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奇々怪々なる百の腕Ⅳ 決着!

32話目です。3が日に投稿すると言っていてこの始末…申し訳ないです…

 「ほー…ほうほうほう…なるほど、こんな感じなのか」手を握ったり開いたり、その人影はまるで自分の身体の感触を確かめるかのように手を動かしていた。「アキ、どんな感じ?」「悪く無え、問題なく動く。強いて言うなら、自分の顔がもう一つあるのは何とも言えねえな。奇妙な感覚だ…それ以外は問題ない。しかし、技術も進んだもんだ…」アキと呼ばれた彼は、マフラーを(わずら)わしげに脱ぎ捨て、髪をかき上げオールバックにしながら答えた。


 当然、マフラーに隠された壮絶な傷跡が(あら)わになり、周囲のプレイヤー達が一部ざわめくが、彼らはそれを気にも留めなかった。


 「よし、さっさと行くぞ。またあの手からビームをやられたら(たま)らん。とりあえず俺が奴の気を引いて駆けずり回させるから、お前はゆっくり奴を観察しろ。んで、それが終わったら、とっととあのうざい回復を封じちまえ」「了解。あと分かってると思うけど、」「わーってら。分身(コイツ)はお前のHPとMPの半分しか体力と魔力が無くて、そいつが削り飛ばされちまったら5時間使用不可、そもそも何もしなくても今のスキレベじゃ10分で消える、理解してるさ」そう言うなり彼は伝説級(レア度:レジェンダリ)の武器たる《雷霆棍フールミネ》を携え、ボスの下に突貫した。


 




 眼前に巨大な掌が迫る。その動きは遠くから見ると緩慢だが、近くから見ると圧迫感からか3割増しで速く見える。が、単調な叩きつけでは不意打ちでない限りそうそう当たらない。悠々と躱す。さっきまでアキが立っていたところに質量と衝撃が襲い掛かるが既にそこには人影はない。


 これではだめだと悟ったのか、今度はその無数の(砲門)からビームを撃とうとする…も、させじと他のプレイヤー達が放った魔法の弾丸に発射をキャンセルされた。


 「オラァ!!」発射キャンセルで怯んだ隙にアキは手にしたフールミネを叩きつけた。べきゃり、と手の一つが音を立ててひしゃげると同時に雷の力で焼かれ焦げる。だが彼はそこで手を緩めず、ヌンチャクの鎖を伸ばして今しがた()し折った腕に巻き付け、歯を食いしばりながら腕を引き千切らんばかりに鎖を引っ張った。


 「ぬぐぎぎぎぎ…!」こめかみに血管が浮かび上がるほどに力を入れる。彼の力は鎖を通じて余さず伝わり、ボスの腕を締め上げ、そして焼いていた。…やがて、ぶちぶち、と音を立てながら腕の一つがボスの巨体から焼き千切られた。間髪置かずに断面にプレイヤーの一人が放った火球が直撃する。そのタイミングで一瞬断面を見やるが、すぐに光が集まって腕が修復されるのを見てすぐ攻撃を再開した。(やっぱりどこぞの大英雄(ヘラクレス)の様にはいかねェか)ままならぬものだ、とため息をつきながら今度は得物を(シャフト)に変形させて攻撃する。


 突撃してきたプレイヤー達に向けてボスが光弾を発射する度に悲鳴と轟音、そして周囲の建築物が破壊される音が聞こえてくる。(…ちッ)光弾を回避しながら、思わずアキは心の中で舌打ちをする。(ああ、五月蠅(うるせ)え、耳障りだ)こちらに迫る光弾を棒で叩き落す。その表情は嫌悪に溢れていた。


 そうこうしているうちにアキはボスの懐に潜り込んでいた。その時既に球体は貼り付けられたいくつもの巨大な腕で本体を持ち上げている。

 

 「うお、でっか」一瞬その大きさに呑まれそうになるが、それもほんの少しの間の事。すぐに巨体を持ち上げている腕を殴り飛ばし始める。流石にすぐ再生するとはいえ、腕を何本もベキベキ圧し折られるのは堪らなかったのか、ボスは腕を四方八方からアキへ伸ばして彼を捕縛しようとした。


