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最後の時間 その3

 フルストと決闘した後は、ルナの魔法の指導をしていた。座りながら…。周りの魔術師は先ほど起きたが理解できずに呆然としている。

 ルナは魔法が消える少し前に目を開けた事と目の前が炎の赤色でいっぱいだったという事、俺が殴って気絶させた事などがあったのでそんな大事になっていたとは思っていないようで今も魔法の練習をしている。

 そうだ。確か俺がここで意識を失ったのって毒だよな。耐性付けとくか。


 「『スキル生成』」


 俺は周りには気付かれない大きさの声で言う。目の前にはピンク色のパネルを出した。そこで『超越』を選択し、スキルの内容が書いてある一番下までスクロールした。俺は文章の一番最後に『状態異常無効化』と付け足してパネルを閉じた。


 「あの、何をしていたんですか?」


 ルナは不思議そうに俺を見てくる。俺のピンク色のパネルは俺にしか見えていない。ルナは俺が空中で手を動かしてるようにしか見えていない。


 「何でもない。それより魔法は使えるようになったのか?」


 「はい、見ていて下さい。行きますよ」


 ルナはそう言って目を瞑り、手を前に出す。数十秒待つとルナの手から魔法陣が展開され、さらに数十秒待つと魔法陣から炎の球が出てきて的に向かって放たれる。もちろん目を瞑っているので当たるはずもなく的の横を通り過ぎて後ろの壁に当たって消える。


 「どうでしたか?」


 「ファイアボールか。よく出来ていると思うが、目を瞑っていたら敵に当たらないからそこを何とかすればもっと良くなるんじゃないか。」


 「でも、目を瞑らないとイメージが出来ないんです」


 「そうか、じゃあ諦めろ」


 「ええ!教えてくれないんですか!」


 「なんでそこまでしなくちゃいけないんだ。魔法の使い方は教えてやったんだ。もういいだろ」


 「まあ、そうですけど……」


 「それにお前のそれは癖だろ。お前の癖は俺には治せない。自分で頑張るんだな」


 む〜っと唸りながら俺を睨んでくるが本当に俺にはどうしようも無い。こいつの場合は癖がついたのがさっきだから意識すればすぐ治るんだろうがめをあけるほうほうが思いつかない。まあ、自分でなんとかするだろう。

 その時、唐突に訓練場のドアが勢いよく開かれた。中に入ってきたのはリリアだ。辺りを見回し俺を見つけると早足で歩いてきた。


 「アクシス様やっと見つけました。ご主人様がお呼びです。一緒に来て下さい」


 「わかった。すぐに行こう」


 「あの、ちょっと待って下さい!」


 ルナに呼ばれて俺は後ろに向き直る。ルナはいつになく真剣な面持ちだ。


 「どうしたんだ?」


 「あの、これでもうお別れなんですか?」


 ルナは寂しそうな顔をして俺に聞いてくる。


 「そうだろうな」


 「また、会えますか?」


 「無理だろ」


 ルナの質問に対して俺は思った事を率直に伝える。俺の言葉を聞いたルナは絶望したような顔をしている。


 「聞きたい事はそれだけか?」


 「え、あ、いや…まあ、そうなんですけど…」


 「それじゃあ、急いでいるんでな。行こう、リリア」


 「はい、分かりました」


 そう言って俺は父さんのところに向かう。ルナは俺との急な別れにただただ呆然としていた。

 俺はリリアに手を引っ張られて訓練場を後にした。


 「なあ、どこに向かっているんだ?」


 「先程の部屋です」


 そうか、と返して俺は歩きながら考える。さっきの部屋って事は話がついたんだろう。いつその辺境の村に飛ばされるんだろう。めんどくさいと思うがこれからの自由のためだから仕方ない。


 「着きましたよ。アクシス様」


 これからどうするか考えているといつの間にか部屋に到着していた。リリアはコンコン、とドアをノックし中からどうぞと聞こえたので中に入った。

 中に入れば先ほどと変わらない配置で父さんと母さんその向かいに王様が座っていた。俺は父さんと母さんの間に座りリリアは後ろで立っている。

 黙っているのも嫌なのでそうそうに話を切り出した。


 「話はついたんですか?」


 俺が王様に問いかけると王様は首肯しながら口を開いた。


 「ああ、君には5日後に向こうへ行ってもらう予定で勧めている」


 「分かりました」


 今日王都を出るとして領都に戻るのに2日はかかるから…大体3日の猶予があるな。


 「ケイアスにも言ってあるが呪い子(イクス)に平等権を与えるという事はかなり時間がかかるんだ。君がいつこっちに戻って来れるかわからない。それに君の姓を消さなくてはならない」


 「そうなんですか?」


 「ああ、そういう法律になっているんだ…本当に、申し訳ないと思っている」


 「分かりました。今後は姓は名乗らない様に気を付けます」


 「そうしてくれると助かる。君は必ず今の立場に戻す。これでひとまず話は終わりだ。分からないことが有ればケイアスに聞くといい」


 「分かりました」


 父さんの方を見れば微笑みながら頷く。本当に分かっているのだろうか?剣術は教わっていたが一回も勉強を教えて貰ったことがない。心配になったので母さんの方を見ると大丈夫、と耳打ちで教えてくれた。


