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村での生活 その7

 一番下まで辿り着くと正面に道が続いていた。俺は道なりに進んでいく。先にはかなり小さいが光が見える。念の為に魔法は消して足音を立てずに歩く。

 5分ほど歩いてようやく辿り着くと大量の照明で昼間以上の輝きを放つ何かが行われてる会場らしき場所。さらに目の前には目元を仮面で隠した大勢の人間がいた。一番前は1段高くなっていてスポットライトが当てられている。

 これは俺も空気を読んだ方がいいだろう、と思い魔法で仮面を作り目元にはめる。フードをしているので顔は見られないと思うが念の為だ。それに身長が小さいお陰で誰にも気づかれていないようだ。

 人の間を縫って前へ進む。こういうとき身長が小さいのは有難い。ただ、全然ステージが見えない。前には大人たちが壁を作り、先を見通すことが出来ない。たまに全員が歓声をあげているがなにがなんなのかさっぱり分からない。

 俺はやっとの思いで一番前に辿り着き、顔を上げるとステージの上に何かが立っているのが見える。ただライトが眩しすぎて一瞬、目が眩んだ。数十秒ほど目を慣らすとようやく見えた。そこに立っていたのは首輪で繋がれ、手枷がつけられた白髪の少年。年は俺と同じかそれより一つ上ぐらいか。ただ疑問に思ったのは白髪で碧眼だということ。そして少し見覚えがある顔だということだ。

 いや覚えている。昔から人の顔を覚えるのは得意だったんだ。通りすがりの人間ですら1日は覚えている。そして俺があの村に行くときに一緒に馬車に乗っていたやつだ。


 「なんであいつがここに?」


 名前は全く覚えていない。それもそうだ、自己紹介すらしてないし、村に行ってからも一度も話したことはない。なんか、見覚えあるな〜という感じだ。

 そんなことよりもなぜこいつがここにいるのか、だ。あの村からは絶対に出られないはずだし。それにあの格好まるで奴隷みたいだ。ボロ切れみたいな薄汚れた服を着せられ、これだけ明るいはずなのに目に光が宿ってない。


 「さあ、ここにいるのは滅多に生まれることのないイクスの子供。人間よりも基本能力が劣るので調教しやすく、奴隷としてはとても重宝しますよ」


 突然そんな声が聞こえてきた。なるほど、まさに予想した通りだった。

 ただ現実にこういう闇オークションがあるのは衝撃を受けた。やはり俺もまだまだぬるま湯に使っていたということだろう。日本というもはや異国いや異世界のことをまだ引き摺っていたとはな。俺はもう日本人でもましてや地球人でもないのにな。こういう事があるのは当たり前だと思わなくては。この世界は前の世界とは価値観から全て何もかもが違うんだ

 俺は昔からこういう映画などを観ても心は痛まなかった。なので結構簡単に受け入れることができる。

 それのせいでサイコパスなんて呼ばれていたんだが……というわけで別に今のこの状況を目の当たりにしても可哀想とか一切思わない。周りからは他人に共感のできない奴だとか考えが歪んでる、と言われてたし。


 俺は目の前の子供が買われたところを確認し、次の商品が出てくるのを見るとその場から立ち去った。次に向かったのが買われる前の商品が保管されている場所。先程、どこから出てくるのかを見ていたのでバレないように『透明(インビジブル)』使い、中に入っていく。

 少し歩けば、薄暗い部屋にたどり着いた。なにがあるのかわからなかったから魔法で明かりを灯す。

 そこには檻に入れられたイクスやエルフ、獣人がいた。どうやら奴隷専門の闇オークションのようだ。全員に首輪がつけられ目に光が灯ってない。さっきの奴もそうだったが原因は多分この首輪だろう。

 俺は近くにあった獣人の檻に近づく。が、全く反応がない。まるで屍のようだ。俺は檻の隙間から手を伸ばしフサフサの耳を触る。漫画とかだと嫌がるか変に喘ぐかのどっちかだったが、やっぱりピクリともしない。

