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最後の時間 その1

 俺は父さん達が待つ部屋に向かった。といっても2個、隣の部屋にいるからそれほど移動はしないがな。

 部屋の前に着くとドアをノックした。中から父さんが返事をしたのでドアを開けて中に入った。

 部屋には父さんと母さんが隣同士で座っており、リリアは二人が座っているソファの後ろに立っていた。

 ドアが開き、俺が部屋に入ってくると3人とも駆け寄ってきた。それぞれに心配そうな顔をしている。


 「大丈夫だったか?」


 「はい、ただ王様と話していただけです」


 「そうか。ところで何の話をしていたんだ?」


 「ああ〜、それはですね……」


 「その話は私からしよう」


 「王様!?」


 そう言ってきたのは王様だ。いつの間にか俺の後ろに立っていた。ずっとドアを開けっぱなしだったので王様が来れば父さん達は気づくはずなのだが俺のことが心配過ぎて周りが見えていなかったようだ。

 王様の後ろには誰か子供が隠れていた。魔力を視えるように視界を切り替えれば誰が後ろにいるのかすぐに分かる。

 後ろにいたのはルナだった。ここにいる人とはせ全員、顔見知りのはずなのになぜ隠れているのか疑問に思った。

 俺が後ろを凝視している事に気が付いたのか、王様が自分の後ろにいる子供を前に出した。もちろん出てきたのはルナだ。ルナはなぜか照れたように顔を少し赤くしている。


 「アクシス君。私は先程君に話した事を君の父上に話さなければならない。その間、ルナと一緒にいて貰えないだろうか?」


 「はぁ、僕は別に構いませんが…王女様の方はどうなんでしょうか?」


 「わっ、私も大丈夫です!」


 「それでは、アクシス君。私達はこの部屋にいるからルナと一緒に遊んできてくれ」


 「はい、分かりました」


 俺はそう言って部屋から出ていく。後ろにはルナがついてくる。部屋のドアを閉めると俺は溜息をついた。なんか大変な事になったな。ひとまず、ルナにどこまで知っているか聞くか。


 「おい、ルナ」


 「はいっ!なんですか!」


 返事をしたルナの声は上擦っている。一体何にそんな緊張しているんだ?この女は。


 「お前は王様からどこまで話を聞いている?」


 「え、えっと…、あなたが呪い子(イクス)であるという事だけです」


 それは王様から聞かなくても知っているだろ。一番近くで俺の姿が変わるのを一番近くで見ていたんだし、現に今も白髪だし。そんな事を思いながら話を続ける。


 「本当にその後の事は何も聞いていないんだな?」


 「はい、特に何も聞いていません」


 「そうか…とりあえず、どこかに移動するか」


 「どこか、とは?」


 「まあ、夜会の時の中庭でいいんじゃないか?」


 「そうですね。じゃあ行きましょう」


 ルナは行き先が決まるとすぐに歩き出した。俺はまだこの広い王宮のどこに何があるのかさっぱり分からないのでルナの後ろについて行く。

 中庭までの道のりで数人と廊下ですれ違ったが、やはり王様から何も聞いていないようで俺を見るたびに目を見開いて驚いている。その度に兵士を呼ばれて地下牢に連れて行かれそうになる。

 まあ、毎回ルナが止めてくれるから連れて行かれなくて済むんだが。

 そんな事をしているうちにいつもの中庭に着いた。相変わらず色々な植物が生えている。俺が近くにあったベンチに腰を下ろすとルナもその隣に座ってくる。そしてただ無言のまま時間が過ぎていく。

 そしてルナがついに口を開き俺に問いかけてきた。


 「あの、あなたはこれから一体どうなるんですか?」


 「そうだな、ひとまず村に流刑という形で俺はここから立ち去る。つまり、多分これから王都に来ることがなくなると思う」


 「そう、なんだ…」


 俺が王都には来れない事を伝えるとルナは俯きながら小さい声で言う。


 「そうだ。確か、俺が王様に連れて行かれる前に練習場でお前魔法が使えないとか言ってたが本当に使えないのか?」


 「はい、本当ですよ。私達、王族は代々剣術よりも魔法が得意だったのですが、何故か私だけ魔法の才能がないんです」


 あははは、と乾いた笑いをしながらどこか諦めたような顔をしている。こいつ以外の家族が使えるという事がどこか引っかかる。そういえば俺、ルナが魔法を使っているところ一回も見た事ないな。

 もしかして、こいつ魔法が使えないと思い込んでいる事が原因なんじゃないのか?

 テオスも魔法を使うために重要なのは想像力って言ってたし、自分が魔法を使える姿を想像できない限りできないんじゃないのか?

