悪意
20話目です。遅れてしまって大変申し訳ございません…
「ですから、先日今月分のお支払いをしたのでここにはお金はもう無いと言ったでしょう!」ロイカさんも負けじと声を張り上げている。あの小さな体のどこからあんな大声が出てるんだろ。(おい坊主、もうちょっと下行け。見えちまうだろ)
僕たち?教会の植え込みの外からその様子を観察してます。ってちょっと!そっちこそ見つかりますよそんなに身を乗り出したら!
「しかしねぇ、先月の支払い、あれ少し遅れたじゃあないか。延滞金を支払ってもらわねばねぇ」取り立て屋と思しき男たちの一人が証文を振りかざしながら嫌らしい顔をして言う。(あいつら、デコリんトコの子飼いの奴らだ。奴め、無法者共を「従者」と称して抱え込んで、自分の気に入らん連中に差し向けて、あの手この手で嫌がらせさせてんだよ)完全に真っ黒じゃないか。いくら血筋とはいえ…
(資質を疑う気持ちも分かる。だが、商才はホンモノでな。この町がここまで大きくなったのも奴の手腕あってこそなんだよ。だからこそ領主サマも奴を突き出すに突き出せなくて…)あー…なるほど。
「とにかく、利子分含めて600000G。あと十日以内に用意しな。でなけりゃここから出て行け。もっとも、ガキどもを抱えて行く所があればいいがな…ククク」そう言い残して、リーダー格と思しき男を先頭に男たちは引き上げていった。
「脅しはこんな感じでいいか。後は自滅を待つばかり…しっかし、デコリの旦那の女好きも大概にしてもらいたいもんだ」路地裏にて、取り立て屋のリーダーがつぶやく。「仕方ないっすよ。それに、俺たちもご相伴にあずかれるんだから良いじゃないすか。あんないい女、今までのヤマで一番ですぜ」取り巻きの一人はにやけながらリーダーに言った。それ以外の取り巻きも皆似たような表情である。
「しかし旦那も無茶をする。女一人の為だけに証文を偽造するなんてなぁ。バレたら大事だってのに」「そうっすねえ。バレたら領地没収は確定なのに。そもそもどうやったんすかねぇ」子分は訝しんでいたが、その問いにこれまた子分の一人が答えた。「ああ、簡単なことだよ。先代の神父の文字を書く時の癖を真似て署名しただけさ。なんでもそういうのを専門に請け負ってる奴がいるらしい」
そんなことを話しながら、彼らは路地裏を進んでいく。その顔には皆一様に下種な笑みを浮かべている。そんな風に捕らぬ狸の皮算用をしているが故に、
一部始終を陰からうかがっていた人影が二つあったことに彼らが気づけなかったのは当然のことであった。
「……聞きました?」「…聞いた」あいつらをこっそり尾行していった先でとんでもないことを聞いてしまった。証文は十中八九偽物だろうとは予想していたけど、その理由までは分からなかった。でもまさか、こんな下らない理由だったなんて…
「あいつらめ、自分の欲望のためにこんな事しでかしやがったのか。なんて奴らだ。…だが、これで奴らをパクれる!」うーん、でもそれじゃあ証拠が足りない。しらを切られておしまいだ。ならば、どうする⁈
「……やるしかない、か」
一週間後(ゲーム内時間)。いくつかのスキルを新たに入手し、モンスターと戦ってレベルも6に上げた。なぜかって?理由は目の前にある。
「あ~あ。俺たちいつまでこんなとこでくすぶってんだろ。やっぱ冒険者になって一旗揚げてれば良かったなぁ~」「バーカ。そんなこと言ってる時点で大成しねえよお前は。大方依頼ミスって、結局こういうとこに流れ着いてくるんだろうよ」
現在時刻、22:15。場所はドラントの町中心部、悪徳貴族デコリ氏の屋敷の前。…もう察していると思うが、これからこの屋敷に潜入する。第一目標は例の証文。とりあえずこれをどうにかすれば、ここから偽装工作の証拠を読み取れるかもしれない。その他にも、何か不正の証拠を押さえられればしめたものだ。
(レイ、準備はいい?)(しゅぃ)植え込みに隠れて、僕らは声を交わす。装備も黒一色の黒装束に変え、口元には黒の覆面。武器も刃が黒く塗られた短刀を選択。これは街で出会った鍛冶職のプレイヤーの作品だ。
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スニーキングエッジ
攻撃力:35
レア度:アンコモン
耐久度:180/180
技量ボーナス(技量49以上):スニークアタック時のダメージ上昇(30%、30%)
(技量80以上):スニークアタック時、低確率で敵を即死させる(3%)
暗殺・潜入時に重宝するダガー。黒く塗られているので暗闇だと視認されにくい。
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本当は暗視ゴーグルの類なんかあると気分出るんだけど、そんなものはない。(よし、じゃあ行こうか)(しゅー)レイが僕の左手に巻き付く。そしてそのままレイの身体が黒く変色していく。これが、Lv2になったレイが身に付けた新しいスキルの一つ、《擬態》の効果であろ。
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《擬態》Lv.2
レア度:コモン
モンスター限定スキル。周囲の風景に溶け込むスキル。
レベルボーナス:視認率ダウン(45%)
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これにより、カメレオンよろしく色を変えることができるようになったのだ。
さて、準備は万端、機は熟した。あとは、実行するだけ。
(…門番の気が緩んでる。行くなら今…ッ!)そうして、僕の初めての潜入作戦は幕を開けたのである。
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