 まあ、嫌がらないならそれで結構。少しだけこのモフモフを堪能させてもらおう。

 数分が経つとここのオークションのスタッフが走ってやってきた。魔法の明かりを消し壁側による。透明にはなっているが一応隠れる。


 「えっと、次はこいつか」


 そう言って近づいたのがさっき俺がモフモフしていた獣人だった。もう少しだけ堪能したかったが仕方ない。いい奴に買われろよ、そんなことを心の中で思う。ここに来る人間がいい奴だとは思えないがな。


 「さてと、イクスがここにいるのは少し気になるから村に戻ったらあいつを引き取った奴に聞いてみるか」


 俺は独り言を小さく呟きながら、元来た道を戻る。地上に出ると街は明るく賑わっていた。ここの真下で闇のークションが開かれていることが信じられないくらいだ。

 俺は目元につけた仮面を外して、その辺に投げ捨てる。ちょうど裏路地ということもあって誰にも見られていない。魔法陣を足元に展開して詠唱する。


 「『転移』」


 俺は家の自分の部屋をイメージして魔法を発動する。瞬間、部屋の中についていた。俺は両腕を真っ直ぐ上にあげ、体を伸ばす。

 その時ドアが開かれた。


 「はあ、アクシスどこに行ったんだろ?」


 呟きながら入ってきたシルクは俺を見つけるなり走って近づいて来た。あまりの勢いに驚いてベッドに尻餅をついた。


 「どこに行ってたの?私をまた1人にした。約束破った」


 表情に変化はあまり見られないがいつもより眉間に皺を寄せて頬を膨らませている。語気も強くなっているような気がする。というか強い。珍しくシルクが完全に怒っている。


 「今回ばかりはシルクを連れて行くことはできなかったんだ。本当にごめんな」


 俺は頭を下げてシルクに謝る。シルクはそっぽを向いて全く許してくれそうにない。


 「約束破ることは悪いことってグライジンが言ってた」


 「そうだな……確かに俺は悪いことをした。ここは責任を持ってこの家を出て行くしかないな」


 俺がそう言うとようやくシルクが俺の方を向いた。その瞳には驚きと焦り、それから困惑の色が読み取れた。視線をあちこちに彷徨わせてオロオロしている。


 「本当に出て行っちゃうの?」


 「シルクがこんなに動揺するなんて珍しいな。安心しろ冗談だ」


 そう言うとシルクがホッと息を吐いた。


 「よかった……」


 「そもそも、まだ6歳だしな。出て行ったってどうしよもない」


 俺はこのまま家で残りの時間を過ごした。街の闇オークションにこの村の人間が出ていたことは明日にでも探ればいい。

 しかし、あの少年はどこの家に引きとられたんだ?顔ははっきりと覚えているが名前が分からないんじゃどうしようもないな。

 俺が悩んでいるとシルクが心配そうな顔をして話しかけてきた。


 「どうしたの?アクシス」


 「ああ、ちょっとな。顔は覚えているんだが名前を思い出せなくてな」


 俺がそう言うとシルクは少しだけ考えて言った。


 「なら似顔絵でも描いておじいちゃんに聞いてみたらわかるかも」


 「なるほど。それなら名前を確かめられるな」


 俺は立ち上がり紙とペンを探すがそんなものはなかった。この村にはそもそも紙を作る技術がないし、売りに来るような商人もいない。

 最初から探しても無駄だったのに、何してるんだろうな俺は。まあ、そんなことはどうでもいいや。

 俺は両手に魔法陣を展開して紙とペンを創造する。今度は椅子に座り、机に向かう。顔は覚えている。それをそのまま描く。

 10分ほどで絵が完成した。意外にも上手くかけたと思う。1人で勝手に満足しているとシルクが横から覗いてきた。


 「これ、誰?」


 やっぱり、知らないか。まあ、シルクはそんなにこの村の同年代と会話しているところを見たことがない。そもそもこの家の人と俺以外話したことがないんじゃないか?

 そんなことを一瞬思ったが、今の目的はそんなことではない。俺は少年の人間の似顔絵が描かれた紙を持ってゴースファータ達がいるリビングに向かう。

36話目の投稿になります。作者の霊璽です。

前回の投稿からだいぶ時間を空けてしまってすいませんでした。本当は2月にも投稿する予定だったんですが色々と重なって投稿する機会がなくなってしまいました。3月は暇な時間があるので遅れた分を取り戻すことはできると思います。

これからもよろしくお願いします!

それではまた次回の話で……

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