特に何もなかった。
扉を静かに開け、中に入ったが特に騒がれなかった。なぜならみんな知り合いの貴族や王様と話しているからだ。まあ、騒がれないにこしたことは無い。ルナの方を見ればしっかりとした顔つきになっている。別に夜会が嫌ってわけじゃなさそうだな。とりあえず、扉の前で突っ立ってるのもあれなので父さん達のいる場所を目指して歩き始める。ルナも後ろからついてきて横に並んで歩く。
「どこへ行くのですか?」
「父さん達のところ」
「そうですか…そこって、もしかしてお父様もいますか?」
「知らね。まあ、でも、もしかしたら居るかもな。なんか知り合いっぽかったし」
そう言うとルナは歩くのをやめ、そこで立ち止まった。何してんだ?と思ったが別に特に理由を知りたいわけでもなかったので俺は父さん達のところへ歩いて行く。
「ちょっと待って」
ルナは走って俺に追いつき隣に並んで歩き始めた。
「何だ、来るのやめたんじゃないのか」
そう聞いてみたがずっと黙ったままだ。そのまま歩いていくとたまにこちら見てくる貴族がいる。そいつは俺とルナを見るなりとても驚いた顔をしている。そして他の貴族にも気づかれ始めてきた。まずいな、ちょっと騒がれ始めてきたな。くそ、走るか。そう思ってルナの方を見ると当の本人はまだ下を向いていて気づいていないようだ。とりあえず、これ以上騒がれると面倒なので、ルナの手を握り走り出した。
「え?えっ、ちょっとをしてるのですか!」
急に手を握った事か、走り出した事のどっちかに驚いているようだ。もう少しで父さん達のところに着くんだ。少しだけ耐えてもらおう。
「説明は後だ」
「ちょっと、待って…はぁはぁ、走るのが、速い、です…」
ルナの手を引っ張りながら人と人の間をすり抜けてかなりの速さで走っているので普通の5歳児なら疲れるのは当たり前だろう。俺とコイツじゃあかなりの身体能力差があるから仕方ない。
「後もう少しで着くから頑張れ〜」
適当に応援をしながら俺は走り続ける。そして一旦近くにあった柱に隠れる。結構な速さで人と人の間をすり抜けていたので騒いでいた貴族は見失ったようだ。さてと、父さん達はどこだ?そう思い、魔力流れを見る。父さんの魔力のオーラを見つけた。さっきよりはかなり近くなったが、問題は王様が近くにいるという事だ。このままルナと一緒に行けば、色々と面倒なことになるだろう。頭を悩ませていると隣から声を掛けられている事に気付いた。
「…ぇ、……ねぇ、ちょっと、聞いていますか?」
「ああ、すまない。聞いていなかった」
「もう、これからどうするのですかって聞いているのですよ!そもそも何で急に走ったりしたのですか?せめて何か言ってから走ってください!急に手を握られてびっくりしたじゃないですか!」
「ああ〜もう、うるさいな!いっぺんに質問すんな!聞きたいことがあるなら一つだけに絞って聞け!」
「何ですかっ、その言い方は!私はこの国の王女なんですよ!」
「王女がどうとか知った事じゃねぇよ!つうか、そんなデカイ声で王女とか言うな!こんなところでで騒いでいると人が来るだろ。一回外出るぞ」
俺はそう言ってルナの手を掴んで引っ張って扉に向かって歩いて行く。
「ちょ、ちょっと、手を離して!ちゃんと休憩したので歩けますから!」
ルナが掴まれた手を一生懸命に振って俺の手から振り解こうとしている。だが、結構しっかり掴んでいるのでルナの力で引き剥がすことはできない。そのまま扉を開け、廊下に出る。そして俺は、掴んでいた手をパッと離し、ルナの手を解放する。
「ほら、離してやったぞ。で、さっきはなんて言ってたんだ?」
「えっと…私、何を聞きたかったんでしたっけ?」
「いや、知らねぇよ。俺に聞くな。ったく何のために外に出たんだよ…」
「すいません…」
はぁ、と溜息を吐く俺を見てルナは本当に申し訳なさそうな声で言う。
「まあ、もういいや。じゃあ、中に戻るぞ」
俺は扉の方に向き直る。ルナの意見はもう聞かないでおこう。それよりも早く戻らないとな。父さんはともかくリリアが心配するだろうからな。俺は、扉に手をかけ、押し開ける。すると、目の前に人が立っていた。俺のよく知る人だ。その人は、黒い瞳に黒髪でポニーテールで頭の後ろに束ねておりとても美しい。そう、ご存知リリアだ。
「ア、アクシス様、やっと見つけました!」
リリアはそう言いながら俺に飛びついて抱きしめてくる。それは、かなり強く抱きしめてくるのでかなり苦しい。そして何より、柔らかくて大きい胸で口と鼻を塞がれ息ができない。
「ちょ、ちょっと…リリア、苦しい…」
そう言うとリリアはすぐに開放してくれた。
「こ、これはアクシス様、申し訳ありません…」
リリアはそう言いながら頭を下げる。俺は大丈夫だ、と言いながら手を横に振る。そうすると、リリアは頭を上げた。
「で、何で扉の前になんか立っていたんだ?」
