出会い×2
43話目です。な~んかきな臭くなってきました。
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草をかき分け、襲い掛かるモンスターをあしらいながら数時間。ようやく集落にたどり着いた…けども。
「『村』って言うにはちょっと大き過ぎないかなぁ」
村と呼ぶには人も建物も多すぎる。この規模じゃもう『街』である。
なんて考えていたら《マイニン島 港湾部》というビジョンがぼんやりと上空に浮かんだあと、《新しいロケーションに到達しました》というアナウンスと共に経験値が入った。経験値おいしいです。
通りは人でごった返していた。てっきりプレイヤーが6~7割位を占めてるかと思ったけど、現地民が半分以上いる。となると、この街は僕らが来る前から人の出入りがそこそこあったって事だろう。港湾部って言う位だから、ここは本土(?)との交易が経済の主なのだろうね。
「ちょっとちょっと、お兄さんそんな所で突っ立ってんじゃないよ。往来の邪魔じゃないかい」
あらら、ぼんやり考えてたら誰かに怒られてしまった。
「あ、ごめんなさい…」「全く、何も道のど真ん中でぼんやり考え事することも無いだろうに。ほら、こっちおいで」
僕の手を引くいかにも逞しいおかみさんが僕を連れて行ったのは、大通りの道沿いにある大きなお店。店に掲げられた大きな看板にはデカデカと『潮騒亭』と書かれている。
「いらっしゃい!…あれ、お母さん、その人お客さん?」
カウンターの向こうにある台所から、17~8歳位の少女が僕越しに今まさに僕を引っ張ってきた女性…恐らく彼女の母親だろう…に向かって声を掛けた。
「いんや。店の前の通りの真ん中で突っ立ってのを引っ張ってきた。見たことない服装だから、大方こいつも異邦人だろうねぇ…ほうら、何してんだい。椅子があるのに突っ立ってるつもりかい?さっさと座んな!」
「はい、大イカのゲソ丼お待ち!温かいうちに食べな!」
いつの間にか、ここでご飯を頂くことになってしまった。凄いパワーだったよ。あっという間に流されてしまって…荒くれ者だらけの港町で店を何年も出しているだけあるんだろうなぁ。…あ、これおいしい。
「そうかいそうかい。そいつは結構。しかしあれだね。ここ最近になって一気に異邦人が来るようになったねぇ」
「そうそう。おかげであたし達も朝からてんてこ舞いでさ。お父さんが追加で仕入れに行くのなんていつぶりやら…」
「あ~…なんか、すいません」
「なんで君が謝るのさ。…ま、謝りたいなら勝手にすれば良いけど。そういや自己紹介したっけ?あたしクーア。あっちはあたしのお母さんね」
そう言いながらも彼女…クーアのフライパンを振る手はとまらない。
「アタシはクリス。ここの女将さ。よろしくね兄ちゃん」
やっぱりここの女将さんだったか。キッチンを任されてるクーアちゃんと目鼻立ちがそっくりな彼女…クリスさんが笑みを浮かべながら僕に挨拶した。
「どうも、ベディです」「シュウウ…」
こーら。レイ、唸らないの。
「すいません、この子、いつもは我関せずって感じで寝てるんですけど、今は妙に機嫌悪くて」
「いいのいいの。にしてもメルスネークの子供かい。またえらく珍しいのをお供にしてるねぇ」
「え?この子、珍しいんですか?」
普通に歩いてたら見つかりましたけど…っていうか女将さん、何でそんなこと知ってるんですか?
「珍しいなんてもんじゃ無いよ。アタシは結婚前は大陸で冒険者ギルドに所属しててね、そん時チラっと噂を聞いたっきりさ。なんでもそいつを見ると1週間は良いことに恵まれるんだと。ギルドでもコイツの素材は高値で買い取ってくれるはずだよ、なんせ目撃情報が数十年に一回あるか無いかだから」
そうだったんだ…
幸運についてはレイの《招福》スキルが関係してるのかも。あれって確か《保有者を幸運にする》っていう効果が分かりにくいスキルだったか。でも「保有者」って言うからには効果が出るのはレイだけじゃあ…もしかしたらテイムモンスターが所有している場合ではちょっと効果の出方が違うのだろうか。
その後、彼女たちと色々話し、話しているうちになんやかんやでこの店の2階に宿を取る事となってしまった。野宿するからいいって言ったんだけど、「ウチは宿屋もやってんだ。どうせここの事は何にも知らないんだろう?」って、強引に押し切られてしまった。…ホント、港町の女性って逞しいなぁ。
1日目、夜。
日中は村…もう街でいいや、とにかく街で周辺施設の観察と露店巡りと、穏やかな時間を過ごしていたので、夜はワイルドな時間を…ま、要するに森の中で探索と洒落込むことにします。
街に行く前に少し交戦したけど、ここのモンスターの種類はかなり多い。ここの森は虫や獣はもちろんのこと、グールやスケルトンと言った悪霊系のモンスターがうようよいるのだ。
「と言ってる間にもう3回目…一体全体何があるって言うんだ」
周囲に散らばった襲いかかって来たスケルトンの残骸が粒子になって消滅するのを横目に呟く。
この島は上から見ると八角形に似た形をしており、中心付近に大きな火山がある。そして、港町があるのは丁度南東の角。で、今僕がいるのはそこから北上した森の中だ。
「ぼやいていても仕方ない。今は状況が動くまで探索に励むとしようか…」
兎にも角にもヒントが足りない。今は情報収集に務めるとしよう。そうすればこの島の秘密とやらに辿り着ける…かも知れない。
そう思い、森の更に奥に進もうとした、その時。
(来ちゃダメ…もどって…)
…ん?なんだこの声。
「シュウウ…!」
右腕に巻き付いたレイが鎌首をもたげて辺りを見回す。僕も周囲を警戒するけど、何も感じないし、聞こえない。でも。
(…なにか、いるな)
確実に、いる。だが、どう見てもいない。
「誰だ、どこにいる!出て来い!」
呼び掛けても、森を抜ける風が草木を揺らす音しか帰ってこない。
(帰って…ここにいてはだめ…)
またさっきの声。声から察するに声の主は幼い少女だろうか。だがさっきと違って、声と一緒に枯れ枝を踏み折る音も後方からオマケで聞こえた。…否。聞こえてくる…近付いてくる。
(…近い…後ろか…)
ゆっくりと、振り返る。そこにいたのは…街で見かけるような格好をした、可愛らしい少女だった。
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