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領都から村までの間 その1

 領都に帰ってきてから2日が経った。迎えが来るまであと1日だ。

 帰ってきてから特にする事がなく今は自室のベッドの上でゴロゴロしている。他の者は俺の荷造りの為に頑張っている。この部屋もだいぶ物が無くなった。

 魔法もスキルも大方使い方はわかった。最初にこの世界に飛ばされた時は何にも出来なかったが教えて理解すれば案外簡単なことだな。

 しかし暇だ。する事がない。手伝うと言っても大丈夫ですから、だと言われて何もさせて貰えない。困ったもんだ。まだ子供だからって何もさせて貰えないなんて…確かにまだ5歳だけど…


 「暇だなぁ。外に出るか」


 俺は魔法の練習をしていた裏庭に転移するための魔法陣を展開する。


 「転移」


 目の前が一瞬真っ白になり、裏庭までやってきた。やっぱり便利だな。

 ここにやって来た理由としては魔法の制度を高めたいからだ。多分俺はいまの時点でかなり高位の魔法使いだろう。しかし、それではこの世界を存分に楽しめないだろう。2度目の人生だ。今度は楽しまなくちゃな。

 他に被害が出ないように『完全障壁(パーフェクトバリア)』をドーム状に作る。これでどんなに大きな魔法を使っても地面に穴が開くこともないし、音が漏れることもない。


 「さて、どこまで行けるか試してみるか」


 俺は5メートルほど先に魔法陣を展開する。中から人の形をした人形が出て来る。動きはしないが見た目は男性だ。ここまでリアルにできたことに驚きつつ人形に近づいて触ってみる。暖かい。人に触っている感覚がある。胸を触れば心臓の鼓動が伝わって来る。魔力を見てみるが生命全てが出しているオーラが見えない。『魔力感知』で魔力核を探すが見当たらない。まあ、人形だからな。そこまでの再現はないか。どうせ、ぶっ壊すんだ。関係ないか。

 俺は元の位置に戻ると手のひらに魔法陣を展開し人形に向ける。


 「エアカッター!」


 魔法陣から勢いよく出た風のナイフが人形の頭部を切り落とす。首から大量の血が吹き出し、人形は膝から崩れ落ちた。


 「血が出て来るって事は中身もしっかり入っているのかな?」


 魔法でナイフを生み出す。うつ伏せに倒れている人形を足で蹴り仰向けにし、手に持ったナイフで腹を切り開く。中身は前世の時に本で見た通りだった。前世から興味があったので色々と解体し始める。臓器を取り出しては眺めた後にそこら辺に放り捨てる。


 「これ以上は解体しても意味なさそうだな」


 大方解体し終わった俺は人形の胸に手を当て魔法陣を展開する。傷口を治すイメージをし魔法を発動する。


 「治癒(ヒール)


 人形の傷口があっという間に塞がる。しかし辺りを見渡せば、周りに散らばっていた臓器はそのままの状態だ。

 これちゃんと臓器も修復されてるのか?そのまま残ってるんだけど…

 確認の為にもう一度腹を開く。中は何も入っておらず空洞のままだった。これでは失敗だ。魔法陣を展開し今度は臓器も修復されるイメージをする。


 「治癒(ヒール)


 先程と同じように傷口が塞がれる。しかし臓器は散らばったままだ。最終確認で腹を開くと中にはしっかりと臓器が入っていた。どうやら完全に無くなったものでも治せるらしい。

 俺は立ち上がると今度は仰向けになっている人形に向けて手をかざし、魔法陣を展開する。ゲームや小説では闇魔法や光魔法があったがこの世界では使えるのか実験しないとな。イメージが反映されるなら使えるはずだが。


 「闇黒孔(ブラックホール)


 唱えると魔法陣から直径十センチほどの大きさの漆黒の球が出てくる。ゆっくりと倒れている人形に向かって行き、胸に当たった瞬間人形が一瞬で吸い込まれ消えていった。肉片が残っているわけでもなく完全に消滅していた。


 「すごいな」


 一瞬の出来事だったので驚きのあまり呟くだけだった。


 「想像した通りになるこの世界の魔法って都合良すぎだろ。今度は別の魔法を実験してみるか」


 どういう魔法にするか考える。俺のイメージの限界が俺の魔法の限界って事なんだろう。前世の記憶というアドバンテージがあるから助かっているが、記憶がなかったらショボかったんだろうなぁ。

