2日目 闇夜の邂逅
44話目です。
大変申し訳ございません…現在、高難度クエスト「新入社員研修」がようやっと一段落したので、大急ぎで執筆しました…
連休中にもう一話投稿したいな…
どう意識を研ぎ澄ませても、その少女を認識できない。少女が足を踏み出す度に足音が聞こえるのに、風に揺られて黒々とした髪が揺れるのが目に映っているのに、彼女がそこに「いる」ことを頭が認めようとしない。
とにかく何か話さないと。そうやって謎の少女から、情報を少しでも得ようとする…前に彼女が話し掛けてきた。
「帰って。ここにいては、みんな死ぬ」
みんな、死ぬ、か…またきな臭い話だ。しかし彼女は嘘を言っている訳では無いのだろう。根拠?…勘でいい?
「みんな死ぬって、どういう…」
そこまで口にした瞬間、彼女の輪郭がぼやけ始める。
「ッ?!」慌てて駆け寄ったが数歩遅く、僕の伸ばした右手が触れるその瞬間、彼女の姿は森の暗闇に溶けてしまった。
「急いで。少しでも多くを救いたいのなら」
そんな言葉をその場に残して。
翌日。
「…」「どしたの?むつかしい表情しちゃって」
あの後、一人取り残された僕は町に戻って何か異変がなかったか、町の周辺を警備している兵士たちに聞き込みを掛けた。勿論、肝心なことはうまくぼかした上で。
それによると、ここのところ森のモンスターたちの活動が異常に活発化しているとのこと。なんでも、弱いモンスターがまるで溢れるように姿を見せているらしい。これは何を意味しているのだろう…
「おーい、聞いてますかー?」「…」
普通に考えれば、イベントの一環なのかも知れない。ここは「モンスターアイランド」らしいからね。でも、大量発生したのが弱いモンスターたちだったということが妙に引っかかる…『こんなこと、ここ数十年で一度も無かった』って、皆口を揃えて言っていたし…
「もしもーし、聞こえてるー?!」「…」
仮に、彼等が『ナニカ』…弱いモンスターが脅威と感じる存在が森にいるとしよう。恐らく、と言うか十中八九彼等はそれから逃げ出していたのだろう。だが、それだと辻褄が合わないことがある。何故今頃になって逃げ出したのか、という事だ。
いくつか予想は出来る。
仮説1。《森の中に脅威となるものが『突然』出現した》。
正直、これが一番可能性が高い。強大な『外来種』によってその場所の平穏が脅かされることは、現実にもよくあることだ。それと同じことがこの島にも起こったと考えれば、辻褄は一応合う。
仮説2。《誰かがモンスターを操っている》。
これも可能性としては高め。でも、それなら何故今なのか、という疑問が残る。何か事情があるなら話は違ってくるけども。
で、仮説3。《『元々』島にいた何かしらが『今更』動き出した》。
これは…どうなんだろ。調べてみないと何とも言えないな。ただ、この島のことを調べようと過去の資料を遡っても、百年前の時点で記録が途絶えていたんだよね…
「起きろ────────!!」「ハッ!?」
いけないいけない。ぼんやりしてた。因みに「潮騒亭」に戻れたのは聞き込みをして、調べ物をした後。その頃には日も高くなってました。要は僕、一睡もしておりません。
閑話休題。
「全くもう…イカの足咥えたまんまぼんやりしてんだもの。…ねぇ、ホントどしたの?気分でも悪い?」
「いや、そんなことは無いんですけどね…」
「ならいいんだけどさ。あんまりボケっとしてると、森の中の幽霊に『連れてかれる』よ?」
「?どういうことですかクーアさん」
「いや、ね…」
そう言って、彼女はフライパンを振る手を止めて、カウンター越しに話しかけてくる。
「なんでも、ここんとこ森ん中で女の子を見たーって街中で噂になってんの。でも、この街で女の子が消えたり出かけたりしたって話は無いし…その子を見たって人も、見たことない子だったって」
…あれおかしいな。それ、なんかすごーく心当たりが…
「で、今言ったその子を見た人が声を掛けようとしたら…なんと音もなく消えちゃったんだって…怖くない?」
いや、同意を求められても…第一、多分僕それバッチリ見てるし、会話してるんで怖いも何もないって言うか。
そんな僕の微妙な表情をどう受け取ったのか知らないけど、彼女はそこで満足したのか、会話をこう締めくくった。
「ま、君強そうだし、そう簡単に連れてかれることはないだろうけど。それに、この島には、『護り神様』がいてくれるから、そうそう恐ろしい事は起きないよ。大丈夫大丈夫」
「護り神ねぇ…胡散臭いなぁ」「シュイ?」
その日の午後。夕方まで寝て、ようやっと眠気を飛ばした僕らは、またしても森の中に探検に出かけていました。目的はもちろん、件の少女の捜索だ。恐らく…いや、十中八九彼女は何か知ってる。だから僕に警告を発したんだ。
「でも、どうせ警告してくれるならもっと詳細を教えて欲しかったな…」
神秘的な勿体付けは要りません。もっとストレートに、スマートに教えてほしいものです。
…で、だ。
「…レイ」「シュウ」
レイが服の中から右の掌に移動する。それを見て、僕はそのまま右腕を後方に向けて振り抜いた。当然、手の中で流体化していたレイはそのまま茂みに向かって一直線にすっ飛んで行き、茂みの一つに突き刺さった。
「ひゃっ⁈ちょっ、なぁにこれぇっ⁈」
すぐさま辺りに響き渡る気の抜けた悲鳴。
(やっぱり…)
なんか街中から誰か尾けてきてるから、何か後ろ暗い類のなんかだと思って、牽制がてらレイを投げてみたけど…予想に反して反応は何とも可愛らしいものだった。…んー、なんか、さっきから悲鳴が止まないんですが。ちょっと何やってんですかレイ殿。
「おーい、そろそろ…」
「あ!この子お宅の子ですかっ⁈ちょっ、あの、早いとこ取って、わひゅぅん⁈ど、どこ触って…んんっ⁈」「…」
茂みの向こう側にいたのは、全身を銀色のスライム(状になったレイ)塗れにされている女性だった。…ってどうしよこの状況。取り敢えず…
「レイ、ステイ」
「さ、先程は大変お見苦しいところを…」
無事流体金属地獄から解放された女性が微妙に上気した顔で正座している。「いや、こっちもいきなりあんなことした訳だし…」
こっちも当然正座です。流石に女性をスライム塗れにして置いて何の謝罪も無しってのはちょっと…
「い、いえ、あたしも勝手に尾行してたし、…それに、ち、ちょっと、気持ちよかったし…(ゴニョゴニョ)」
…最後の方は聞かなかったことにするとして、大事なことを聞かないと。
「貴女はどちら様?どうして僕を尾けるようなマネを?」
「あ、そうですよね、まだ初対面ですもんね、あたしたち…あたしはナオミっていいます。ただのスカウトです」
それが、掲示板で探索者と呼ばれるプレイヤーとの初顔合わせだった。
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