4日目 急転直下
52話目です…また間が…ちくせう…
「そういえば、この島には『護り神』がいるって言ってましたよね」
時刻は午後11時。酒パワーも相まって混沌が極まったバカ騒ぎもやっとこさ終幕が見え始めていたころ。
酒瓶片手にフラフラと次なるお宝を求めて旅立つ夢追い人たちをキッチンから見守っていた留守番のベディは、ふとカウンター越しに風呂に入りに出かけた女性陣に置いて行かれ、一人寂しく盃を呷るコーエンに向けて問いを投げかけた。
「んあぁ?あぁ…そういやお前さんは異邦人だったか。なら知る筈も無いか…なに、この島には『ある伝承』が伝わっててな…」
曰く、この島には古くから神が棲んでいる。
曰く、護り神はこの島に近づく脅威から人知れず島を護り続けている。
曰く、神が怒った時がこの島の最期である。
「ふぅん…ありきたりですね」「身もフタもねぇ事言うない。伝承こそちゃっちいが中身は凄いんだぞ」
…?それはどういうことでしょうか。
「フフン、実はな…」
むぅぅ…何ですかその曰くありげな顔は。ニヤついたコーエン氏の表情にちょっとイラッとしつつ、さながら大人に寝物語の続きをせがむ子供の様に話を促した、その時だった。
グオォォォォォォォォォォ…ン…!
…鐘?何だってこんな時間に。安眠妨害で訴えられても知らんよ?
「何だと…ッ!おい待て待て待て待てッ、まだその時期じゃねェだろうが…!」
呑気な感想を頭の中で垂れ流す僕とは対照的に、コーエンさんの顔からは先程までの余裕が吹き飛んでいた。
「あの、一体何が?」
だが、彼が僕の質問に答えることは出来なかった。何故なら、
ヒュウウゥ…ッ…!
ズガッ!!
それは『突き刺さる音』。
まるで矢が空を裂いて飛んで来るかのような音と共にやってきた音は、丁度潮騒亭の外から聞こえ、そして消えた。
「え、あの…」「…ま、さか…」
ヨロヨロと顔面蒼白のコーエンさんが店の外へと歩き出すのを、慌てて追った僕が見たのは…
潮騒亭の看板のど真ん中に突き刺さった、全てが真っ白なナニカで構成された2m程の巨大な矢だった。
翌朝。
(結局なんだったんだろう…)
あの後、表情が紙よりも真っ白になったコーエンさんにほぼ無理やり今日は店仕舞いを言い渡され、今日のバイト代を支払われて「…少し一人にしてくれ」と言われてしまった。
朝になってみると潮騒亭のみんなは誰もいなくなっており、近所の方々も何があったか聞いても皆一様に口を噤んでしまった。
(原因があるとするなら…)
聞き込みから戻ってきて、僕はソレと対峙する。
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??? レア度:エキゾチック
全てが謎に包まれた矢。禍々しい気配を感じる…!
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…怪しい。この真っ白い矢が落ちてきてから皆様子が変だ。まるで『何か不吉なものを見ているかのような』振る舞いを…
そこまで考え込んでいると、どうも気の抜けた声とともに、『3つ』の気配がこちらに近づいてきた。
「キュウ、キャァウ!」「ガウ、ギュ~?」「ハイハイ分かった分かった暴れんなっつうに…あっれぇ?確かまだ営業中じゃなかったっけか…ってなんだこのバカでかい矢は。トチ狂って弩砲なんぞ町中に打ち込んだアホでもいたのか」
声に吸い寄せられるように振り返る。
「ん?ああ、済まねぇな。悪いけど質問良いか?『潮騒亭』ってとこで割のいいバイト出たって報告あったから来たんだが。お宅プレイヤーだろ?」
話しかけてきたのは男性の声。ミニマップの反応からするとプレイヤーらしいが、二枚の長い極彩色の羽根が突き出した頭と…
「キュウウ~?」「グルルル…」
彼の肩に頭を乗せてこちらを見る二つのドラゴンの頭が目を引くプレイヤーがそこにいた。
「ふぇ~え、ごちそうさん。いや、悪いな。俺、最近装備に金溶かしちまってさ。金策がてら港の方で魚釣ってヒャッハー!してたもんで…こっちがどうなってるかまでは知らんかったんだ。…あ、そういや自己紹介したっけ?俺、Rex。で、こいつらが俺のテイムモンスターの『シエル』と『ノエル』。ほれお前ら、おにーさんにご挨拶しろー」「キャァウ!」「ガウ…ギュウ」
