奇々怪々なる百の腕Ⅲ 赤月を越えて
31話目です。ホントは2話投稿しようとしたんですが、2話目が思ったより長くなりそう&区切りが良いのでここで年内最後の投稿とします。次話は年明け、3が日にどうにかしたいと思います。それでは皆さん、よいお年を…
「少し目を離した間にとんでもないことになっとるなお主」「こうなると思ってやってる訳では無いんですが」防壁の向こうでは文字通り光弾の雨が叩きつけるように降り注いでいるがビクともしていない。余程強固な壁なのだろうか。
「…?ああ、これか。《マギア・シャッター》と言ってな。《無属性魔法》のスキルを7まで上げると使えるようになるかもしれん魔導防壁じゃ。魔法の効果を半減した上で壁で受け止める…じゃから見た目より頑丈じゃよ」「『かもしれん』ってどういうことですか…皆覚える魔法は一緒でしょうに。そもそも今、初めて聞いた魔法の名前が出たんですが。…そもそも、あなたは何を知っているんですか」
しれっと出現した新情報にベディは思わず老人にツッコミを入れる。だが老人はどこ吹く風といった模様だ。「さてなあ…その話はこの後でもよいじゃろう。後でいろいろ教えてやる」そう言って老賢者は防壁の向こう、四方八方に光弾を乱射する異形の肉塊を見た。
「それよりもこやつをどうにかせねばなるまいて。このままだといずれ…いや、まだいい。まだ時間はある。兎に角一刻も早くこやつを滅さねば」「それが出来れば苦労は無いんですが。何か良い手段でもご存知で?」
「それがのう…特にない」「「「「「「アンタ何しに来た」」」」」」これには周囲からもツッコミが飛んでくる。「正直…アレはもう受肉した一個の生命となっておる。だからもう手っ取り早く消滅とか浄化とかが出来んのだ。…まあ、だからこそ命の大原則に縛られる存在になった訳だが」「命の大原則…?」「何だそれ…?」ベディ以下、老賢者の言葉にプレイヤーたちが首を傾げていると、彼は重々しく口を開いた。
「『誰も死から逃れられない』…アレは肉の身体を手にした代わりに、『命』に縛られるようになったんじゃよ。故に、少なくとも殺すことは出来るはずだ」(だからその方法を教えてほしいんだよ!!)プレイヤー達の心が一つになったところで、ボスの光弾の雨が段々止んでいく。やはりあのような範囲攻撃を延々撃ち続けるのは無理があったようだ。
「殺すまではいかなくとも…奴の回復は封じられるかもしれません」ボソッと、ベディがボスをみて呟いた。「ほう?何かね」「実は……奴の外装は……もしかしたら……特定すれば……(ぼそぼそ)」
「…なるほどのう…じゃが奴に近づくのは至難の業。その上で探すとなると…」老賢者の懸念は的確だった。ベディが『目的』を果たすためにはできればボスに近づく必要がある。…あの光弾の集中豪雨と無数の掌の攻撃を掻い潜った上で。
「大丈夫です。僕ならどれだか分かりますし、僕は一人じゃないので…でも、多少は気を逸らしていただけると」
そう言ってベディはその無数の掌を叩き付け始めたボスに向かって歩き出す。その時には既に光弾の雨を潜り抜けたプレイヤー達が回復を終え、攻撃を仕掛けていた。
「……ねえ、聞いてるんでしょ、さっきから」
-…何で分かったンだよ。
「分かるよ、何となくだけどね。…と言うか、あれだけ表層まで出てきて、いない筈がないよ。見てたんだよね」
-…ふん。それもそうか。ああそうだ、その通りだ。悪りィか、コノヤロ。
「ふふ。…それはそれとして、ちょっと頼みがあるんだけど」
-見りゃわかる。アレの対処、だろ。
「うん。説明が省けそうだね」
-けッ。そもそも、お前はいつの間になーに面白そうなゲーム始めてんだ。俺らだってプレイしたかったってのに…VRだぞ、VR。完全に小説の世界じゃねーか。
「あー…ゴメン。そういや君たちは完全に蚊帳の外だった…申し訳ない」
-ふん。ま、いいさ。こいつはその埋め合わせってことでいいのか?
「うん。僕があいつの回復を封じるから、君は奴の攪乱を。…頼める?」
-たりめーだ。その代わり、そのスペシャルなヌンチャク、俺に貸せ。
「え?これを?良いけど…使えるの…って、」
-ああ、愚問だな。お前にできて俺に出来ない道理が無いだろ。何故なら…
-俺はお前で、お前は俺なんだから。
「…分かった。じゃあ、行くよ。ぶっつけ本番だけどそっちでどうにかしてね」
-ああ。任しとけ。精々派手に暴れてやんよ。
そして僕はボスの目前で立ち止まる。そして、ある魔法を発動させるためのキーワードを呟いた。
「…《ブランチ》」
その瞬間、僕の影が後ろから横に移動し、まるで影から浮き出るようにもう一人の人影が出現した。
その人影は…僕にそっくりな顔をしていた。
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