初陣
14話目です。ええい、土日は書く時間がないぞ…!
「……なんだ!?」
聞こえてきた戦闘の音に耳を向ける。さっきからいやに気配が入り乱れていると思ったが、そういうことか!気配の内訳は、7時の方向に人が4人に、大きな何かが1、これがモンスターか。まだマップには映っていないが、間違いない。しかしここからじゃ細かいことは何も分からない。せっかくだし、ちょっと見学に行ってみよう。
森に入って幾らもいかないうちに目的地にたどり着いた。見た感じ、状況はあまり芳しくないようだ。3m程はあろうかという大猪と向き合うのは、女性が三人と、男性が二人のパーティ。指示を出しまくっているところを見ると、あの戦槌使いの女性がリーダーなのだろう。
「ルナ!左に回ってヘイト溜めて!その間に体勢を整える!」
彼女がルナと呼ばれたウサギの獣人族の少女に呼びかけると、少女は心得たとばかりに走り出し、両腕につけたクローで猪の脇腹を裂いた。その間に、リーダーと思しき女性がパーティメンバーに回復魔法をかける。いい作戦だけど、流石に一人ではきつい気が…あ、吹っ飛ばされた。やっぱり…その勢いのまま、猪が四人に突撃する。これは見ていられない。お節介かもしれないが、少々手助けしてみよう。
(《空掌》)僕の掌から見えない衝撃が飛んでいく。衝撃波は猪の牙にあたって霧散したが、それでもこちらに注意を向かせることには成功したようだ。猪が急停止し、こちらを見、今度はこちらに向かって突進してくる。僕は三角飛びの要領で木の幹を蹴って回避する。当たるもんか。
「加勢します」「ありがとう。森で出くわしたんだけど、他と比べ物にならなくて…」
なるほど。いわゆるボスなのかな?試しに鑑定してみる。
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ギガントボア Lv.8
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「……どの位戦ってました?」「だいたい15分ちょっと」
…削りきれるかなあ。まあ、どうにかなるか。そう思いつつ走り出す。少し考えれば分かる事だが、基本猪の突進は前方に向かって行くものである。つまり、正面に立たなければこちらがダメージを受ける事は無い。あとはその長い牙に注意すればいい。
「ほっ」
側面に回り込んで毛に覆われた皮を切り刻む。たまらず振り向いてこちらを向こうとしても、その瞬間を狙いすました矢が飛んでくる。その間に復帰した獣人族の少女が僕の反対側の腹を傷付ける。今度はそちらに気を取られたら、リーダーが猪の頭をメイスでぶん殴る。…リーダー、意外とアグレッシブだな。
「ギュガ!」
悲鳴が聞こえてきたが、攻め手は一切緩めない。余裕が出てきたな。いい兆候だ…だが、そんなことを考えているから、猪の急激な変化に気づけなかったのである。
「グオオオオオッ!!」
…なんか、猪の身体から煙が出てるんですが。というか、赤くなってるんですが。もしかしてそれってV-〇AXですかぁ⁈そんな風に一人ツッコミを入れていると、案の定加速した猪がこちらに襲いかかって来た。
「躱せ!」全員、その言葉と共に回避行動。でも少し掠ったせいかHPが少し削れる。猪は頭に血が上っているのか、僕らを通り過ぎて木々をなぎ倒した後も走り回っている。一応、相手のHPゲージは半分を切っているが、あの速度で暴走している相手に一撃食らわせるのは骨が折れるぞ…
「…いや、まだ手はある」
実に簡単な話だ。一撃当てるのが大変なら、一撃で終わる技を「確実に」当たる状況で撃てばいい。そう考えて、僕は《操血》を発動する。
突進が掠った時にできた傷から血液がほとばしる。パーティの弓使いの女性が目を剥いているがそんなことは気にしない。血液はしゅるしゅると身体から飛び出した後、細く、鋭い糸状に変形した。
「それで動きを止められるのか?」
大楯と短槍を持った男性が問うたが、流石にこれでは動きは止められない。細すぎるから。だからこそ狙うは…
「来たっ!」
猪がこちらを見つけて突撃してくる。パーティの面々が散開するが、僕は避けない。避けずに先端が針と化した糸を鞭のように飛ばす。いかに針状になったとは言え、あの厚い毛皮を貫徹するのは不可能だろう。でも…
「ブギィッ!」
眼球を貫いてその先の脳を破壊することくらいは出来る。
猪は僕のほんの数センチ横を通り過ぎ、そのまま土煙を上げながら横倒しになる形で倒れ込み、粒子となって消滅した。
「…あ、危なかったぁ~…」
剣士と思しき装備の男性が安堵のため息を漏らした。それはこちらのセリフです...
「あれ、何だったんだろうね…」
リーダーが発した問いに、獣人族の少女が答える。
「多分、フィールドボスの類だと思う。フィールドをうろついてる強力なモンスターがいるって門番の人も言ってたし」
へー、そうなんだ。初めて聞いたよ。
「そう…じゃあ、落ち着いたところで、こっちの話に移りましょうか。助けてくれてありがとう。私はクロ。ジョブは司祭よ。こっちの格闘家がルナで、あそこのアーチャーがユニ。んで、あそこにいる戦士がバロールで、隣の盾使いがラグね」「どうも、ランサーのベディです…」
そう言って僕は軽くお辞儀した。
「おう、いま紹介をされたバロールだ。にしてもお前さんえらく強かったなぁ。現実でなんかやってたのか?」「おばか。こっちでリアルの事を聞くのはマナー違反でしょうが。このアホは気にしないで。何も考えてないだけだから」「どーいうイミだそれ!」
な、なんかバロールさんとユニさんがド突き合いを始めた。クロさんはオロオロしながら彼らに駆け寄り、ルナさんとラグさんはそれを悟ったような眼で見守っている。
うーん、カオスってこういうのを言うのだろうか。
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