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肩慣らし

38話目です。今回はえらく難産だった…

 ギルドとは、プレイヤー間である特殊なクエストをクリアすることで結成することの出来る、プレイヤーのグループの事である。このゲームに限らずオンラインゲームにはよくあるシステムで、プレイヤーは、


 ①ギルドメンバー間のクローズドチャットが使用可能

 ②各々のギルドの拠点を使用可能

 ③冒険者ギルドで特別な依頼が受注可能


 等々、様々なメリットを得ることができる。

 

 まあ、入るかどうかは個々人の自由なのだが、中にはギルドの加入を強要してくる不届き者も居たりするので、しっかり見極めるべし…って、掲示板に書いてあったんだよね。


 「ウチは新興で、前衛(フロント)を張れる子が少なくて…で、あのボス戦を見て、ここに来たんです」そう言ってギルドマスターと思しき女の人がこっちを向いてこう言った。


 「お願いっ!私たちのギルドに入ってくれませんか?待遇はそっちの言う通りで良いですから!」「大変申し訳ありませんがお断りさせていただきます」一瞬、彼女が呆けた顔をしたのを見た、気がした。で、その後。


 「え、ええ~~~!!何でですかぁ?!悪い話じゃないでしょ~!?」「うう~ん、確かにそうなんですけど…」…多分だけど、僕と君たちとは「合わない」。もちろん君たちが悪いわけじゃない。ただ…何というか、多分君たちとはいずれやっていけなくなる。今までも…そうだったから。


 という本音を飲み込んで、彼女には「当分ソロでやらなきゃいけない理由がある」と言って納得して貰った。もちろんフレンドコードは渡したよ。


 「わかりました…だけど、いつかギルドの規模が大きくなって、有名ギルドって言われるようになったら、また来ますからね!絶対ですよ!」そう言って彼女は走り去って行こうとして…


 「ぶへぇ!」あ、誰かにぶつかった。前を見て歩きましょうね。


 「オイ邪魔だ!どけ!」「ご、ごめんなさいぃ~…」あーあーあー、絡まれちゃってるよ。ああいう手合いはしつこいって話だけどねぇ…


 「チッ。いいからそこどけ。そこの奴にオレたちゃ用があるんでな」先頭を歩いていたリーダーと思しき男が彼女を突き飛ばしこっちに向かってくる。「きゃ!」それに二人の重武装のプレイヤーが続く。おいおい誰も助け起こさねえのかよ。あ、見かねたプレイヤー(?)が助け起こした。


 「おい、そこの。お前、前のボス戦に参加してたな?」「え?ええ、そうですが…」もしかして、お宅もあの時あそこに?


 「そんなことはどうでも良い。お前、ウチのギルドに入れ」…またストレートに来たな。さっきのやりとりを聴いてなかったのかね。


 「あんな弱小ギルドと一緒にするな。ウチは最前線で攻略を行うギルドだ。お前みたいな奴を入れてやるんだ。光栄に思え」


 …随分な言い方だなぁ。「誰に何度同じ事言われても答えは同じですよ。少なくとも今は特定のギルドに入るつもりはありません」お使い頼まれちゃってるしね。


 「ハァ?!」「俺たちの頼みが聞けねえのか!」「ウチは攻略ギルドだぞ!」いや、さっき理由説明したよ。そもそも、アンタらみたいなガラの悪い連中と、つるみたくは無いんだよ。


 「な、な…」「テメエ!」「表出ろ!」…もう外にいるじゃん、と言うのは無しなんだろうな。で、どうすんの?


 ======================

 「カンスケ」及び二名から決闘を申し込まれました。


  レギュレーション

   デスマッチ(敗北条件:HPが0になる)


  決闘を受けますか? yes/no

 ======================

 おお。決闘ですか。確かデスマッチで負けたら所持金を全額払わなきゃならないんだっけ。それにしても強引な…ここで僕が辞退したらどうするつもりなんだろ。受けるけどね。yesっと。


 「お前が負けたら、ギルドに入って貰うぞ!」「後悔しても遅せーぞ!」はやし立てる姿は只のチンピラである。…こっちが勝ったらどうすんの、とは聞かないでおこう。


 〈Are You Ready?〉アナウンスが鳴り響く。それは良いんだけどさ、なんかプレイヤーらしき人だかりが出来てるんですが。「いや、お気になさらず」気になるがな。