 だが、(7時から4本、6時から5本、2時と12時と9時から3本ずつ…音から察するに、7時の最初の奴を優先的に回避しねえと)


 風切り音の鋭さと音の距離。アキの聴覚(みみ)はそういった情報から、多方向から迫り来る巨腕の位置を正確に感知し、その脅威をアキに伝達していた。


 背後から巨腕が迫る。アキはそれをステップで回避し、続けざまに伸ばされた腕をヌンチャクに変形させた得物で指を粉々に圧し折り無力化、その後も襲いかかる腕の猛攻のことごとくを回避し、ボスの巨体を支える数本の腕の下までたどり着いた。


 「テメエの存在は…耳障りだ。おとなしくデータの海の藻屑になってろ…!」そう言い放ち彼はヌンチャクを振るい、支えとなっている腕に遠心力のたっぷり乗った一撃を見舞った。


 ボグンッ。腕の一本が支えを失い力を失う。だがアキはそこで攻撃の手を緩めなかった。「オオオラアアア!」彼がヌンチャクを振る度、骨の砕ける音と稲妻がはじける音が周囲に響き渡る。そしてその度にボスの巨体が揺れ、ついには……






 ズウウウウウウンッ!倒れた。それはもう派手に転倒した。その余波で神殿の尖塔が崩れ、ボスに幾ばくかのダメージを与えたが、今やベディにとってはそんなことはどうでも良くなっていた。


 「見つけた…」その顔には驚きと高揚が溢れていた。それはそうだろう。先程彼の目には彼が探していたボスの「弱点」が映ったのだから。


 「それ」を確認した後のベディの動きは迅速だった。戟を手にし、今まさに回復を終え、立ち上がろうとしていた異形の肉塊に急速接近し、腕の一本に向けて得物を振り上げた。





 さて、彼が見た物は何だったのか。ここで読者諸君には少し考えて貰いたいことがある。「何故ロイカが襲われなければならなかったのか」という事だ。


 あの狂信者は何故わざわざあの教会まで足を運んだのか。いかに衛兵隊が出払っていたとはいえ、屋内には子供たちがいて、万に一つとは言え逃がして誰かに知らされるリスクもあるというのに。


 ベディはこの疑問と、ボスの「全体に人間の腕を貼り付けた異形」と言う姿、そしてボスの回復エフェクトから、一つの仮説に辿り着いた。


 すなわち…「ボスの躯を覆っているのは、今まで切り落とされた被害者たちの腕」という事。


 そしてボスを観察した結果、「それらの腕はそれぞれの人物たちの技能、もしくは性質を行使できる」ようだ、という事もはっきりした。


 かの者がわざわざ教会に現れたのも、それが関係しているのかもしれない。彼女は(不確定要素が多いプレイヤーを除けば)この町で数少ない「欠損を治療出来る」人物なのだから。

 ボスの特徴を考えれば、彼女の治療能力はほぼ必須だったろう。


 故に彼女の切断された腕を見つけ、これを破壊し回復を封じる必要があったのだが、ここで一つ問題があった。

 

 普通の人では、どれがどれだか、分からないという事。本来運営はプレイヤーがここで詰まると考えていたのだが、ここは今回は問題にならなかった。その理由は言うまでもないだろう。


 そして今。ボスがひっくり返ったことで下部に配置されていた腕が露出、そこでベディが記憶と照らし合わせて探していた、ロイカの腕が発見された、と言うわけである。


 


 さて、視点を(ベディ)に戻すとしよう。


 ベディは戟を振り上げ、いくつも生えている腕の一本、やや他の物と比べて白いそれを切断せんとした。だがボスも必死である。周りの腕をドーム状にして防御するとともに、他の腕から光弾を撃って町もろとも彼を吹き飛ばそうとした。


 「まあ…そうなるよね」だがこれも彼の予想の範囲内である。叩き付けはここでは来ない。何故なら先程アキがやったように躱されるだけだから。だからこそ光の雨でこの町ごと塗り潰そうとしたのだが、このタイミングではそれは悪手でしかなかった。


 「今だやれェッ!」「応さァ!」どこに潜んでいたのか、土煙の中からアキが現れ魔法を発動する。それは《闇魔法》スキルに―掲示板を見ない彼らは知る由もないが―不遇のレッテルを貼る一因となり、ベディ自身も最初は使えないと断じた魔法。