 そんな思いにふけつつ次の魔法の準備をする。さっきは闇魔法だったから今回は光魔法を使ってみよう。でも、光ってどういう魔法があるんだ?ひとまずビームとかか?とりあえず、やってみよう。

 俺は5メートル程先に魔法陣を出し、先程と同じ人形を生み出す。今度は自分の手を前に出し、魔法陣を展開する。


 「光線(ビーム)


 魔法陣から光の粒子が集まって一気に放出された。光線は人形を一瞬にして蒸発させて『完全障壁(パーフェクトバリア)』まで届いた。流石に貫通はされなかったが弾かれた光線が放射状に散って地面のあちこちに穴を開ける。

 魔法が終わると辺り一面荒れ果てた姿になっていた。


 「これは流石にやり過ぎたな…」


 周りを見渡すと地面が剥き出しになっている。普段は人が滅多に来るところではないが、元に戻さないともし人が来た時に大変な事になりそうだ。

 俺は前の地面を思い出し、地面に魔法陣を展開して詠唱する。


 「復元(リストア)


 魔法陣が白く光り輝き、地面が復元されていく。数秒で穴だらけの地面が元通りになった。


 「よし、これで問題ないだろ」


 俺はひとまず地面に座る。


 「しかし、あんなに強力だと対人戦で使いにくいな。跡形も残らないじゃん」


 人形が居たと思われる場所を眺めながら呟く。俺のイメージが駄目だったのか?でも、火や水魔法はしっかり常識の範囲だったんだからこれにも何か理由があると思うんだが…


 「ああ、クソッ!こういう時にテオスが都合よく出て来てくれると助かるんだが…」


 頭を掻きながらテオスが来ていないか周りを見渡す。だが、そんなに都合が良くなるはずもなく。ただただしーんとしている。

 まあ、あいつも色々あるんだろう。神様の仕事が忙しいとか。そろそろ『完全障壁(パーフェクトバリア)』を解除するか。俺はそう考えるとバリアが消滅した。

 攻撃魔法はもうやめて何か別の魔法を考えよう。


 「ううん…そうだ!空をとんでみよう出来るかはわからんが、やってみよう」


 足元に魔法陣を展開し、自分が空を飛ぶイメージをする。


 「飛行(フライ)


 魔法陣は光ったが特に何も起こらなかった。おかしいな、なぜ飛べないんだ?まあ、そういう事ならこっちにも対策はある。


 「魔法生成」


 そう言ってスキルの一つを使う。黄緑色のパネルが目の前に出て来る。作ったはいいが一度も使っていないスキルをようやく使う日が来た。

 俺は魔法生成という場所を押す。一番上には魔法の名称、その一つ下の大きな空欄に詳細を打ち込む感じだ。完全に『スキル生成』の色違いなだけだな。

 俺は一番上の魔法の名称を入れる部分に『飛行(フライ)』と打ち込む。その一つ下の所には『自分の意思で自由に空を飛ぶことができる』と打ち込む。右下にある決定を押すと画面が光り、魔法のリストに『飛行(フライ)』と追加される。


 「これで使える筈だ。『飛行(フライ)』」


 詠唱すると足元に魔法陣が展開され少しだけ浮くことが出来た。そのまま上昇するイメージをするとあっという間に街を見渡すことが出来る程の高さまで垂直に上がった。


 「おお!これは便利だ。行きたい方向に意識を向けるだけで飛んで行ける。とても楽だ。だが、もう少しだけ練習しよう」


 俺はそのまま軽く前後左右上下に空を飛ぶ練習をする。最初はフラフラしていたが、少し練習をするとかなり自由に飛べるようになった。


 「よし、空を飛ぶ練習はこのくらいでいいか。次は飛んだまま魔法が打てるか、だな」


 俺は高度を落とし裏庭に一度着地する。そしてもう一度空を飛ぶ。今度は10メートル程で止めておく。さらに右手に魔法陣を展開し地面に向けて魔法を放つ。


 「ファイアボール」


 魔法陣から火球が発射される。地面に着弾し芝生を焼く。


 「ああ、やばい。燃え広がっちまう!ウォーターボール」


 燃え広がっている火を覆い尽くす大きさの水球を魔法陣から発射する。何とかして火を消火する。


 「ふう、よかった〜。何とか間に合った」


 俺は溜息を吐きながら地面に降りる。綺麗に生えていた芝生は円形に黒焦げになっていた。これも元に戻さなくては…

 俺は黒焦げになる前の状態を思い出しつつ、焼け跡に魔法陣を展開する。


 「復元(リストア)


