円滑な動きはできなかったろう。


そして危険な得物 ── 多分、尖槌 ── を握る左手は、手首を中心に振り回されて少し危険だが、その途端に俺は奴の左腕を制している左手を伸ばして、奴の拳の上に伸びてる武器の柄を掴んでしまい、奴はもうこれ以上振り回せなくなった。


そのまま、ぐりぐりと体重を掛けた右手首を傷めつけ続ける。


「ガアアアッ!」


奴も吠え続ける。

しかし、声に愕きと怒りが入っていたさっきに較べて、今は泣きが入り始めている。

痛かろうなあ、ふん。


さて、一瞬冷静になった俺は、すぐに首の横へ右手を伸ばし、敵と一緒に右を下にして地面へ崩れ落ちても両足と左手の押えは解かず、自由な右手にナイフを抜き出すと、奴の兜の隙間、目へと突っ込んだ。


「ギャアアアアッ!」


今や純然たる悲鳴と化した叫びを上げる頭目へ、脳の奥を抉るべく、ずずいと石の尖った刃を力を込めて奥へ送り込み、抉る。

瞬間、ビッ、と反応があり、即死した。


死体を俯せにして、足を抜いて立ち上る。


何かトヨが叫んでるが、今、俺のすべきことは ──



山賊の手下どもは、頭目が単騎で邪魔っ気な傭兵の若造(俺)を討ち取りに行った、安心だ、頭目ならやってくれる、そう信じて、俺達の状況をまだ知らないらしい。

必死に小鬼と戦い、別動隊の働きに期待している感じだ。


その別動隊は、小鬼の中でも強いのを殺したらしく、小鬼は全体が浮足立っている。

既に烏合の衆。

小鬼は数だけは多く、最初こそ圧倒していたものの、今や二十匹も居ない。

山賊は別動隊と本隊の生き残り、合わせて15,6人居る。


小鬼が狩り尽くされるのも時間の問題だ。

そうなると、ぼくたちの進退も危ぶまれてくる。


俺達 ── 俺と死体 ── の周囲には、幸いお代わりは居ない。


そこまで戦況を観て取った時、トヨの声が耳に入る。


「籠は担架だッ! 逃げるぞッ!」

「っそうだな!」


山賊の頭目の死体が目の前に臥している。

その良質な装備が気になるが、こんなところで欲かいて暢気に戦利品を剥いでいたら、まず確実に手遅れになる。

逃げるに如かず!


取り敢えず、死体をひっくり返しながら目に突き刺したナイフを引っこ抜き、脇の留め具をバチバチ断ち切り、鎧を少し捲ると、懐に巾着があったので、固定している紐ごと引っ張ってナイフで切り、巾着袋だけ引き抜いて、手に紐を巻きつけて落ちないようにする。


えっ、戦利品を暢気に剥いでる場合じゃないって言っただろうって?

そりゃ良質な防具は、残念だけど諦めるよ。

何カ所もある留め具を一々全部外したり切断してる場合じゃないからな。

俺にとって戦利品として最も気を惹かれるのは、防具なんだ。

良い防具が目の前にあるのに、拾っていけないなんて、惜しくてしょうがないよ。

でも、ちょっと捲ってちっちゃな巾着を取って行くくらいなら、別にいいだろ?

そんなのはついでだよ、只のついで。

防具が主で、お金が従なんだ、ぼくの場合。


それから、地面にダイビングしてしまった時に抛りだしていた敵の重たい手斧と、死体の手から落ちた尖槌と、それからついでに使い慣れた棒網も勿体ないから走りながら拾い上げ、拡がってる網を引っ張って腕に巻き上げ、先に逃げ出すトヨの後を追いかけて走り出す。



トモエコマサは、さっき倒した敵幹部の装備を剥いで、ついでに担架を組み立てて、襤褸にまとめた戦利品とトヨとぼくの背負い籠まで載せて、既に街道へ向かっていた。

そこへトヨと追いつく。


「退くぞっ!」

「ええっ!」

「おう、やってる!」

「オウ!」


マサは撤収隊列の先頭に立って、トモエコと三人で全力で荒野を街道へ脱出しだした。


ぼくは左腕に巻き付けた棒網の中に挿し込むように戦利品の斧と尖槌を突っ込み、左手に重い巾着を握りしめ、全体としてかなり左側が重たくなった状態で走る。


トヨは担架に追いつくと、自分の背負い籠を引っ張り上げ、ぼくの背負い籠も引き揚げて、寄越したので受け取り、自分で担ぐ。

これで三人が曳く担架の重量は減り、速度が上がる。


が、俺が曳いた方が速そうだ。


「代わるっ!」


酸欠で頭がぼんやりして痛みもあるが、とにかく担架の握りに割りこみ、奪い取り、トモエコマサには自由に走らせる。


先ずは、曳いて走って、街道へ。




拙作をお読み頂き、まことに有難うございます。


作業BGM: Hubert Kah "It's Me, Cathy"

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