 〈3!〉カウントダウンが始まる。僕たちの周りにドーム状の薄い膜のようなものが降りてきた。どうもこれで周囲から隔離するらしい。


 〈2!〉相手は三人。武器はリーダーが大剣、後の二人は突撃槍(ランス)か。そしていずれも装備は重装鎧。レベル差も考慮すると、まともに打ち合うのは愚策か…


 〈1!〉武器は慣れた方天戟で。スキルの入れ替えは終わってる。右腕に巻き付いてるレイの様子は、「シャァァ!」…気合十分。

 結論…準備完了。


 〈Battle Start!!〉さて、往きますか。







 先に動いたのは相手のリーダーだった。「死ねやぁぁ!」大剣を振り上げながらベディに向けて突貫し、取り巻きもそれに続いた。が、その進撃は彼らがベディまであと5mという所まで近づいた所で停止した。


 「な、なんだ?これ…」「からだが、重く…」「うごけな…」彼らが地面に這いつくばって潰れた蛙の様な声を出しているが、仕方のないことだ。今彼らの身体には、自身の体重(+装備の総重量)の2倍の重さが掛けられているのだから。


 彼らに掛けられているのは《プレッシャー》という、ベディが《闇魔法》のスキルレベルが2に上がった際に《ブランチ》と共に習得した魔法である。この魔法は《視界に入った敵を3名まで、総重量の100%の重さをかけて動きを阻害する》というもの。重装備の相手にはうってつけと言える魔法だった。


 「テメエ…」「卑怯だぞ!」取り巻きが悔しそうに吠えるも、ベディは涼しい顔だ。「生憎(あいにく)こっちはレベルが足らないんです。だから搦め手でも使わなきゃまともに戦えないんですよ。それに…ルール違反じゃありませんしね」


 吐き捨てるようにそう告げると、ベディは戟を突き出すような姿勢で彼らに向けて突進した。「クソがぁ!」だがここでリーダーが根性を見せる。自身に掛かっている重力を魔法で無理やり跳ね除け、真っ直ぐ眼球に向かって迫りくる戟を大剣の腹で受け止めたのだ。


 「あらら」「終わりだアホめェ!」リーダーが隙をついて腰からサバイバルナイフめいた返しの付いたナイフを引き抜き、ベディの頸動脈目掛け振り下ろす…が。


 「流石に簡単に終われませんよ」彼の身体が急加速と共に後ろに引き寄せられた。彼の身体からは赤い紐状の血液が二本、背中の辺りから飛び出し、先端は地面に突き刺さっている。《操血》スキルで糸を作り、その糸で自分の身体を後方へ引っ張ったのだ。


 彼はそのまま後方へすっ飛んでいき、やがて地面に擦過痕を作りながら停止し…否。血の糸がギリギリと音を立てて張り詰めたのち、再び彼を前方に向けて射出した。だがそれまでとは射出速度が比較にならないほどに速い!


 (うわ、すっごいこのスキル。さっきより速い)彼は射出の瞬間、以前新しく入手したスキル《高速機動》を使用していた。このスキルは少々特殊で、《魔力を使用して空中での移動速度が30秒間1.5倍にする》と言うもので、彼はこのスキルと《飛行》スキルを併用し、前方への高速飛翔を行ったのだった。


 「上等だぁ…かかってこいやぁぁああ⁈」リーダーが迎撃しようと大剣を構えて走り出すも、何かに躓いたようにつんのめる。それは脂汗をかきながら立ち上がろうとしていた取り巻き達も同様だ。《プレッシャー》の効果時間が終了したのだ。


 「ふっ!」体勢が崩れた彼らに、ベディの一撃が迫る。狙いはリーダーの後方、よろよろと立ち上がっていた取り巻きの一人。「危ねぇ!」取り巻きは首を刈らんと迫りくる刃をしゃがみ込むことで辛うじて回避。当然攻撃をスカったベディは彼らの後方へ…行かない。先程同様、地面に血液の碇を打ち込むことで強引に方向転換。スピードを維持したまま、Uターンして戻ってきた。


 彼はその勢いのまま右腕を突き出し、もう一人の取り巻きの頭をアイアンクローの要領で掴むと、地面に叩き付け、そのまま地面に押し付けながら擦り(削り)付けた。「がわわがが…」取り巻きがもがきながら変な声を出しつつ、自身の顔からベディの手を剥がそうとするが、うまくいかない。(どうなってんだよォ…コイツのレベルは俺より低いはずなのに、何でこんなに力を入れても全く剥がれねぇんだ⁈)


 ベディはそのまま取り巻きを押し削りながら前進し、その身体を前方にいるリーダーに向けて思い切り投げ飛ばした。「ごがっ…この野郎!」取り巻きを押しのけ起き上がったリーダーの顔は怒りで歪んで真っ赤である。そのまま通り過ぎて行ったベディに向かって行こうと足を進めるも、「ぐごべっ!」まだ足元にいた取り巻きに躓いて転んでしまった。


