(ある意味)修羅場
51話目です…ものすごく間が空いてしまった…申し訳無いです…
ふぃぃ…やっとこ全員行ったか…全く、働き蜂の皆のキャラが一々濃すぎる…
「一応、皆いい子なのよ?」
そりゃ、分かってるさ。こちらに対する敵意0だし。でもねぇ…
「隙あらば服の中に潜り込もうとして来たり、どう足掻いても変態の子が居ると流石に疲れる…」「ごめん。それに関してはわたしも済まないと思ってる。後できっちりコッテリ調教しておくから」
そう…それなら結構…ヨロシク頼むよ。
「それじゃ、そろそろレイを叩き起こさないと…あれ、どうやったら起きるんだろ」「簡単よ。打ち込んだ毒と反対の効果の毒を打ち込めば良いんだから。えい》ブスリ。
(そんなプラスマイナス理論みたいに…いくんだ…そっかー…)
元の姿に戻ったレギーナが毒針をスライム状態のレイに深々と突き立てると、数秒で水銀塊がとぐろを巻いた蛇へと姿を変える。
「…シュウ」「おはよ。ゆっくり寝れた?」「シュィィ…」
ちょっとバツが悪そう。やっぱり寝坊したのが恥ずかしいのだろうか。最も、犯人は僕のすぐ横で素知らぬ顔でホバリングしてるんだけど。
「さ、もう朝ご飯の時間。早く降りよう!」「シュウ!」《うん!》
「あ〜…んむ」「「ムシャムシャムグムグ…ゴックン」」
やっぱり、朝は白米だよね。…あれ?なんで西洋世界観なのに米があるんだろ…?よし、考えないようにしよう。ハゲる。ちなみに付け合せはワカメのスープと茹で卵の味噌漬けだった。渋いな。
カァー…ン!カァー…ン!
んん?何かいきなり鐘が鳴り出したな。何だろう?
「え?!嘘でしょ?!おかーさーん!お父さん帰ってきたよー!」
え?!どういうこと?!この鐘がクーアさんのお父さんの帰ってくる合図って事?!何処まで食材仕入れに行ったんだ?!
〜数分後、港にて〜
「んん〜…」
み、視えない…水平線の上にギリッギリ点みたいな何かが視えるけど…多分あれにクーアさんのお父さん達が乗ってるんだろう。にしてもこれ、絶対仕入れじゃ無くて漁に行ってたんだよね…と言うか、あの距離の船を視認して鐘を鳴らしたのか。鳴らした人視力良すぎでは?
《スキル《遠視》を習得しました。サブスキルスロットに配置します》
マジですか。スキル手に入る位目凝らしてたのか。効果は…後にしよ。
「う〜わ…どうしよ…」「ん?クーアさん、どうかしましたか?」「いやね…」
〜更に数分後、潮騒亭にて〜
「…人手かぁ…」「そうなんだよねぇ…いつもウチのが漁に行った連中纏めて連れて来るんだけど、大体人手が足らなくなるから追加でアルバイトを雇うんだよね。でも今日は皆あんた達異邦人連中にかかりっきりで…」
ああ…でしょうね。いつもこの店、クーアさんとクリスさんの二人で切り盛りしてるみたいだし…
「どうしたもんかねぇ…あ、そうだ!」「ん?何か思いついたんですか?」
僕が何かを思いついた風のクリスさんに尋ねると、トンデモナイ答えが返ってきた。
「あんただよ!あんた、見た感じ《料理》スキル持ってるだろう?」「な?!」「お母さん?!」
イキナリ何言い出すんだこの人?!と言うか、なんでその事を?もしかして…
「ああ、そうさ。これでも元冒険者だからね。《鑑定》位当然持ってるさ」
カラカラと、彼女はさも可笑しそうに笑う。
「なぁ…ホントにどうだい?助けると思ってちょいと手伝ってくれやしないか。勿論給金はしっかり出すし」
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イベントクエスト:「EX.晴朗なれども波高し」が発生しました。
クエストを受託しますか? yes/no (noを選んだ場合このクエストは消滅します)
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……はぁ。ここでnoを選べないお人好しさ加減よ…
「全くもう……分かりました、やれるだけやってみますよ」「ありがとうね!そう来なくっちゃ。ほらクーア、何してるんだい、さっさとこの子の服を用意してやりな」「わ、分かった!……ごめんね、ウチのお母さんが」
クーアさんがこちらを伺うように謝ってくるけど、そもそも最初から何かするつもりだったし、別に気にしなくても構わないですよ。接客する事になるとは思わなかったけど…
「ほぉぉ〜ん、そぉぉぉ〜か〜、テメェが今日のバイトかぁぁぁ〜…なるほどぉぉぉ〜…」
…………圧が!圧がすごい!
