呪歌使い戦記第八十一話
「ほんまもう! 前ルイスせんせとプイス君が喧嘩してた時はプイス君がなかなかな無茶してるな思うたけど、ルイスせんせも無茶しよるやないの!」
「わ、わかったわかった。カーティス、説教はそのくらいで……」
「あかん! 人のこと言う前に自分が無茶したらあかんねん! そらプイス君も無茶するわ! 無茶するルイスせんせ見て育ってるんやもん!」
カーティスさんの目は先生に向いた。あの背中が猫背になってカーティスさんの説教を聞いている。こんな先生、初めて見るかもしれない。
「プイス君」
ハーゼルの目が僕の目を覗き込んでいる。……あの件、謝らなくちゃいけないな。
「ハーゼル、一つだけ聞いてくれるかい?」
「なぁに?」
ハーゼルの麦の穂のような金色の瞳が僕を見上げている。ああ、罪悪感。
「実は、もらったハンカチをだめにしてしまってね……。水通ししたり、アイロンをかけてみたりしたけれど、どうにもならなくて……」
戦場で右手にナイフを縛り付けるのに使った木綿のハンカチは、無様に伸びきってしまった。ハーゼルが僕のためにと糸を紡ぐところから作ってくれただろうに、頑張って覚えた僕の名前を刺繍してくれただろうに。
「せっかくハーゼルが僕に、ってくれたのに、ごめん」
「なんだ、そんなこと」
ポケットから取り出したハンカチは、綺麗な正方形だったのが伸びて不格好なひし形になってしまっている。僕の手のひらの上の白いハンカチを取り上げてハーゼルは言葉を続ける。
「私のおばあちゃんね、言ってたの。名前の刺繍を入れた白いハンカチは、大切な人が無事に帰ってきてくれるおまじないだって。ちゃんと叶ったから、それでいいの。それよりも今度はもっと綺麗に刺繍したのをあげたいから、ちょうどよかった……なんて」
「ハーゼル……ありがとう……」
感謝を込めて、ハーゼルの柔らかい髪を撫でる。三つ編みのお下げにした栗色の髪が揺れて、くすぐったそうに笑った。
「プイス君は私の先生なんだもん。これからもいっぱい、たくさん教えてもらわなくちゃだし!」
「ふふ、そうだね。僕もハーゼルに教えていないことはたくさんあるし、これからもハーゼルの先生を頑張らさせてもらおうかな」
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