「それは、アクシス様を探していたからです」
「俺を探していた?何のために?」
「ご主人様の命令ですから。アクシス様に着いて行けと言っておりました」
そういえば、そうだったな。ルナとの言い争いで忘れてた。と一人でうんうんと頷いているとリリアが俺の後ろにいた人物に気がついた。
「ところでアクシス様、後ろにおられるのはルナ様ですよね?」
「ああ、そうだ。さっき知り合った」
「さすが、アクシス様です。もう王女様とお知り合いになっているとは」
リリアは驚いていたが、それ以上に俺を褒めてきた。
うん、いや、まあ、結構前から知っていたけどね。でも、そんなに褒められることではないよな?そんな事を考えていると隣でリリアとルナが挨拶をしていることに気が付いた。
「お初にお目にかかります、ルナ王女様。ガーディナ家に仕えており、今はアクシス様のお世話係のリリア・セルーヴォです」
「初めまして、レギンス王国、第一王女のルナ・フューリア・レギンスです」
俺の隣で挨拶を交わす二人を眺めている。こうして見るとルナがいかに猫を被っているのかよく分かる。さっきの俺の態度とは大違いだな。二人が話しているのを見ているとリリアが俺に気がついた。
「アクシス様、混ざりたいのですか?」
「いや、そんなわけ無いだろ。何でそんなもんに混ざらなくちゃいけないんだ?まあ、2人はそこで話してればいい。俺は、そろそろ中に戻らさせてもらう」
「あ、アクシス様ちょっとお待ち下さい。私も着いて行きます」
「でしたら、私も着いて行きます」
なぜ、人はだれかにつられて行動することが多いのだろうか?全く、喋っていたいなら喋っていればいいのに。
「別に、わざわざ着いてこなくてもいいぞ。2人で話していればいい」
「いえ、私たちもそろそろ戻りましょうと話し合っていたので」
「ふーん、そうか。それなら早く行こう」
俺はそう言って扉を開け、中に戻る。2人も後ろから着いてきている。俺はまた魔力を見えるようにし、父さんの魔力のオーラを見つけ、さらに『魔力感知』のスキルを使って父さんの魔力核を探し居場所を確認しそこに向かって歩き始める。誰かと話しているらしくそっちも確認してみると王様だった。どうやらまだ話しているらしい。
「よかったな、ルナ。どうやら王様も一緒らしいぞ」
「アクシス様、ルナではありません。ちゃんと『様』をつけてください」
「い、いえ。別に気にしていないので構いませんが…」
「だ、そうだが?」
「ルナ様、心遣い感謝いたします。ですがそれではダメです。アクシス様にはちゃんとしてもらわなければなりませんから、ちゃんと様をつけてください」
「わかったよ。今度からは気をつけるよ」
そう答えたが、実際直すつもりはない。何故なら多分もう会わないからだ。ていうか、メンドくさいのでもう会いたくない。もし今回みたいに夜会に誘われても行かなければいいだけだし。そう思いながら、歩いていた。
そのあと父さん達と合流した。ルナと一緒に歩いてきたときは父さんも母さんも驚いていた。近くに王様もいたのでここでまた父さんと王様の話が盛り上がってメンドくさかったし、色々と聞かれてすごい疲れた。ルナもぐったりしていた。
それからは、テーブルの上にある料理を食べたりしながら、父さん達とずっと一緒にいた。
数時間後
「ふわぁ〜あ…」
流石にずっと立っていると疲れてくるし、眠くなる。俺は大きなあくびをしながらそう思う。瞼も少しづつ、だが確実に重くなってきており、夢の世界へ誘おうとする。
ルナを見てみると器用なことに立ったまま目を閉じて半分寝ている感じだった。それに気がついた王様がルナを部屋へ連れていくようにメイドに命じてルナはメイドに抱き抱えられて連れて行かれていった。
「アクシス、あなたもさっきからずっと眠たそうにしているけど大丈夫?」
俺が眠いことを感じ取ったのか母さんが聞いてくる。
「はい…大丈夫です…」
と、返してはいるがもう寝てしまいそうだ。そろそろ限界だというところで父さんが王様に何か言っていた。
「王様、私達はこの辺で家に帰ります。アクシスも眠いようなので」
帰りますという父さんの声だけ聞こえた。これより後は立ったままだが完全に寝ていたので聞いていなかった。
「そうか、それなら仕方がないな。ケイアス、明日また会って一緒に話さないか?息子を連れてきてもいいぞ」
「それでは、また明日ここに来ます。それでは、失礼します、王様」
そう言ってケイアスは、寝ているアクシスを抱き抱えて王都にある家に帰って行った。
お久しぶりです。16話目の投稿になります。作者の霊璽です。今回も投稿が遅くなってすいませんでした。
今回は特に事件もなくただルナとアクシスが一緒にいるという話でしたね。楽しんでもらえたら嬉しいです。次回は何か起きるかも…
それでは、また次回の話で………




