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「死んでたまるか」

53話目です。どうも台詞に時間がかかるなぁ…

 「タイム、リミットだと…ッ!」


 クソッ、考えたく無いが今のでクエストが進行したか!


 「残り時間は2日と少し…チッ、クソ時間がねェ!おい、お前はどうする?!」


 「取り敢えずクーアさんたちを探します。彼女たちは絶対に何か知ってる」

 「分かった。じゃあ俺は知り合いのプレイヤーに声掛けてくる。情報漏洩を考えるとあまり数は揃えられんだろうが…やるしかあるまい。おらんよかマシだ」


 それはそうだ。あまり多くの人間を集めようものなら確実に目立つ。そうすれば、奴等に気付かれてしまうだろう。



 …ノコノコやってきた虫ケラ共が、隠し続けていた事実に勘付いたという事に。そも、大勢のプレイヤーが一か所に集まって何やら話しているだけで住民の不安を煽る。やるなら少数精鋭による速攻。

 …チャンスは、一度きり。それを逃せば、全てが終わる。


 「よしもう時間が無ェ、早速動くぞ。そっちも健闘を祈る。ノエル、シエル、行くぞ」

 「「ギャァゥ!」」


 そう言うなり、彼らは店の扉を蹴破る勢いで飛び出していく。こうなった以上、もはや一刻の猶予もない。僕もレギーナに頼んで、情報収集がてら彼女の眷属たちにクーアさんたちを探してもらうべく店を後にしようとして…


 「あ…」


 レックスさんが文字通り蹴破った(大穴)の向こうにいたクーアさんと目が合ったのだった。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 


 「…」『…』


 潮騒亭の一角にて対峙する彼ら。さながら昏い深海を幻視する程の重苦しい空気の中で、軽い溜息の後にベディが口火を切った。


 「…単刀直入に聞きます。表の『白骨の矢(アレ)』、アレは何ですか」


 言い逃れなぞさせるものか、という彼のプレッシャーと共に叩きつけられた問い。いつもは温和な彼の豹変と表現できるほどの凄まじい気迫と大砲のような眼光に一瞬ビクリと体を震わせた後、観念したようにクーアは言葉を零し始めた。


 「そう、だよね…もう、隠し事は出来ないよね…」「町の皆さんに聞いても何も答えてくれなかった。それはいい。だが僕達(プレイヤー)は既に知っているんです。何か恐ろしいことが起きつつあることには既に気づいているんですよ。そしてその起点(はじまり)はあの『矢』だ。…話して、頂けますね?」


 …沈黙。そして。


 「………昔からね、この島にはある儀式が行われてるの」


 


 …この島はね?昔から物凄く強いモンスターの通り道にあったみたいで、ずうっ…とそういうモンスター達に襲われてたの。でも、ある時この島にいる神様が私達の前に現れてこう言ったの。


 『我に『供物』を捧げよ…さすれば我が眷属として貴様らを庇護しよう』


 それからずっと、私たちは神様に『供物』を…ううん、分かってる。はっきり言えって事だよね、うん。…『生贄』を捧げてきたの。全ては私たちが生きるために。店の前のアレは、お兄さんの想像通り次の『生贄』を選ぶための『選定の矢』。アレは時期になると年頃の女の子のいる家に落ちてくるんだ。…娘を生贄に出すように、って、神様のお告げとして。つまり、今度の生贄は…私。






 「話すべき事はこれで全部。…お兄さんの考えてる事もわかるよ…『なんて理不尽な』って顔してるから。…でも、これしかないんだ。私たちが生きていくにはこうするしか無かったし、これからもこうするしか無いの。それに、どうせいつか人は死ぬし、何もしなければモンスターに襲われて死ぬ。なら、私は島の皆の為に命を使いたい…だから、そんな顔しないで。偶々私の番が来たってだけだから」「…」


 正直な所、何も言い返せなかった。…言い返せる筈が無かった。覚悟を決めた彼女の表情を見て、『お前の覚悟など無意味に過ぎない』などと。…だが、それでも。それでも僕はその覚悟を打ち砕かねばならない。真実(むねん)を託された者として。そして今この瞬間、押し潰されそうな恐怖に手を震わせる少女の為にも。


 「…本当に」「…え?」


 「クーアさんは本当にそれで良いんですか」「良いんですかって…話を聞いてたの?私が生贄にならなきゃ、この島は「僕なら」…ッ!」


 「…僕なら、どうせ死ぬなら死ぬ気で足掻きます」


 「…え?」


 「だってそうでしょう。やりたい事に対して人生が短過ぎるっていうのに。だから僕は『こんな所で終わって堪るか』って死ぬ気で足掻きます。…貴女は、どうなんですか」


 射貫くような視線が二人の間で交錯する。火花が散っていると錯覚するほどの視線の鍔迫り合いを終わらせたのは…クーアの方だった。


 「ふざけないで下さいよ…皆がみんな、異邦人の皆さんみたいに…お兄さんみたいに強く無いんですよ⁈力が無い私達が生きていくには、もうこうするしか無い!」「それでも」


 「僕は、クーアさんにはなるべく生きていて欲しい。クーアさんだけじゃない。皆を、死なせたくない。僕の我儘(エゴ)でしかないけど、それでも僅かでも可能性があるなら…暗い所で黙って死ぬより、か細くても僅かな(ひかり)に賭けたい。…その上で、もう一度聞きます。『貴女は、どうしたいですか?』」


 クーアさんの動きが止まる。その後、椅子から浮き上がっていた腰が落ち、そのまま彼女は椅子に崩れ落ちた。

 …頬を伝い落ちる一筋の涙と共に。


 「わ、たし、は…………………」






 「…死にたくない」


 「島から出て色んな場所に行ってみたい」「自分の足で大きな町に行ってみたい」「島の外の人と友達になりたい」「本で読んだきれいな服を着てみたい」



 「死にたくないよ…まだ…わたし…生きていたい」


 彼女の口から『未練』がぽろぽろと零れ落ちる。…そして、濡れた瞳で僕を見た。


 「お兄さん…私を、私達を、たすけて…」


 ((開始条件がすべて満たされました。

  メインイベントクエスト『EX:序曲(プレリュード)-気炎万丈』を開始します!))


 …ならば。ならば、成すべき事は一つ。


 「…もちろん」






 ====================

  メインイベントクエスト:「EX:序曲(オーバーチュア)-気炎万丈」

   タスク

    時間経過:残り時間…36h:41m:19s

    解決した異変:3/4

   報酬

    経験値:2310

    イベントボスの情報

    ???

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