表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/60

身勝手な願い

23話目です。今日は2話投稿しているのでそちらを先に読んでいただければ。あと少々長めです。

 「ベディさん、その顔…」あまりに醜い傷跡に、ロイカさんもかける言葉が見つからないようだった。「酷いものでしょう?これでも人の形を保っていられるだけ幾らかマシらしいです」笑いながら言ったつもりだけど、うまく笑えてるかな。なんか皆引きつったような表情してるし。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 「さて、と…少し、昔の話になりますが」ベディは傍に置かれていたベンチに座り、そう前置きして語り始めた。「今から丁度3()0()()()、当時8歳だった僕は、両親と弟、そして妹と一緒に散歩に出かけていました。その途中に大きな噴水のあった公園があって、僕たち家族は帰り道にいつもそこで、ひとしきり遊んでから家に帰っていたんです。でも、その日だけは違った」


 今でも夜ごと夢に見る記憶。千切れ飛ぶ自身の身体。襲い掛かる爆炎。そして…「…当時は世界中で無差別テロがまだ行われていました。僕たちが遭ったのもその一つ…もっとも、犯人の動機は単なる憂さ晴らしだったようですがね」そう語るベディの表情は、沈痛を通り越して無表情だった。


 「僕は爆発で瀕死の重傷を負いました。実際、かなり際どかったようです。それでもどうにか生き長らえた。そしてある日、僕は病室のベッドで目覚めた。そこで僕は、両親と弟妹(きょうだい)が爆発で亡くなったこと、そして、自分が20年間昏睡状態にあったことを知った」


 沈黙が部屋を支配する。だが、彼の話はまだ終わらない。「正直、自分が置かれてる状況とか、起き抜けで良く分からなくて…家族が死んだのも、嘘か質の悪い冗談かと思ってました。でも冷静になって、だんだんそれが真実であることを自覚しだしたんです」だが、彼の不運はそれだけでは無かった。


 「家に帰ろうにも、僕たちが住んでいた家は自然災害で流されてしまって、もう跡形もなかった。僕の帰る場所は、20年前のあの日にしか無くなってしまった。…僕は、時間に置き去りにされたんですよ」


 再び沈黙が訪れた。「じゃあ、あなたは…私と同じ…」エレメンタルの女性が恐る恐るといった様子でベディに話しかける。「ええ、貴女と同じく『全てを失った者』です。貴女と違うのは…」


 一旦言葉を切ってからベディはこう語った。「一度死のうとしたんです、首を括って。でも死ねなかった。いや、死ぬことを許されなかった、と言ったほうが正しいんでしょうね」


 彼は続ける。「何せ病院の中でしたからね。あっさり見つかって治療を施されました。でもその後、いきなり入ってきた医者に張り倒されたんですよ。まだ8歳で、しかも20年も寝ててろくすっぽ足腰も立たないというのに。そんで胸倉掴んで彼はこういったんです」


 


 (お前が死にたいと思うのは、現実に絶望するのはお前の勝手だ。だがな、お前は俺に命を救われた。俺が執刀した!血だらけで焼け焦げて生きてんのか死んでんのか曖昧な状態だったお前を救ったのはこの俺だ!だからお前には、救われた者として、()()()()()がある!でなけりゃ、俺は何のためにお前の命を助けたんだって話になる!だからお前は生きろ。この先、お前の人生がどうなるかなんぞ俺には分からん。それでも生きろ。せめて死んだときに『ああ良い人生だった』と言えるような生き方をしてくれ。それが、救われたお前の義務で、救った俺への最高の報酬であり、願いだ)


 「彼は20年前、僕の命を救ってくれた医師でした。彼が僕の命と心を救ってくれた。だからこそ、僕は生きると決めたんです。彼に負わされた責任と共に」ベディはそう締めくくり、彼女の方を見やった。


 「貴女の絶望は理解できる。それでも、貴女を死なせる訳にはいかない。せっかく助けたのに死なれるなんて、そんなの、あんまりじゃあないですか。だから、ここで約束してください。今後どんなことがあっても生き続けてください。どんな不運があっても、いつか生きてて良かったと思えるようなことが必ず起きますから。だから、生きるのをここで諦めないで。それが貴女を勝手に救った、僕の身勝手な願いです」



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 や~~~っと外に出れた。あの部屋はもう色々と澱んでて大変だったよ。空気とか雰囲気とか。とりあえずあの悪党(くそやろう)はそれはそれは厳しく取り調べられるって話だ。そりゃそうだ、文書偽造に盗品の売買や予算の横領、挙句の果てに拉致監禁。仮想敵国との密通を示す証拠も出て来たらしいから、シグさん曰く良くて極刑、悪くて根切りだそうな。だからといって同情する気には一切ならないけど。


 それから、地下室に閉じ込められていた女性たちは解放され、衛兵達によって身柄を保護された。軽く事情を聴いてから各々の生活に戻ったりするのだそうだ。エレメンタルの彼女のように行き場を失くした者には支援を行うと言うし、これについては心配無いだろう。彼女も、別れるときに笑ってくれていたし。後は少しずつ立ち直ってもらいたいものだ…


 「…あのー…」かけられた声に振り返ると、思い切りバツの悪そうな表情のクロさんだった。「ごめんなさい。なんか、君の過去を覗き見するような真似して…」見ると、他のパーティメンバーたちも一様に苦い表情をしていた。ロイカさんに至っては目尻に涙の玉を浮かべている。「あ、その、気にしないでくださいよ。別に隠すようなことじゃありませんし」


