幕間 祝福か、呪いか
24話目です。ちょっとだけ短めなのです。
2018/11/23 内容の一部を修正。彼にうっかりは無いでしょう。多分。
ゲーム内での騒ぎから数日後。なんやかんやリアルが忙しかったものの、時間が取れたので僕はある場所に向かった。目指すは自転車で数十分の場所にあるとある医院。そこが今日の目的地だった。
「ふう…」到着。初めて来る場所なので少し緊張。でも、ここには今の僕がどうしても会いたい人がいた。「…よしっ」軽く頬を叩いて僕は呼び鈴を押した。
「来るなら来ると…相変わらず『思い立ったが吉日』か」応接室にてケラケラと笑うのはこの小さな巨塔の主。「ご迷惑でしたか?」「いいや、丁度客が途切れたころだ」「よく言う」そちらこそ相変わらずの大口ですね。
「んで?10年ぶりに顔を見せたがどっか診てもらいたいとこでも?」「いえ…以前僕にくれた『宿題』、覚えてらっしゃいますか?」そう言うと、かつての僕の命の恩人は腕組みをして唸った。「…そんなこと言ったっけ」「言いましたよ。『今は分からなくても良い。分かったら俺んとこに来な』って」彼は未だにウームと唸っている。が、多分あれは演技だ。しっかり覚えているのだろう。
「まあいいですけどね…最近、こんなことがあったんです」
それから僕はあの部屋の事(勿論ゲーム内の事だと話した)、その過程で僕の過去を話したことなどを彼に話した。「……」「あの時は分からなかったけど、今なら、当時のあなたの気持ちが何となく分かるような気がするんです。救った者の祈りと、救われた者の責任の意味が」
「……んな御大層なこと言った覚えは無ェよ。あン時は助けた方の気も知らねェで死のうとする阿呆にキレて言っただけだ。それにあれが原因で病院追ん出されるし…わざわざ報告しに来るようなことじゃねェ」「ええ、でもあの言葉が無ければ僕はここにいなかった。だからこそ、今日はお礼を言いに来たんです」
「礼、ねぇ。そこまでの事したかぁ?」「しましたよ。恩人の気も知らないで死のうとする愚かな小僧に生きる理由をくれた。十分礼に値すると思いますけどね」そもそもその為にわざわざ足を運んだ訳だし。
「あの時は大変お世話になりました。僕の命を救っていただき、本当に…本当に、ありがとうございました」
「…けッ、十年前は碌に礼なんざしなかったガキが、随分と言うようになったじゃねぇか」そう言って彼は「こっちこそ、生きててくれてありがとうよ」と、先程までと同じ様に鷹揚に笑うのだった。
「もう行くのか。もう少しゆっくりしていっても良いだろうに」「いいえ。客を待たせる訳にはいかないでしょう?」午後の診察、始まるころでしょ。「フン、そういう事じゃねぇわ。手前の身体のことでな。どした?その隈」
「ああ…これ。ちょっと寝つきが悪くて。大したことないです」「そうかい。眠剤出すか?」「止めときます。もう貰ってるんで。それじゃ!」さて帰ろ…おしゃべりしてたらこんな時間。スーパーの特売に間に合うか…?
「なーにが『大したことない』だ。どうせ碌に寝てねぇだろう…まだ、ぶり返すんか」フラッシュバック。ある日突然、過去の記憶や体験を何度も思い出したり、夢に見たりするのだ。「まああいつの場合、それだけじゃないがな…ったく、神様も酷だぜ。よりにもよって…」
それは、永劫の呪縛か、神の祝福か。
「『完全記憶』ねぇ。見たものを全て記憶する、だったか。爆発で脳を損傷したからか、それとも家族を失ったショックで目覚めたか…いずれにしても、今の奴にとっては呪いでしか無い、か」
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