 「痛てて…おいテメエ何やってんだ!」振り返って取り巻きを怒鳴りつけるが、そこにいたのは銀色の何かに顔面を覆われ、それを剥がそうともがく取り巻きだった。ベディは彼の顔をつかんだ際、レイに命じて彼の顔を覆って声を封じ、それと同時に彼の首を締め上げて縊り殺すように指示していたのだ。先程彼がベディのアイアンクローを外そうとしてできなかったのも、ベディとレイの二人(一人と一匹)分の力が掛かっていたからである。


 「この…!」リーダーが振り返った時にはすでに遅い。とっくに戻って来ていたベディはリーダーの顔を左手で掴み、思い切り時計回りに手首を|捩《ね》じった。


 ゴギンッ。


 首の骨が圧し折られたリーダーの身体が崩れ落ちると同時に光の粒子になって消滅する。そのタイミングでHPゲージがゼロになった取り巻きも消滅した。


 それを見届ける間もなく、ベディは《アームズチェンジ》で武器を《スニーキングエッジ》に変更し、手にした刃を投擲した。その先には、こちらに向かって来る残りの取り巻きの頭。


 ザグン!


 投擲されたダガーが過たず彼の額を貫き、その勢いのまま彼を地面に押し倒し縫い留めると同時に、急所(バイタルパート)を破壊された彼の身体が光になって消失した、その瞬間。


 <Victory!!>


 軽快なファンファーレとベディの勝利を告げるアナウンスがその場に響き渡った。




 お、終わった…やっぱり格上との戦いは神経削る…確実に急所を狙った上で相手の攻撃は全回避しないといけないし…あ、(バリア)がいつの間にか消えてる。


 「チートだ!」ん、なんかさっきの人たちまだなんか言ってる。「絶対チートだ!じゃなきゃ俺たちが負けるはずがねー!」あーあーあー…喚き散らしてるよ。いい大人がまあ…たかだか一回負けただけじゃないの。


 さりとて反論しない訳にもいかない。しょうがない、行くかぁ…と、思ったけど。


 「いや、お前らが悪いよ」「そーそー。自分が弱いのを人のせいにすんじゃないよ」「大体どーやってチートすんだよ。e-shpereのセキュリティは世界トップレベルだ。米国国防省(ペンタゴン)のお墨付きだってあるんだぞ」


 僕が何か言う前に、周りの観客(?)のプレイヤーたちが説得(?)してくれていました。じゃあこの間に…


 「何ドロンしようとしてんだ」やっぱりダメですか。しょうが無い、行きますよ。行きますから襟首引っ張らないで~!…あれ?さっきの女の子、どこ行ったんだろ。さっきまでいたんだけどな…ああはいはい、今行きますよ。








 ー数十分後 始まりの町 某所ー

 

 「どうだった?」いざこざの現場から姿を消した少女の姿は、始まりの町の片隅にあるとある宿屋にあった。


 「ダメだったよぉ…『しばらくソロでやる』んだって。はぁ~あ…」彼女の前には、種類の違う装備で身を包んだ5人の少女たち。その表情は様々だった。


 「やっぱりね…」「まだ名前が売れてないからね…」「て言うか、そもそもスカウトする必要ある?」「そうですよ!あんな胡散臭い奴、わざわざ先輩が呼びに行くほどの価値があるとは思えません!」「お黙り!」エキサイトした一番年下と思しき少女を、ギルドの副長だろうか、一番背の高い少女が一喝した。


 「どんなにギャーギャー言ってもあの戦闘能力は魅力的よ。今後を考えると絶対欲しい人材だわ。それに…」そこで副長は言葉を切り、彼女たちのギルドマスターに視線をやる。そこには…


 「はぁ…やっぱり佐賀美先輩かっこよかったな…まさかこんな所でまた会えるなんて…やっぱりもう一回勧誘しに行った方が良いかな…」ぼんやりと熱に浮かされたような顔で物思いに耽るギルドマスターがいた。


 それを見て、先程までベディの加入に反対していたメンバーは悟る。(あー…そういう事ですか)(そういう事よ。今まで何にも言わずにあたしたちに好き勝手やらせてくれたんだから、あの子にもたまにわがまま言う権利位あるんじゃない?)そう小声で話した後、彼女たちは未だ記憶の海から還ってこないギルドマスターを呼び戻すべく、また来る公式イベントに対する対策を立てるべく、ギルドマスターに声をかけるのであった。

いかがでしたでしょうか。皆様の応援がこの作品の養分となります。良かったら評価、ブックマーク等していっていただけると幸いです。

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