 そう言って僕らは歩き出した。目的地は町はずれの教会。「結局、あのおっさんは例の通り魔には何の関わりも無かったってことか。振り出しだな」「そうね。でもあの部屋のことを明るみに出しただけ良かった、と考えるべきなんでしょうね」そんなことを話し合いながら、僕らは歩を進めた。


 それにしても、通り魔は一体何が楽しくて人の腕を斬ったりしているのだろうか。「何らかの儀式の様なものなのでしょうが…いずれにしても邪法の類でしょうね」でしょうねぇ。いずれにしても、現状現場を押さえるしか手だてがない、か。対応が後手に回ってる感があるなぁ。


 ----------------------------------------------------

 教会に帰って来ました。ゲーム内とは言え、何だか凄く疲れたよ…「皆さん、今回はありがとうございました」そうロイカさんが言うけれど、こっちもほぼ気まぐれから始まったお節介だったし。「ん?ああ、気にしないで下さいよ。何となく『そうした方が良い』と思って動いた結果ですから」実際、きっかけは些細なことだったしね。


 「そそ。旅は道連れ世は情け、ってね」ノリよく言ってるけど、なんやかんやでクロさんとこのパーティにも手間をかけさせてしまったな…「いいわよ。結果的にいい結果に転んだし、それに『借り』も返せたしね。お互い様ってことで」


 「それでも、何かお礼をしないことには、皆様に申し訳が立ちません。なので、少々お時間いただいても…?」ええ、構いませんが。クロさん達もそれでいいみたいだし。



 「お待たせしました。皆様には、こちらを受け取っていただきたいのです」教会に引っ込んで何やらしていた彼女が持ってきたのは、七色に輝く色鮮やかな結晶体だった。


 「なぁっ…!」「…嘘だろオイ」「……!」な、なんか皆さん啞然としてますけど。()()、そんな大層な代物なんですか?「鑑定、してみて」ルナさんがそう促してきた。どれどれ…


 ======================

  エーテルクリスタル レア度:エクスクルーシブ


  原初の属性石。全ての属性を内包した、原初の魔力の結晶体。無色の魔力に属性を与えるほか、属性武器の増強器(ブースター)としても使用される。とても貴重。

 ======================

 …えーと、とりあえずとんでもないものという事はよく分かった。「とんでもないどころじゃ済まないわよ…未だにプレイヤーメイドの属性付与武器は出来てないのは、コレの所在が不明だったから。でもこれで、プレイヤーでも武器に属性を付与できる…ロイカさんこれどこで⁈」うん分かった。とりあえずユニさん落ち着いて。


 「へっ?ああ、これの出所ですね。申し訳ございませんが、私にも分からないんです。先代の神父が亡くなる前に私に預けたもので…」なるほど。ユニさんもそう肩を落とさないで。あるって事はどこかで入手できるってことだから…「彼女の友人が鍛冶職についてて、これを探して欲しいって頼まれてたみたいでね。エキサイトしたのもそう言う理由じゃないかな」ラグさんがこっそり解説してくれる。ああ、そういう…


 「それから、ベディさんにはこれを」そう言って、ロイカさんは何やら重厚な雰囲気を放つ木箱を僕に差し出してきた。「これは?」「はい。先代の神父が『然るべき時に、然るべき者に渡せ』と」然るべき者ねぇ。僕なんかでいいのかなぁ…「いいんです。あなたは正しいことをあなたの信念のもとに成した。『これ』を持つ資格はちゃんとあります。私が保証します!」そう、ですかね?「はい!」随分自信たっぷりに言うなぁ。苦笑交じりに僕は木箱を開く。そこには、布に包まれた「それ」が安置されていた。


 ======================

  雷霆棍フールミネ

   攻撃力:400

   レア度:レジェンダリ

   耐久度:-/-

   技量ボーナス(技量190):敵に対して攻撃判定が二回発生する。

   武器スキル:《愚者のアルカナ(正位置)》《不破》《雷属性+30%》

         《マルチプルウェポン:3》


  雷がカタチを成したと言われる武器。様々な表情を見せる空同様、敵対者に様々な形の死を与えるとかなんとか。

 ======================

 「またえらく物騒(チート)な武器だな…」「それから、これを」


 ======================

  「ロイカ」からフレンドコードを受け取りました。

  

    受諾しますか? yes/no

 ======================

 くれるの⁈ていうか、あげられるの⁈「はい、別に皆さんだけが使えるわけではないんですよ?」いたずらっ子のような笑顔を浮かべた後、すぐに真面目な表情に戻って彼女は居住いを直し、こちらを向き直った。


 「皆さん、この町の住人として、改めてお礼申し上げます。本当に、ありがとうございました」そう彼女がお辞儀した瞬間。


 ======================

  Hidden Quest Clear!!!

  ヒドゥンクエスト:「義を見てせざるは勇無きなり」クリア!

   報酬

    経験値:3000

    リスポーンポイント「町はずれの教会」解放

    「町はずれの教会」内の施設利用コスト減少

    スキルポイント+10

 ======================

 ⦅レベルが7に上がりました。スキルポイントを5得ました⦆

 ⦅称号「誰かのヒーロー」を入手しました⦆

 …マジすか。

いかがでしたでしょうか。皆様の応援がこの作品の養分となります。良かったらブックマーク等していっていただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