 疑問に思った俺はルナに確かめて見る事にした。


 「なあ、お前魔法を使う時って何か考えたりしているか?」


 「いえ、特には何も考えていません。というかお父様やお母様からは魔法を使う時は無心になって詠唱に集中しろ、と言われました」


 ルナの口からその言葉を聞いた瞬間、


 「それだ!それが原因なんだ!」


 と叫んでしまった。俺が急にデカい声を出した事にルナがびくりと体を少し震わせながらこちらに顔を向けた。


 「あの、驚くので急に大きな声を出さないでください」


 「悪い。だが、お前が魔法が使えない理由がわかったぞ」


 「ほ、本当ですか!?一体どうすればいいんですか?」


 ルナは興奮して大きい声を出す。

 余程嬉しいんだろう。ただ、俺がこれを伝えても今まで教えられてきた事と真逆だし多分信じないだろう。ひとまず、誰にも言わないように言っとくか。


 「教えてもいいが誰にも言うなよ?」


 「はい、それはもちろん約束いたします」


 「よし、じゃあ教えるが口で言うより見たほうが早いか。百聞は一見に如かずってやつだ」


 「その百聞は一見に如かずという意味はよく分かりませんがよろしくお願いします」


 俺は黙ったまま魔法陣を指先に展開した。ここで大魔法を使うのは問題があるので簡単な炎を出した。


 「無詠唱!?」


 俺が指先から出した炎を見て驚いている。俺は指先をクルクルと回している。


 「まあ、こういう風に無詠唱でも魔法が使える理由を教えてやる。一回しか言わないからちゃんと聞いておけよ」


 「はい!分かりました!」


 「魔法っていうのは、ざっくり言えばその人間の想像力が具現化したものだ」


 「え、えっと…どういう事でしょうか?」


 ルナは俺が言った事に理解が出来ていないといった様子だ。


 「まあ、混乱するのも無理はない。お前が今まで言われてきた事と逆のことを言っているんだからな」


 「今まで言われてきた事と逆のこと?」


 「よし、じゃあ俺がやったようにやってみろ」


 「そ、そんなこと急に言われても無理です!ちゃんと説明して下さい!」


 「そんな難しい事は言ってないぞ。さっき俺がやった事を思い浮かべながらやってればいい」


 俺が言うと諦めたような顔をして返事を返してくる。


 「分かりました…」


 そしてルナは人差し指を立てる。目を瞑り先程の俺を思い出しているのだろう。目を瞑ってからすぐにルナの指先から炎が出てくる。俺よりは小さいが想像だけでこれだけならば十分だろう。

 しかし肝心の本人は一生懸命目を瞑っていて自分が魔法が使えている事に気付いていない。

 仕方ない、教えてやるか。


 「ルナ、魔法使えているぞ」


 「えっ、本当ですか!」


 俺が声をかけてやると叫びながら勢い良く目を開ける。そして、自分の指先から出ている炎を見て興奮している。


 「やった…遂に私も魔法が使えるようになりました!」


 そう言った瞬間ルナの指先から炎が消え、その後に魔法陣も消える。喜びのあまり想像する事をやめてしまったために魔法が発動しなくなったのだろう。しかし、その事がわからないルナは困惑の表情を浮かべていた。


 「あ、あれ?どうして消えてしまったんですか?お願いです、もう一度でいいから使わさせてください!」


 焦ったルナは自分の指に叫んでいた。今ルナを見た人は変な目でこちらを見る事間違いなしだろう。


 「あ、あの、魔法が消えてしまいました…どうして何でしょうか?」


 ルナは困惑の表情を浮かべながらこちらを見てくる。さっきまで初めて魔法を使えて歓喜の涙を浮かべていたのに今はかなりガッカリして顔を下に向けている。

 仕方ない、原因を教えてやるか。恩を売るならデカい方が良いからな。


 「いいか、何故魔法が消えてしまったのか理由を教えてやる」


 俺がルナに声をかけても聞こえていないのか全くこっちを見ずに顔を下に向けている。こいつ、俺がわざわざ教えてやるって言っているのに無視か。


 「おい、聞く気がないということは教えなくていいんだな?」


 最後のチャンスという意味で少し声を張ってルナに話しかける。やっと聞こえたのかルナは頭を上げて、


 「お願いします!教えてください!」


 「わかった。ただし、誰にも言うなよ?それといつかこの借り絶対に返してもらうからな!」


 「はい!分かりました!」


 ルナは勢い良く返事をした。威勢はいいが俺の言っている事が理解できるかが不安だ。理解が出来なければ何回も同じ事を言わなければならない。そこが面倒だから希望とすれば一回で理解してほしい。と心の中で思いながら俺は説明を始める。