 詠唱し、綺麗な芝生に戻った。俺は元に戻った芝生の上に寝転がる。雲ひとつない空が目の前に広がる。心地良い風のせいなのか、なんか眠くなってきた。

 ここで寝たとして仮に誰か俺の部屋を覗いて俺が部屋にいないと怒られるんだよな。まあ、怒られるっていうか使用人総出で捜索が入るからな。


 「部屋に戻ろう」


 俺は寝転がったまま魔法陣を展開し自分の部屋のベッドを想像する。


 「転移」


 一瞬、視界が真っ白になり視界が晴れた時は自分のベッドの上に寝転がっていた。いつもただ寝てるだけだったか何か別の事をしよう。

 だが暇潰しをしようにも俺がこの家から出て行く事になってから部屋の荷物は片付けられている。魔法の練習はさっきやったばかりだし剣術は前に父さんとやって以来誰にも負けなくなった。『超越』は便利すぎたか。まあ、どうせこの後の生活は辺境の地の過酷なものになるだろうからこのまま常時発動させて置くけど。

 特に何も思いつかなかったから諦めて寝よう。そう思って目を閉じた瞬間にコンコン、とドアがノックされた。

 誰だよ。せっかく人が寝ようと思っていたのに…少し不貞腐れながら返事をする。


 「…どうぞ」


 「失礼します」


 そう言ってドアを開けて入ってきたのはリリアだ。そして俺を見るなり、


 「すいません、お休み中でしたか?」


 「いや、大丈夫だ。それよりどうした?」


 俺はベッドから起き上がりリリアの話を聞く態勢になる。リリアも側まで来るが立ったままだ。窓際にある机に収まってる椅子を『転移』でリリアの後ろに移動させる。リリアはとても驚いていたが俺は特に気にする事なく、


 「まあ、座ってくれ」


 「いえ、私は立ったままで大丈夫です」


 「いいから座れ」


 「…はい、分かりました。では失礼します」


 一瞬躊躇ったが強く言うと素直に座った。


 「それでどうしたんだ?まだ準備があるんじゃないのか?」


 「はい、その事でアクシス様に聞きたい事があります」


 「ん、何だ?」


 「これ、アクシス様の物ですか?」


 そう言ってリリアが取り出したのは俺がこっそり外に出ていた時に買った『全世界スキル大全集』だった。


 「なっ、何故それを、どこで見つけた!?」


 俺は思わずベッドから飛び降りて叫んでしまう。


 「棚を整理していたら見つけました」


 そう言って棚の方を指差す。俺は諦めてもう一度ベッドに座り直す。しかし、見つかってしまったのなら仕方がない。今は誤魔化す為の言い訳を考えなくては。

 言い訳を考えているとリリアが話しかけてきた。というよりも質問の方が正しいか。


 「これはこの家の本ではありませんね?」


 「あ、えっと、それはな…書斎で見つけた…」


 「本当ですか?」


 「ああ、本当だ」


 「では奥様に聞いてきます。奥様はこの家の本を全て記憶しているはずですから」


 リリアは椅子から立ち上がり、ドアの方へ向かう。俺は急いでベッドから飛び降りてリリアの前へ立ちはだかる。


 「ちょっと待て…それは駄目だ!」


 「何故ですか?」


 「いや、それはちょっとな…」


 くっ、これは強い。俺がああ言えばリリアがこう言って俺の言い訳を踏み潰してくる。仕方ない。本当のことを言うしかない。

 俺は顔を上げリリアの目を真っ直ぐ見る。


 「分かった…本当のことを話そう。だから、とりあえず椅子に座ってくれ」


 俺はそう言ってリリアを椅子に座らせ、自分もベッドに座る。そして俺はリリアと向き合って、話を始めた。

23話目の投稿になります。作者の霊璽です。

今回もその1という風に分けました。これも次で終わると思いますが…終わらない可能性もあります。

最近気付いたのですが前の話見返していると案外人の名前が違っていたりするんですよね。もし間違っていたりしたらああ、こいつ間違えてるよ(笑)みたいな感じで笑っていって下さい。

それではまた次回の話で……


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