盗賊退治
両手の魔法陣からバレーボール程の大きさの漆黒の炎が出てきた。
他の魔法陣は何を使うのかまだイメージ出来ていないので展開してまま保留にしている。
逃げられない事を悟ったのか盗賊達は武器を構えた。
「地獄に落とす、とは言ったが色んな殺し方を試したいから付き合ってくれよ。まずは『地獄炎』」
一番近くにいた2人に向けて漆黒の炎を放つ。炎球は2人の足元に目掛けて飛んで行く。
足元に辿り着くと身に付けていた防具を一瞬で燃やし尽くし、露出した肌をじっくりと焼いていく。
「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛」」
地獄の炎に焼かれている2人は人とは思えない程の叫び声を上げる。ゆっくりと足元から焼かれており今は太腿の辺りまで炎が上がっていた。
彼らは炎を叩いて消そうとするが一向に消える気配がない。消えるどころか炎が手に移った。
今度は仲間の1人が魔法を使い水球を生み出し彼らにかけるが全く勢いは衰えない。そもそも量が足りていないと思う。
「クソッ!な、何で消えないんだ!」
「地獄の炎ってそういうものだと思ったんだが違うのか?」
燃えていない盗賊達に聞くが今は2人の体に纏わりついている炎を消そうとしていて全く聞いていない。
周りに展開した五つの魔法陣を1人ずつ足元に移動させる。
「飛行」
「なっ!?」
俺は飛行魔法を使い、5人を中に浮かせる。盗賊達は空の上で手足をバタつかせる。
「降ろせッ、この、クソガキ!」
俺は盗賊達の声を無視しそのまま高度を上昇させていく。肉眼でゴマ粒程の大きさになるまで上昇させる。
「おお〜結構な高さまで上がるもんだな。よしこの辺で良いだろう」
俺は魔法を解除する。どうせ、暫くは落ちてこないだろうから今の内に治療しておこう。
倒れている御者と護衛を数え、合計で8人生きている事を確認する。傷口は魔力を視て確認済みなので彼らの下に魔法陣を展開して治癒の魔法を使う。気絶しているがそのうちに目を覚ますだろう。
無事に終わり少し空を眺めてボーッとしていると五つに黒い影が大きくなりながら降って来る。
「おっ、降ってきたか。えーっと、盗賊達の長はどれだ?」
魔力核を確認して真ん中にいる奴だけに魔法陣を展開して宙に留めて置く。他の奴らは少し経ってから地面に激突し、内臓を撒き散らしながらぐちゃぐちゃになった。誰が誰だかもう分からない。
宙に留めて置いた最後の1人を地面に優しく降ろす。
いつの間にか炎で焼かれていた2人は灰すら残さずに燃え尽きていた。
俺はパンッと両手を合わせて目の前で絶望した様な顔をして座り込んでいる盗賊の長に話しかけた。
「じゃあ、最後はおっさん1人だけになったけど…どうする?どうやって死にたい?」
「……悪魔め。俺の仲間をよくも殺してくれたな!コイツらにだって家族ぐらいいるんだぞ!」
最初はなって言ったのか聞こえなかったがその後は馬鹿みたいにデカい声で叫んでくる。
しかし、面白い事を言うもんだ。家族がいると言うのにこんな事をしているのか。
「家族がいるのに何でこんなことしてるんだ?もっと真っ当な仕事すれば良いじゃん」
「それが上手くいかねーんだよ。俺達は家族を養うためにこうするしかなかったんだ」
特に何も言わずに黙って聞く。おっさんは神妙な面持ちで語り始めた。とても興味のない話なんだが…
「俺達の村は元々貧乏でな。そのくせ人数だけは多いから色んなことに金がかかる。更に税金を納めなくちゃいけない。こんな状況なんだ、納められる訳ないのにな。」
一旦話を切って、深いため息を吐いている。
何この雰囲気?早く馬車に乗って出発したい。ていうか、よく仲間殺した子供にこんな話するね。同情でも誘ってんのか?