 「魔法っていうのは人間の想像力が具現化したものだ」


 「はい、それは一番最初の説明で聞きました。ですが、今までそのようなことは一度も教わりませんでしたよ」


 「だが、お前はさっき俺の言っている事を証明しているぞ」


 「え、えっと…どういう事でしょうか?」


 「お前はさっき俺が使った魔法を想像していたら魔法が使えたんだ」


 「あ、そうか!やっとあなたの言っている意味がわかりました!」


 「やっと理解したか。いいか、お前は出来ないと思い込んでいたから魔法を詠唱しても想像ができてないなかったから使えなかったんだ。これからは、詠唱よりもどんな魔法を使いたいのか具体的なイメージを頭の中で想像しろ」


 「はい!分かりました!」


 「じゃあ、もう一回さっきの魔法を使ってみろ」


 「分かりました。やってみます」


 ルナはそう言って目を瞑り、人差し指を立てる。小声でずっと私はできる、などと呟いている。

 まあ、魔法を使うには思い込みも重要だから別にやる分には構わないんだが、どうも小声でボソボソ言っているのがうるさくてしょうがない。

 数分経つとルナの指先から炎が出てきる。遅いが、魔法をさっき使える様になったんだから上出来な方か。


 「おい、ルナ、目を開けろ。せっかく使えているのに目を瞑っていたら意味ないぞ」


 「で、でも、目を開けると魔法が消えてしまいそうで…」


 「だから、そう言う事を考えるなって」


 「あ、そうか。消えない、消えない、消えない…」


 ルナはそう言いながら目を開ける。今度は炎は消えずに指先に展開された魔法陣の上で燃えている。


 「やった…消えませんでしたよ!」


 ルナはこちらを向きながら嬉しそうに微笑む。不覚にも可愛いと思ってしまい、顔を背ける。


 「どうして顔を背けるんですか?ちゃんと見てくだい」


 「ああ、見た見た。よく出来たな」


 俺が褒めると一層嬉しそうに微笑む。前世からの記憶と性格が無ければ多分ルナに惚れていただろう。だが、前世で女の闇を知った俺に恋などは全くの無縁だ。

 そんな事を考えながらルナと話し合っていると廊下の奥から誰か歩いて来るのが見える。

 よく見るとルナの兄であるこの国の王子がやってきた。今気付いたが俺、王子の名前知らないな。どっかで言っていたのかもしれないが、全く興味がなかったから覚えていないな。


 「あ、お兄様!」


 ルナは自分の兄を見つけると一目散に向かって行く。王子の方もルナを見つけると歩くスピードが少し速くなった。


 「お兄様聞いてください!私、魔法が使えるようになったんですよ!」


 「そ、それは本当か!?」


 「はい!見ていて下さい」


 ルナは目を瞑り小声で詠唱を始める。30秒ほど経つとルナの指先から炎が出てきた。王子は目を見開いて驚く。


 「すごいじゃないか!ルナ。いつの間にできるようになったんだ?」


 「えっと、それはですね…」


 ルナは俺が出した誰にも言うな、という条件があるから下手なことは言えないようだ。仕方ないここは俺から説明してやるか。


 「俺が教えたからです。王子様」


 「イクス…?誰だ、貴様は。何故イクスがこんな所にいる?」


 「お初にお目にかかります。俺はアクシス・フォン・ガーディナと言います。以後お見知り置きを」


 一応ちゃんとした挨拶と礼をした。だが、顔を見る限り信じた様子は全くない。


 「イクスが、貴族…だと?ふざけた事を言うなよ劣等種が!」


 逆に怒らせてしまったようだ。しかしどうせ俺はそのうちここからいなくなる。誰を怒らせようと知った事ではない。


 「それに貴様、先程ルナに魔法を教えただと?」


 「それは本当です、お兄様!」


 今度はルナが王子に訴える。ルナには強く出れないようで少し押し黙った。


 「…いいだろう、その話が本当だと証明して見せろ!そうだな…私と決闘しろ!」


 「え、いや…あの急に言われいても…」


 「いいですね。アクシス様とお兄様の決闘、面白そうです」


 「それでは、今から訓練場に向かうとしよう!」


 「はい!」


 2人は肩を並べて先に廊下を歩いて訓練場に向かって行く。

 オイオイオイオイ、なに勝手に話進めちゃってくれてんの?やりたくないんだけど。あと少し歩くたびに後ろを振り向いて早く来いって手を振るのやめてくれないかな。

 仕方ない、と嘆息をし諦めて俺はルナたちに追いつくために早歩きで向かう。

20話目の投稿になります。作者の霊璽です。

今回はお気づきの通りサブタイトルにその1とついています。何個続くかは分かりませんがまあ、次回も楽しみにして下さい。

あともう一つ、投稿遅くなってしまい、すいませんでしたッ。ちょっと書くのが楽しくて文章が長くなってしまいました。

とりあえず、今回はここまでです。

それではまた次回の話で………

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