彼氏先輩は初心
サッカー部の主将にしてエース。
『爽やか王子』と呼ばれ雑誌やテレビの取材を何度か受けた事もある。
容姿は言わずもがな爽やかな美青年であり、ファンも多く存在する。
しかし、彼には一切の女性経験がなかった。
それは一重にサッカーに重きを置いていたからではあるが、実はもう一つの理由もある。
__________夜桜雅の存在だ。
容姿端麗、性格も良し、料理も出来、気遣いも人一倍に上手。そんな完璧とも呼べる大和撫子に彼は惚れているのだ。
「雅さん.........なんで」
突然と別れを告げられた。電話で一言。
(幾度とアプローチを繰り返し、やっとお付き合いをさせて貰ったのに......)
彼女に相応しい男で在るべく部活、勉学、エスコートと努力を重ねて来た。
「お試し期間......... 」
彼女はいつもそう口にしていた。だけども、僕は思い出さない様に頭の隅に置いていたんだ。
「僕は.......」
惚れた切っ掛けはある。一年前、全国大会で結果を出せなかった不甲斐なさに一人涙した。一人雨の中、公園のベンチでただ下を俯いていた時に彼女は現れたんだ。
「_______風邪引くよ?」
傘を一本、渡される。
「そんなウジウジしたって過去は変えられないだからさ、前を向こうよ!って知らない人に言われてもウザいだけか、はは」
彼女はそう言うとその場から去って行った。けれどもその言葉にどれだけ助けられた事か。
「........あの人は」
同じ学校に通っていると知った時は心から喜びを感じた。あの時のお礼を言いたいとずっと思っていたのだから。
「________こんにちは」
緊張しながらも声を掛ける。彼女は振り返ると美しい笑顔を見せた。
「______________立ち直れたんだね。」
あぁ多分、この瞬間に僕は恋に落ちたんだ。彼女が僕の事を覚えていてくれた。
彼女とは少しづつではあるけれど、一言二言話す仲になれたと思う。そこに至るまでが大変だったけどね。
「今度、サッカーの試合を見に来てくれないか?」
「サッカーですか........私、あんまり興味ないんですよね〜」
彼女はかなりバッサリとした性格だった。
「う、そうか.......」
女性経験がない僕にこれ以上の誘いは出来ない。
「もぅ、そんな悲しそうな顔をしないでよ、先輩。仕方がないから見に行ってあげます。だけど、もし負けたら......アイスを奢って貰いますからね!」
彼女の笑顔は眩しい。
「意外と良心的なんだね、はは」
彼女の隣にいられたらどんなに幸せな事なんだろうと僕は感じた。