色々考えているとまた勝手に話を再開した。
「だから手っ取り早くこの街道を通る商人の荷馬車や乗合馬車を襲って金や食料を奪っていたわけさ。それよりもどうする、俺も殺すのか?」
「勿論、そうするつもりだけどその前に一つ聞いていいか?」
「なんだ?」
「おっさんの住んでいる村ってのはどこにあるんだ?」
「この森をずっと真っ直ぐ行くとあるが、何でそんな事聞くんだ?」
意味が分からないっといった様に俺に顔を向けてくる。聞かれた事を無視しておっさんが指を指した方を意識して魔力を視る事に集中する。1キロ程先に確かに集落があった。大きくはないが活気がある村だ。
「よし、見つけた。お前1人で地獄に行くのも可哀想だから村の人達も連れて行くといい」
「…どういう事だ!?俺の村の人、全員殺すっていうのか!」
「そんな事言ってないけどそれが望みなら叶えてやるよ。あと少し黙ってて。よし、それじゃあ行くぞ」
俺は自身の足元に魔法陣を展開して飛行を使い、おっさんの首根っこを掴んで森の木より高く浮かび上がり森の奥にある村まで飛んで行く。男の声帯に魔法陣を展開させ声が出ないようにして黙らせた。
少し進むと森が開けた。そこには魔力で視た村があった。村人達は宙に浮いている俺を見ている。
「見つけた」
俺は小声で呟くと地面に下降した。村には木で作られた簡素な柵が周りを囲っている。その柵の一部を引き千切り中に入る。
俺の元に数十人の村人が集まり始めた。最初は物珍しそうにこちらを見ていたが俺に捕まっている人を見てギョッと目を見開いていた。そして彼らの視線は俺と傍にいる盗賊の長と交互に行き交っていた。
「この人ってこの村に住んでいる人で良いんですよね?」
俺は右手に掴んでいた男を持ち上げる。かなり声を張ってここにいる数十人には聞こえるように言う。しかし誰からも返答がこない。
「聞こえてないのか?…ふぅ、もう少しだけ声を出すか。あのッ、この男知りませんか!!」
「…っ!?そ、その人ならこの村の人です…」
急に大声を出したのでびびって誰かが咄嗟に返事をしてくれた。どうやらこの男が言っていた事は本当らしいな。
「この人が僕たちの馬車を襲ったんですけど、どうしてくれるんでしょうか?」
そう言うと今度は右手に杖をつきながら年老いた婆さんが傍に俺と同い年くらいの子供を連れて前に出てきた。
「そやつがそのようなことをする筈がなかろう。何かの間違いじゃろ」
「いや、間違いないです」
「どうしてそのような事が言えるのかな?」
杖をトントントンと小刻みに地面に打ち付けている。かなり苛立っているようだ。
ここは一つもう少しだけ苛立たせておくか。
「話が変わるようですけどストレスは寿命を縮めますよ」
「うるさいッ、そのような事言われなくても分かっておるわ」
声を荒げながら文句を言う。
よし上手く引っかかってくれた。まあ、ふざけるのはのはこのくらいにしておこう。
「じゃあ、話を戻して、この人が僕の乗っている馬車を襲ったって言うのは僕自身が体験した事なので嘘な筈がないんです」
「では仮にその男がおぬしの馬車を襲ったとしよう。それでおぬしは何を求めるのかな?」
「彼はこう言いました「村の人を全員殺すのか!?」と僕は言ってないんですけどね。でも1人で死にたくないらしいんで村ごと一緒に送ってあげようかと…」
俺がそう言った瞬間、村の男達が全員武器を取り始めた。あれ?ここは冗談が上手いなハハハ、とか言って笑われるかと思っていたんだが。
前に出ていた婆さんや周りに居た女子供は走って自分の家に逃げ込む。男達は桑や鎌、ピッチフォークなど農業器具が全般で剣などの武器を持っている人間方が少ない。
「じゃあ、戦うって事で良いんですか?…っいて」
右手を腰の辺りに引き左手を顔も前に持ってきて構える。が、横から強い衝撃が来る。何かと思って横を見れば盗賊が俺に突進してきていた。
「痛いだろうが!……あ」
痛くはなかったんだがあまりにも驚き過ぎて頭を思いっきり殴ってしまい、男の頭蓋骨が砕ける音がする。
そのまま地面にうつ伏せに倒れピクリとも動かなくなった。
「あちゃー、死んじゃったか」
「貴様ッ、よくも!」
村の男達が全員俺に向かって武器を向けてくる。武器っていうか農機具か。
「オッさんが一緒に逝きたいって言ってたのに…これはみんなに早く追いついてもらわなくては」
俺は飛行の魔法を使い宙に浮く。村にある家の全てに魔法陣を展開する。
「ちゃんと詠唱してみるか。―燃え上がれ、紅蓮の柱よ…火柱!」
各魔法陣から炎が吹き上がり、柱を形成する。藁の屋根、木材で組まれた家々は一瞬にして灰となった。
「なっ!?お、俺たちの家が…」
眼下にいるの男達は腰をガックリと落として手から武器を放り出している。
これで大方村の人間はオッサンと共に天に召されただろう。
そういえば天に逝くという事はテオスと会うという事だろう。……多分。転生するのか?