 「どうする?もう出発するか、それとも今日は王都で泊まって明日出発するのか?」


 「今日出発しようと思ってる。そのための馬車も用意してある」


 父さんが王様の質問に返す。なんか急いでる様に見えるが気のせいだろうか?魔力が視える様にし輪郭を視える様にする。更に『魔力感知』を使い、魔力核を視える様にする。周囲は特に怪しい動きをする人はいない。気になるとすれば母さんのお腹の小さな核がこの前見た時より大きくなっているという事ぐらいか。それによく見ればなんか具合悪そう。

 早く帰ろうとしてるのはこの事か。性別は分からないが多分俺の弟か妹になるんだろう。会う事は無いが。

 俺がずっと考え込んでいると話が進んでいたのか、もう帰るらしい。これ以上ここにいると間に合わなくなるそうだ。


 「アクシス、もう行くぞ」


 父さんに言われてソファから立ち上がり王様にお辞儀をして父さんの後について行き部屋から出る。王様も部屋から出て見送ってくれるらしい。

 門までは歩いて数分かかるが歩いてる途中父さんと王様で、母さんとリリアで話していたので俺は自然に無言になってしまった。

 姓を名乗らない事は簡単だ。しかし、貴族に戻されるのはごめんだ。色々とめんどくさいからなあ…前世のラノベで読んだ限りは。


 「アクシス様、どうかしましたか?気分がすぐれないんですか?」


 「いや、大丈夫だ。早く乗ろう」


 考え事をしている間に門の前まで来ていたらしい。既に待機していた馬車に乗り込み、出発する。窓の外を見れば王様とその護衛やらがこちらを見送っている。

 結局ルナとは変な別れ方をしたが多分もう会う事は無いので暫くすれば向こうも俺を忘れるだろう。

 街の道路は舗装されているので揺れはそんなに無いが王都を出れば道なんて酷く揺れるからな、気を付けよう。

 数分で別邸に着き、昼食を済ませて部屋に戻り少し休憩する。先程父さんに聞いたらまだ少しだけ時間があるそうなのでベッドの上で寝転がる。


 「疲れたし、少し寝よ」


 独り言を呟きながら目を瞑る。数分後には寝息を立てていた。

 アクシスが寝てから10分くらい経ってからコンコン、とドアがノックされた。だが、部屋の主は寝ているので気が付かない。


 「アクシス様、大丈夫ですか?」


 そうっとドアが開かれ中に入って来たのはリリアだ。部屋の中を見回しベッドの上でアクシスが寝ているのを見つけると静かにベッドの方へ歩いていく。ベッドのすぐ側まで行くとアクシスを起こさない様にそっとベッドの上へ座る。


 「寝顔はやっぱり可愛いですね…」


 小声で呟き、アクシスの頭を撫でながらじっと観察をする。


 (アクシス様とこれでお別れですか…寂しい…私も一緒にあの村へ行ければいいのですが、イクス以外の居住が認めれて無いですからね、残念です…)


 はぁ、とため息を吐きながらひたすらアクシスを撫で続ける。

 何でだろう。ずっとリリアが俺の頭を撫でているんだが?これは起きていいのだろうか?

 俺はリリアが部屋に入って来てすぐに起きた。ただ何故か俺をジッと見ているので起きるタイミングを失ってしまったのだ。

 そしてリリアに撫でられ続けるまま体感で5分が過ぎた。意外に心地良く、いつの間にか少し寝ていた様だ。もうそろそろ起きよう。

 俺は勢いよく体を起こし、そのままリリアの方を向く。


 「何しているんだ?」


 「あ、えっと…おはようございます、アクシス様」


 俺が起きたことに驚いて動揺している。


 「おはよう、ところで何で俺の頭を撫でていたんだ?」


 「それは、ですね…アクシス様の頭を撫でたかったからです!」


 開き直ったよ…確かに会うのがこれで最後なら好きなようにさせてやるか


 「まあ、別に撫でる分には構わんが何か目的があって来たんじゃ無いのか?」


 「はっ、そうでした。そろそろ出発する頃なのでお伝えに来ました」


 俺の頭を撫でながら伝えてくる。


 「そうか」


 あれ、もうそんな時間か?ふと時計を見ると俺がこの部屋に来てから大体40分が過ぎていた。


 「じゃあ、行こうか」


 「はい、かしこまりました」


 俺はベッドから降りてリリアと一緒に部屋から出て玄関へ向かった。そこには既にこの別邸に住んでいる全員が揃っていた。


 「アクシス様、短い間でしたがあなたに会えて本当によかったです」


 そう言って執事長らしき歳をとった爺さんが俺の手を握ってくる。シワだらけだが力強く握ってきたので俺も握り返す。手を潰さない様に気をつけながら。


 「バトラー、世話になったな。アクシス、出発するぞ」


 この爺さんバトラーって名前なのか別れて際にわかった。


 「はい、皆さんもお世話になりました」


 俺は最後に執事達に一礼をして父さんの後ろに着いて行く。外に出れば馬車が待機してあったので中に乗り込み、出発した。窓から顔を出して手を振ろうと思ったが今は髪の色が白色なので出来なかった。

 それから2日間休憩をしながら領都に帰ってきた。

22話目の投稿になります。作者の霊璽です。

今月は僕が小説を書き始めてから1周年が経ちました。正確にはもう過ぎているんですが…

でも読んでくれている人が1人でもいたので続けることが出来ました。読者さんに感謝です。

これからも頑張って行きますのでよろしくお願いします。

それではまた次回の話で……

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