数十分後、船が停泊したのでクーアさんのお父さんを荷物の回収がてら迎えに行った僕たち。けど…
「…一応、言っておくが………ウチの娘に手ぇ出したら…テメェのアレをチョン切ってナマスにして食わせてやるからなぁ…」「は、はぁ…」
怖っ…何処ぞの山で山賊でもやってるんじゃないかこの人。滅茶苦茶顔怖いし…
「お父さん!おにーさんにちょっかい掛けてる暇があるならこっち手伝って!いつも以上に手が足らないから!」「はい只今!」
搬入された物資の箱から出された食材を片っ端から捌いているクーアさんから怒声が飛ぶ。それを聞いたクーアさんのお父さんはすぐさま厨房にすっ飛んでいき、般若の如き顔をしたクリスさんにフライパンでぶん殴られた。
「衛生管理ィ!」「ごもっともぉ!」
アハハ…さて、僕も手伝いますか。その前に手洗いを忘れずに。
「こ、れは…!」
そこは、まさに戦場であった。
いくら切っても焼いても炒めても煮ても注文が止まらない。途切れる事なく続く。店の経営を考えれば嬉しい悲鳴なのだろうが、やってる身からすれば溜まったものではない。
「おおーい嬢ちゃん、酒持ってきてくれ〜!」
「おれもだ!それからタコワサ!」
「骨せんべい!」
「茶漬けまだ〜?」
「どんどん持ってこい!」
ひいい、忙し過ぎる…
「どぉりゃあああ〜!」ズドドドドドドドドドッ!
クーアさんの気合いの入った声が響く度、凄まじい勢いで包丁が振り下ろされる。どんな状態になっているか見てみたいが、そんな余裕も…あぁもう、猫の手も…ん?
「猫の手も借りたい…?………………あ、そうだ」
いい事思いついた。というか、どうしてこんな簡単な事に気付かなかったんだろ。
…リュウ、マコ、ちょっとばかり頼める?
・・・なになに?!
〜お兄ちゃん、どうしたの?
いやね…カクカクシカジカこうこうこう…って訳。
・・・よーするに、みんなのおてつだいすればいいんだね!
そういう事。何か判んない事があったら早めに質問してね。
〜うん!
「…よし、やるか」
そうして、僕はクーアさんたちが困惑しているのを尻目に厨房から出る。そして、
「《デュアルブランチ》」
発動したのは分身魔法。《ブランチ》の強化版。発動した途端、僕の影が二股に分かれながら後ろに伸びた後、そのまま立ち上がる。次の瞬間には薄っぺらな影が色付きながら実体化して…
「おお〜!こんなかんじなんだ〜!」
「わ〜!お兄ちゃんの顔が見れる〜!」
あぁ、そう言えばマコは初めてか、分身動かすの。
《デュアルブランチ》は森でのレベリングの際習得した魔法だ。効果は名前の通り、二人の分身を作り出すこと。勿論、持続時間やHP量も大幅に改善されている。
要するに、今回はこれを使って大量の注文を捌こうとした訳である。
で、その結果…
「お兄さんたち、3番さんとこの出来た⁈」「「「とっくに出来てる!!」」」
処理能力が上がった分、より修羅場の深みに嵌っていったとさ…
〜1時間後 客足が落ち着いた潮騒亭にて〜
「あ゛~…」
あー…なんだろ。エクトプラズムめいたなんかが口から出て行った気がする。ていうか現在進行形で出てる。
「ホンっ……トにお疲れ様…」「ええ…死ぬかもしれないと思ったのは何度かありましたけど、『あ、死んだ』って思えたのはこれが初めてです…」
いやもうほんと、大変だったんですよ。特に分身組二人が消えた直後に新規のお客さんが団体で来た時には冗談抜きで眩暈が…
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Quest Clear!!!
イベントクエスト:「EX.晴朗なれども波高し」クリア!
