退治依頼完了後、ラクマカ北の荒野へ
翌日、また荒野へ出かけて、昨日放置して来た多数の野犬の屍骸から骨だけでもいいので素材回収に行く。
ぼくが木の槍と襤褸布の即席担架組み立て材料を携えて行く。
無事に現場に辿り着くと、小鬼の群れと山賊が野犬の屍骸を巡って闘っていた。
既にカラスに肉はかなりつつかれているが、まだまだある死肉へ群がろうというのだ。
ぼくたちは、小鬼を包囲しようと別動隊を動かしている山賊の本隊の背後から襲撃して、小鬼と挟撃する態勢になって、寡兵ながら有利に闘う。
優勢な敵に近寄ると危険なので、トヨもぼくも距離を保って弓を射る。
矢の数は限られてるから、よく狙いをつける。
ぼくはまだ弓は下手なので、火矢を担当。
トヨが射撃に集中できるように、周囲警戒はトモエコが担当。
マサは当然皆の楯。
鬱陶しがられたか、山賊が5人ほど本隊から分かれて、こちらへ迎撃に出て来た。
山賊の本体は山賊の頭目に率いられた二十人規模の大部隊。
別動隊が1ダースほど。
別動隊が小鬼を背後から襲いだしたが、山賊本隊もぼくたちへ人数を割いているので、本隊はまだ劣勢のまま、襲い掛かって来る小鬼の群れを迎え撃って闘っている。
こちらへ邀撃に来た山賊五人のうち一人は幹部クラスで体格も装備も良く、タフそうだ。
硬革の鎧兜を装備し、手甲脚絆も良質。
楯は持っておらず、得物は石の長柄斧を両手で握って振り回すようだ。
そいつにはマサが抑えに出て、その手下四名の前にはぼくが立ち塞がる。
トヨが弓で、ぼくが石斧でやっつける。
トモは楯を構えてマサの側面を庇い、エコは荷物を守り周囲を警戒。
敵幹部の長柄斧の破壊力はかなりのもので、マサも楯の補強材を割られてしまったが、楯を使い潰してでも敵幹部を通さない覚悟で、縁の補強材を使ったりして、持ちこたえている。
「こいつら! くそっ!」
部下が一人一人やられてゆくのをどうにかしようとしても、マサに邪魔され続けて突破できず、意外に手こずると判って、顔が引き攣る敵幹部。
幹部の面子上、本隊へ逃げ戻ったり、援軍を求めたりするわけにもいかず、必死に闘うが、次々に部下が討ち取られて、遂に一人だけになった。
一人きりになった山賊幹部は、長柄斧を振り回して暴れるが、次第に追い込まれてゆく。
「マサッ、俺の楯を使えよッ!」
マサの楯がもうヤバいので、俺の楯を抛ってやる。
俺は石斧を帯に戻すと、棒網を取りだす。
幹部の背後にまわって、網を拡げて、廻し始める。
そうなると敵本隊に背後を見せることになり、危険なので、トモに楯もって護って貰ってる。
幹部の背後から足元へ飛ばした網が絡みつく。
引き倒す。
倒した幹部の上へ、すかさずマサが抑えつけに進み、トヨが横から背後に乗り、肩や腕を押さえつける。
僕は網を引き、足を抑える。
トヨが石のナイフを抜くと、首を切り裂いて殺した。
山賊本隊は迎撃に出した幹部の分隊が全滅した。
他方で、小鬼もまた挟撃されて混乱している。
しかし、小鬼はもともと凶暴な本性に従って襲っているので、指揮系統の乱れの影響はほとんどない。
よって、小鬼による犬肉奪取の為の山賊との争いはまだまだ続く。
この好機を逃す手はない。
こちらにもう迎撃を派す余裕がない山賊本隊。
窮鼠猫を噛む惧れはあるが、今やらなけりゃ、やりようがない。
「戦利品回収と撤退ッ、頼んだっ!」
「任せて!」
トモエコが良い返事をする。
恐れずに棒網を振り回しながら、単騎で前へ駆け出す俺。
それをトヨの矢が援護するが、矢の残りが少ないのは知っている。
あまり長居は出来ない。
集る小鬼を蹴散らしながら、逸早く俺の接近に気付いた山賊どもが、チラチラ俺を気にして、集中力を欠いたところへ小鬼の攻撃を喰らう。
一発で倒れたりはしないが、小鬼を倒す速度が低下する。
更に接近し、遂に棒網での最大攻撃半径内に捕捉した。
俺は直ちに山賊の足元へ棒網を5mほどの距離から当てて行く。
絡ませようとはしない。
あくまでも、かすめる程度に抑えて、敵の効率を低下させる。
デバフに徹する。
あくまでも、奴らに正面から当たってる小鬼の支援だけだ。
思いっきり棒網の棒、だけでなく自分の上半身まで傾けるようにして、腕を一杯に伸ばして、ぶうーん、ぶーんと網の端の錘で山賊の足元を掠めて行く。
もしも敵が怒って一人でもこちらへ駆け出して来たら、一人だけなら本気で転ばすが、二人以上なら即座に逃げ出すつもりで、とても緊張しながら嫌がらせのような真似を続ける。
だが、山賊は無視することに決めたらしい。
ならば、更に半歩だけ近寄り、足にびしりっ、びしりっ、と最大距離から間遠に当てだした。
やられた奴が、後ろを気にしだして、小鬼の相手が少し疎かになる。
その調子だ。
できるだけ、毎回別の奴へ当ててやる。
そうして、できるだけ多くの山賊どもの注意力を散漫にしてやる。
するうちに、いきなり頭目が一歩こちらへ大きく踏み出した!
ヤバイっ
棒網はたった今、まさに頭目の脚の後ろにびしりっ、とやったところで、網は左後ろに来ていた。
くるりと振り向いた頭目が、俺をぐっと睨みつける。
次の瞬間、手にしている何か得物を、思いっきり俺目掛けて投擲して来たッ!
あっ、という感じで、咄嗟に俺もくるっ、と棒状にした自分の身体を回して地に倒れ伏す。
同時に地面を両手で突いて、上げた視線の先の地面にグルグル回る斧が突き刺さるのを見るのと同時に立ち上がり、撤収ウゥッ!
転がるように走るっ!
棒網はさっき頭目の投擲を回避した際に咄嗟に手放していて、もう手の中に無い。
失くしてしまった。
いや、後方に吹っ飛んだから、余裕があれば拾えるが、今は余裕なんか欠片もない。
が、頭目の斧を代わりに拾い上げる。
この斧、短い手斧だが、刃の石が大きくて重く、結構良い斧だ。
もう一丁投げられたら、骨鎧の上からでも結構なダメージ喰らいかねないので、必死にジグザグに走って逃げる。
だが、投げる迄も無く、怒れる頭目が単騎で追いかけて来ていた。
俺を追いかけ、俺に追いすがり、手を掛けて倒し、そのまま殺す心算だ。
すぐ背後に迫る強力な死の手を意識させられつつ、あっ
しもとが、狂った