僕の前に現れたレックスと名乗る二匹の小さなドラゴンを連れた男性プレイヤー。確か、掲示板でやたらと話題に上がる有名プレイヤーだった筈。あだ名は…「ドラキャノン」。
「…シュウ」「ギィ」「ああ、これはどうも…可愛らしい子たちですね」「だろぉ⁈現実じゃペット飼ったことなかったからなァ~。可愛くて仕方ねェのよ」「…同意せざるを得ない…ッ!」
あ~、そう言えばそんな記事あった。『アレルギーがある人でも動物と戯れる!』的な。…でも確かあれって現実でも触ろうとしてアレルギー反応出て大騒ぎになったって話だったような気が…
「しっかし、休業中とはね…表の『アレ』絡みか?」「ええ、恐らく…色々聞いてみたんですが、皆アレが何なのかも話してくれないんです。まるで僕に触れられたくないみたいに」「フーム…親切だった連中が一気に排他的になるほどの事…こういう時は大体カルトか『そういう風習』だけどな…どの道ロクなモンじゃねぇだろ。町の書庫は調べたか?それか、ここに古くからある石碑的ななんかでもいい。地域の風習ならそういう古くから残ってるものに記録がよく残ってる」「石碑…あ!」
そういう事か…ッ!あの石碑はこの事を示して…!
「…なんか心当たりあるみてーだな」「はい!これを見てください」
表示したのは、昨日の深夜にナオミさんと調査をした石碑に刻まれた未来への懺悔のスクリーンショット。
《私達が未来永劫残すべき過ち》
《命惜しさに命を捧げた》
《それが自分達の未来を約束する行為だという甘言を信じて》
《そんなもの》
《ただのまやかしの希望でしか無かったのに》
《ここは決して楽園ではない》
《ここは牧場》
《ヤツの餌場》
《ここを訪れし者よ》
《どうか私達の愚行を知って欲しい》
《どうか私達の無念を知って欲しい》
《そして願わくば》
《ヤツを討って欲しい》
《死にゆく人々の無念に》
《終わりなき慚愧の輪廻に》
《永遠なる眠りを》
「「………」」
顔を見合わせる。もう一度スクショを見る。顔を上げる。
………………………。
「大当たりじゃねぇか畜生ッ!!!」
完っ全にその通りとしか言い様がない。きっと、あの矢は『当選通知』。どこかから、誰かから送られてきた、血塗られた招待状。
「マズイぞ、もしコイツに書かれてる事がすべて真実なら……ッ!ちょっと待て『アレ』ってそういう事かよックソッタレ!」「何かあったんですか」
「ああ。実は俺、ちょいと引退した漁師の爺さんに弟子入りしてな。爺さんが『ドラゴンを連れているドラゴニュートとは珍しい。いつぞや出会った海竜から教わったスキルをくれてやろう』っつうからな…」
そう語る彼の表情は若干渋めだ。だがその表情もすぐに消え去る。
「んな事どうでもいいッ!そんで、何だかんだあって海に潜る事になったんだが…そこで見たのがコイツだ」
そう言って今度はレックスがスクショを提示する。そこに映っていたのは、かなり透明度の高い海と切り立った断崖のような海底渓谷だ。
「…なにも見えないんですが」「通常なら、な。ここで俺のブラッドスキル《超視覚》を使うとこうなる」
そこに映し出されたモノ。さっきとは打って変わって、まるでサーモグラフィーを通して見たかのような映像が投影され、そして、
僕は、そこに『ヤツ』を見た。
「こ、れは…ッ!」「…そういう事だろ?これ。全部辻褄合うぞこれ」
この時僕はあの石碑のあった集落の様子を思い出していた。…あの、地面に固定されているもの以外は全て土台を残してなくなってしまった、あの村の跡地を。
「最ッ悪だ…」
ワールドアナウンスが流れたのはそんな時である。
⦅メインイベントクエストが進行しました⦆
⦅緊急連絡:全てのイベントクエストにタイムリミットが設定されました⦆
⦅メインイベントクエスト失敗までの残り時間は2日と13時間19分です⦆
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