タスク
潮騒亭の当座の危機を切り抜ける:✓/-
報酬
経験値:800
報酬金:1000G
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《《料理》のスキルレベルが2に上がりました》
クエストクリアね…お、《料理》のレベルが上がった。内容は…?ほうほう、調理時間の短縮ですか…これはイイな…
「おい、坊主」
ああもう、頭使い過ぎて頭が痛い…んん?
「はい、なんでしょ…ええっと」「コーエンだ。そういや名乗ってなかったな…」
よっこらせ、とクーアさんのお父さん…コーエンさんが僕の横の席に腰を下ろす。
「やれやれ…娘とカミさんが済まなかったな。ほぼ無関係だったのに」「いえ…まさかここまでとは、思いませんでしたが」「ハハ…だろうな」
僕のその答えにコーエンさんは苦笑しつつ、懐からなにやら紐のついた、お守りの様な巾着を取り出した。
「それは…?」「ああ…流石に労働の対価って奴をやらないとな、と思ってな。ほれ、手ェ出せ」「はぁ…」
恐る恐る手を出すと、彼はそこに大きめのビー玉のような蒼い珠を置いた。珠の内側には淡い光が灯っている。
「これは?」「スキルオーブって言ってな。どうやって出来るかはしらんがかなり貴重な物だ。昔偶々一個だけ手に入ってな…コイツを使うと、なんとその瞬間スキルを習得出来るっていうスグレモノだ。で、俺はコイツの中身を知ってて、かつ既に持ってる。と言う訳で、コイツを今回の報酬としたいんだが、どうか」
いや、大歓迎ですよ。何であれスキルはありがたいですから。
「…分かりました。じゃ、遠慮なく」「おう、持ってけ持ってけ。ただし娘はやらん」
アハハ…何か背中に視線を感じるけどプチッと無視。(ブブブ…)さて、どう使うのかな…
《御主人様〜!》「ぶふぇ!?」
この声…レギーナか?!いきなり背中にタックルしてくるんじゃないよ…って…
「あ」
僕の手から蒼い珠が飛んでいくのが、急にスローモーションになったかの様に目に映る。けど、咄嗟の事で対応出来なかった。そして、スキルオーブは吸い込まれる様に僕の口へ…
(ポトッ)(ゴックン)「「「「…」」」」
沈黙が流れる。……え、これ、どうなんの?
「…飲み込んじゃいましたけど」「…飲み込んじまったな」「「「「…」」」」
え、これ、どうすればいいの…?!飲み込んでも大丈夫な物なのこれ。吐き出さないといけないのかな?!…と、思ってたら。
《スキル《解体》を習得しました。サブスキルスロットに配置します》
…大丈夫、…なのか?
「なんか、スキル手に入りました」「お、おお…そうか。なら、いいんだ。スキルを習得したらオーブは消えるらしいからな…」
…何だろう、この微妙な間は。
「ってぇ!何でハチがこんな所に?!虫除けのお香焚いてたのに!」「キギ、ギィ!(訳:何よ!御主人様の近くに居ちゃいけないの、この貧乳!)」「ああっ、何か言ってはいけない事言われた気がする!よく解らないけど魂で解った!と言う訳で死ねぇ害虫!」「ギィ―――!(訳:上等よぉ――!)」「アンタ達、暴れんなら他所でやんなァ!」「お前等飯食ってる側でやんじゃねえ〜!」「え何、イベント?」「混ざれ混ざれ!経験値になるかも!」「ギャアァ!大乱闘だァ〜!」
あーあーあー…多分、強引に話題を逸らしに行ったんだろうけど…これ、後どうすれば…もう収拾付きそうにないし…
「ハハ…いつもの事ながら、賑やかだな」「いつもの事なんですかコレ…」「応よ。俺達船乗りは荒くれ連中ばっかだからな。喧嘩なんざ、朝飯の前に牛乳をコップ一杯飲むのと大して変わらん。だが…」
喧騒と混沌に覆われる食堂。それを見て、コーエンさんは豪快に笑った。
「今日は、一段と派手で良い!賑やかのは結構だ!」「さいですか…楽しそうで何よりです…」
…なぁ、混ざって来ても…
(だめに決まってるでしょ!)
その後、喧嘩を止めようとしてスキルを使う羽目になったり、喧嘩祭りの終わった後で新しいお客さんが来てまた地獄の釜の蓋が開いたりと、その日は実に疲労感たっぷりで、それにしては中々楽しい一日だった。
そう、全てが反転してしまう、あの瞬間までは。
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