 「《アブゾーブ》ッ!」詠唱を行った瞬間、アキのMPの半分以上を喰らって黒球が彼の前に出現する。重力異常によって発生したそれ(ブラックホール)は瞬く間に大きくなり、周囲の全てを飲み込み始めた。そしてそれは、光とて例外では無い。


 町に向かっていった光弾も、プレイヤー達を薙ぎ払わんと飛び出した光弾も、全てが吸い寄せられる。吸引された後は?その周囲2メートル四方ほどに集中して降り注ぐのみ。「行けアミーゴ!」アキがベディに向かって伸ばされた巨腕を叩き折りながら叫んだのが聞こえた。


 押し留めも出来なければ防ぐことも出来ない。それをボスも悟ったのか、その場から転がって退避して体勢を立て直しにかかった。が、「逃ぃがすかあああああぁぁぁ!!!」ベディは即座にスキル《アームズチェンジ》を使用。あらかじめ登録してあった武器に装備が入れ替わり、戟の代わりに銀色の刀身を持った刀が彼の手に出現する。


 …手に重い感触が現れる。それを彼の神経が認識するかしないかといったその瞬間、彼は地面を割らんばかりに踏み込み、手にした刀を全力で振り抜いた。

 振り抜かれた刀身は遠心力に忠実に従い、加速しながら伸長。振り抜かれた勢いのままボスの元まで到達し、そして…


 防御のためにロイカの腕を覆っていた腕もろとも、回復を行っていた腕を伐採した。


 「■■■■■■■■■~~~~~~~!!!!!」


 悲鳴とも、慟哭ともつかない絶叫が周囲に響き渡る。ボスはその場に倒れ込むように崩れ落ちるが、間一髪、右腕に巻き付いていたレイが限界まで体を伸ばしてベディの身体を引っこ抜いてその場から逃れた。

 その場にいたプレイヤーのほとんどが耳を押さえたりうずくまったりしたが、ボスからの攻撃は絶叫の間一切なかった。


 そして絶叫が止み、耳をふさいでいたプレイヤー達がボスを見ると…ボスのHPゲージが1割ほど減少していた。


 「おおー!!」「よっしゃ!これでダメージ与えられる!」「今の誰だ⁈」「ゴーゴーゴー!」「倍返しじゃあー!!」「往生せいやこンの球コロォォ!!!」


 …回復手段を絶たれたボスは実にあっけなかった。脅威だった光弾も、その都度発射を潰されたり光弾をベディとアキの《アブゾーブ》で無力化されたりで、図体がデカいだけのボスはただのカモでしかなかったのである。そのため最終盤の方はほぼほぼプレイヤー達によるワンサイドゲームと化していた。


 で、最終的に。「■■■■■■■■~~~~~~~!!!!!」絶叫しながらボスは爆散し、雲に覆われ、赤い月が顔を出していた空も元に戻ったのだった。


 ======================

  Grand Quest Clear!!!

  グランドクエスト:「奇々怪々なる百の腕」クリア!

   報酬

    経験値:8000

    報奨金:15000G

    スキルポイント+15

    町民の友好度が大幅上昇

    「始まりの町」でのリスポーン時にデスペナルティ低減

    アイテム「信仰の結晶」(戦功ボーナス)

    アイテム「祈りの欠片」(シークレットボーナス)

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 ⦅レベルが10に上がりました。スキルポイントを5得ました⦆

 ⦅メインスキルスロットが1増えました⦆

 ⦅《鑑定》のレベルが3に上がりました⦆

 ⦅《闇魔法》のレベルが3に上がりました⦆

 ⦅《操血》のレベルが3に上がりました⦆

 ⦅《ランサー》のジョブレベルが2に上がりました⦆

 ⦅スキル《高速機動》を習得しました。メインスキルスロットに配置します⦆

 ⦅称号『ジャイアントキラー』を取得しました⦆

 ⦅従魔『レイ』のレベルが3に上がりました⦆

 ⦅フレンド申請が200件を超えました⦆

いかがでしたでしょうか。皆様の応援がこの作品の養分となります。良かったらブックマーク等していっていただけると幸いです。

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