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奇々怪々なる百の腕Ⅰ その願いは誰がために

29話目です。台詞回しに難儀する今日この頃。あ、そうそう、今日はもう一話投稿してるみたいですよ。

 「くっ…!」響き渡るワールドアナウンス。それをバックに、ベディは街に向かってダッシュした。それに数瞬遅れてクロたちも続く。


 「ねえちょっと待って、『やりやがった』ってどういうこと⁈」「あれは姿を消してるんじゃない、最初っから居なかったんです!」走りながらベディは説明する。


 「闇魔法に《ブランチ》って魔法があって、それを使うと感覚の一部を共有した、実体のある分身(ダブル)を生み出せるんです!恐らくそれを使って」恐らく聞きたかったのはそれだけではないだろうが、クロはとりあえず『その質問』を一旦飲み込んだ。


 「なにそれ。じゃあ今までずっと、離れた安全なところから人を襲ってたってこと⁈」ユニが憤慨するのも無理は無いだろう。


 「でしょうね…でもあれ、普通の人は発動中、分身の操作で手一杯で動けなくなるんですよ。それを消したって事は…」そこまで言えば下手人の狙いも見えてくる。


 「まさか…!私たち、まんまと誘き出されたってこと⁈」「おそらく。きっとどこかでずっと見ていたんだ…!クソ、何故気づかなかった⁈」


 そう吐き捨てながらもベディの足は止まらない。

 

 「でも、プレイヤーもまだ…」そう言いかけてクロは口をつぐんだ。このゲームが発売されてからもうすぐ一か月。果たして始まりの町であるこの町に居残っているプレイヤーが果たして一体どのくらいいるだろうか。先行して攻略している俗に言う『攻略組』は既にこの国の中心部に到着しているというのに。


 恐らくそれも下手人は加味していたのだろう。

 

 「…ねえ、これどこに向かってるの」ルナの意見はもっともである。既に門は通過した。町の中で何か異変が起こっている様子はない。だが先頭を走るベディはまるで目的地が分かっているかのようだった。


 「もう少しです!奴が消えた瞬間、町の中で奴と同じ感じの気配がいきなり現れて」「気配だぁ?そんなんでホントに本体が何処にいるか分かんのかよ!?」


 だが、ベディの言葉はやけに自信に裏打ちされていた。まるで、本当に気配を察知しているかのように。


 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 ベディの足がだんだん止まる。それにつられて他の皆の足も止まった。「ここは…」


 そこはベディが何だかんだで世話になっていた場所。シスターが一人で守ろうとし、ベディが成り行きで手を差し伸べることとなった、あの教会だった。



 そして、そこに「奴」は居た。


 「…最悪だ」ベディが呟いた。


 そこにあったのは…「赤」。否、血だった。


 「嘘…」「マジか…」「…」


 血溜まりの中に、倒れ伏し、右の袖が空っぽになったロイカの姿があった。


 「んん…?ああ、お客様でしたか、これは失敬。この場合『遅かったな』と言うべきなんですかね。それと(ビシュッ!)も『どうかされま(ギュリリリ…)したかな?』ですかねぇ?いやはや、何分こういう状況は(ボッ!)珍し」


 (《グラビティ》)ズドゴォォン!…ゴシャァァァン!


 男が台詞を言い終える前にベディは《操血》で伸ばした腕で自身を男に向けて飛ばし、男の顔面に鉄拳を叩きこみ、地面に叩きつけ、そのまま壁に向かって蹴り飛ばした。それぞれ《グラビティ》のおまけつきで。


 「…あなたが誰で、何の目的を以て凶行に及んでいたか、もう興味は失せました。…故に死ね。()く消えろ。そして命を以て、今まで傷つけた者たちに詫びを入れるがいい…!」


 この時、既に全員が各々の獲物を抜き放っていた。だがよろめきながらも立った男の飄々とした態度は崩れない。


 「いたた…おやおや、これはまずいですねぇ。よろしくない。ここで私が(たお)れてしまうと我々の悲願が潰えてしまう…という訳で、ここは遁走と洒落込みましょうか」


 そう言って、まるで翼が生えているかのように、唐突に男は飛び上がった。


 「な…ッ⁈待ちやがれッ!」バロールが吠えるも、あっという間に男は彼らの手の届かない高度(ところ)まで上昇していた。


 「ハハハハハ、三十六計逃げるに如かず…なに、すぐに会えますとも。場所は…これもすぐ分かります。ではその時まで…さらば!」


 言うことを言うだけ言った後、男は町の中心部に向かって滑るように飛翔していった。



 「…ハッ!いけない、すぐに応急処置を…」呆然と男を見送ったベディが再起動する少しの間に、クロが重傷のロイカに対し回復魔法を使用していた。


 「…!どう、です、か…?」「…一応、HPは回復できるわね。他のゲームだと、例えば呪術(カース)かなんかで、手順を踏まないと回復不可、なんてこともあるから…とりあえず、その心配はないけど…」


 そこまで言って、クロは目を伏せた。問題はそこではない。


 「…やっぱり、どうにもならないですか」「どうにもならないわね」


 やはり、奪われた腕はどうにもならないようだった。更に…(最悪、『あれ』を使えばどうにかなるが…今のところこれはどうにもならない、か)


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  Name:roika 性別:女性

   Lv.38

  種族:人間

  状態:部位欠損(右腕・解除不可)

   ・

   ・

   ・

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 -町中心部 生命神神殿 最深部-


 「これですか…かの勇者が封印した『あの方』の断片、貴きモノの残滓は…」


 男の前には妖しい輝きを(たた)えた魔法陣。幾何学的な紋様で構成された魔法陣は、ドクン、ドクンと音を立てて脈打っていた。



 「よい、しょ、あだぁ!?…ああもう、彼、思いっ切り殴ったみたいですねぇ…まだ痛いですよ。歳は取りたくないものです。ハァ…ともあれ、これで百個目の供物…五十の男と、五十の女の腕。そして魔物の肉…多少時計の針が早まったが…時は満ちた。

 …さあ、始めよう。我らが主の凱旋を!分断されし古のモノよ、此処に!」


 …地獄の釜の蓋が開く。

いかがでしたでしょうか。皆様の応援がこの作品の養分となります。良かったらブックマーク等していっていただけると幸いです。

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