表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/85

呪歌使い戦記第六十三話

「……ごめん。これ、返すね」


 木彫りの蹄鉄を左手首から抜き取って、革紐ごとアスチルベに手渡す。帰って来られなかったアスチルベのお兄さんの形見は、僕に幸運をもたらしてくれた。そう、先生と一緒にあの戦場を生きて切り抜けられたのは幸運なこと。僕はただ運が良かっただけ。だから、英雄なんて言われる筋合いはない。


「ああ。これさ、あげる。俺が持ってるよりあんたが持ってた方がいいでしょ」

「でもこれは、お兄さんの形見なんじゃ」

「言ったでしょ、兄貴とおそろいって」


 ほら、とシャツの下から手繰り寄せた革紐には、僕の手の中にあるものと同じ木彫りのチャームがついていた。首から下げた幸運のお守りは彼の祖父の手作りと言う。そんな大切なもの、僕が受け取るわけにはいかない。アスチルベは差し出した兄の形見を頑として受け取ろうとはしなかった。


「プイス、受け取っておきなさい」


 先生にそう言われては、受け取る他にない。外した革紐は左手首にとんぼ返り。


「うん。やっぱりそれはプイスが持ってた方がいい。俺が持ってるよりずっと」

「……ありがとう……ございます……」


 僕の返事を聞いて、アスチルベは一回だけ手を打ち鳴らした。この話はここまで、と言わんばかりに。


「さ! 今夜は祝勝会だ、獅子が竜に勝ったお祝いの晩餐会だよ。お湯の準備してるから湯浴みしてさっぱりさせよっか。繕い物とか洗濯物とか、その辺も出しといてくれたらやっとくし。……あ、先生様の腕、どうしよっか。介助に女官つけれるけどどうする?」

「一人で大丈夫だよ。右手は動くんだから」

「そう?」

「不便があってもプイスが一緒だからね」

「それもそっか。じゃあお湯の桶もらってくるね」


ここまで読んでくださりありがとうございます。

よければ評価や感想いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