もし転生するなら全員殺した意味ないな。ま、いっか。あとの連中は殺さなくても…いや、恨みを持たれたら面倒だし消しておくか。
下にいる奴らに魔法陣を展開しする。
「暗黒孔」
詠唱すると魔法陣が黒く染まり、男達は音もなく吸い込まれて消えていった。前回は球状をイメージしていたが今回は魔法陣自体が暗黒孔になるイメージをしてみた。
「おお〜、成功した」
俺は地面に降りる。家々は燃え上がり、全焼している家もある。村人は殆ど残っていない。生き残りは家に隠れずに村から出ようとしていた奴らだ。
パッと見た感じ4人家族といったところか。男がいないという事は俺が消してしまったんだろう。ま、ほっといても大丈夫だろう。
俺は馬車に戻ろうと飛行の魔法陣を展開させ、飛んで行こうとすると
「きゃあぁぁああっ」
悲鳴が聞こえた。そちらを振り向くと先程逃げようとしていた家族のところにオーガの群れが現れていた。
俺は人差し指で頬を掻きながら呟く。
「ああ〜、どうしよう?アレは助けた方がいいのか?」
だって村を壊滅させた張本人だよ?そいつに助けられたいかな〜?俺だったら絶対に嫌だけどね。
「だ、だれか…助けて!子供が、食べられてしまうッ!」
オーガが子供を1人掴んで口に運ぼうとしている。一生懸命抵抗しているが全く意味を無していない。
そんなこと言う暇あるなら自分でどうにかすればいいのに。まあ、彼女らの親父は俺が殺してしまったからな。仕方ない今回だけは助けてやろう。
そんなことを思いつつ、オーガの数を確認する。魔力を視て確認したところ4体しか居ないようだ。
これならあっさり終わらせられるだろう。
今いる場所からオーガ達がいる場所まで転移で移動する。
目の前が一瞬真っ白になり、視界が晴れた時にはオーガ達の真上にいた。
今、まさに子供が喰われそうになっている。また転移を使い子供の前に移動し、オーガの子供を掴んでいる方の腕に思いっきり拳を叩き込む。
バキバキッ、と骨が砕ける音がし、オーガの掴んでいた手から子供が落ちる。そして砕かれた腕はだらりと垂れ下がる。
子供は母親がキャッチしてすぐに後ろに下がる。
腕を押さえながらオーガは咆哮する。どうやら怒ってしまったようだ。他のオーガもキレたオーガに連鎖して俺に視線が集まる。
「これはやり易くなった。今の内に…『転移』」
後ろにいた家族を村の反対側に転移させる。
両手に魔法陣を展開させ、俺に向かってくるオーガ達に魔法を放つ。
「拡散光線」
詠唱すると両手の魔法陣から2本づつの光線が発射される。前にいた二体のオーガの腹部を貫通し、危機を感じた後ろにいた二体のオーガが横に避けようとする。だが光線の速さより早く動くことができず、体の半分が消し飛ぶ。
魔法が消えると直線状の木々が消失しており地面も半円状に削れていた。
他にいたとしても今ので巻き込まれて死んでいるだろう。一応確認するがやはりオーガの魔力核は見つからないので大丈夫だろう。
今度こそ飛行を使い馬車に戻る。帰る途中にあの家族の無事を確認する。今はオーガから助かったからいいだろうが、これからもっと大変になるだろう。
「これは俺からの選別だ」
家族に魔法陣を展開する。魔力を込めると魔法陣が回転しながら上昇する。そして魔法陣が消える。
親子は何が起きたのか分からないっといった様子だった。
俺は親子らに魔法による不可視の鎧を授けた。この鎧は彼女達自身の魔力を消費しながら半永続的に魔法の鎧を使い続ける。魔力が切れれば一時的に効果は消えるが魔力が復活すれば自動で発動する。
性能としては物理、魔法の攻撃は一切通さないようにしてはいる。通らないはず、多分…
まあ、死んだらそれまでだったって事だ。
俺は馬車の場所まで飛んで行く。
27話目の投稿です。作者の霊璽です。
もう少しで三十話に到達します。イェイ!
今回はバトル多めになっていると思います。個人的には、ですけど。
いつも読んで頂いてもらい本当に嬉しいです。
今は別の小説も書いているのでそちらの投稿が始まったらまたツイッターなどで報告したいと思います。
それではまた次回の話で………
そして新作をお楽しみに!




