降り立った男
12話目です。FGOのメインシナリオが進まない…
光が収まり、視界に色が飛び込んでくる。そして、今まで無かったもの...人の声と歩く音が鼓膜をノックした。
「パーティーメンバー募集してまーす!」「ヒーラーかタンク役いませんかー⁈」「ヘイ、君たちジョブは何?魔術師?ねね、うちらのパーティーに入らない?」
「その武器どこで手に入れたん?」「内緒」「回復ポーション一個50Gでーす」
すごい…活気に満ちてる。こんなにたくさん人がいるのか…
「おい、そこのお前!」
この中のどれ位がプレイヤーで、どれ位がNPCなんだろう。端から見ると違いが全く分からない。「お前だよ!そこのマフラーグルグル巻き男!」
そういえば、この町、中世ヨーロッパのような街だけど、どの位の広さがあるんだろうか?
「おい!てめえ聞いて…!」
少し歩きまわってみようか。ここがどこなのか、どういった施設があるのか、周辺の地理などを把握しておきたい。知は力なりって言うし…いや、少し走るか。
「なッ…おい待て!」
「おい、あいつどこ行った!」「わかんねえよ、クソッ!」
………ふう…行ったか。全く、いきなり高圧的に話しかけるなんて。むしろこれが普通なのだろうか?いやいや、そんなことは無かろう…
とりあえず、失敬な連中を路地裏で撒いた後、この町をぐるっと一周して情報収集してみた。結構時間かかったな…扇形のこの町、端から端まで大体6~7㎞位あるみたいだから…ふらふらしてたらいつの間にかゲーム内時間で1時間半経ってたよ。
この町は《始まりの町》とあだ名されているが、正式には《ドラント》という町らしい。ここの東門がゲームのスタート地点であり、死んでしまった時のリスポーン地点という情報も入手した。…手段はほとんど会話の盗み聞きだけど。
この町はいわゆる宿場町が発展して出来たという歴史を持っているため、町のいたるところに宿泊施設が存在しているのも特徴と言える。メタいことを言えば、そこでログアウトしろという事なのだろうが。
また、西側以外の三方を山と森に囲まれているが、もとは北側にある山のふもとに作られた町だったそう。この町の住人によると、町の一番北側、扇の要に当たる箇所にこの町を収める人物の住居があるのはその名残なんだそうな。
そして、この町から西の平原を10日ほど歩いたところにあるのが、人間の種族拠点であり、この町も傘下に入っている《タブリエ王国》の首都、《リストア》である。10日か…結構かかるな。まあ徒歩ならそんなものか。
東側には、かなり大きな森が広がっているが、ここを抜けて少し行くとこの国の東の国境らしい。そこには見渡す限りの草原が広がっているそうだ。
最後に、一番重要な情報…モンスターについて。三方を山と森に囲まれている以上、モンスターの被害は住民にとって悩みの種らしく、毎年被害が絶えないとのこと。特に森は常に薄暗く、モンスターたちの生育上と化している。山の方も、山の向こうから強力なモンスターが侵入してくることもあるようで、町の防壁が全体的にやたらとゴツイのはそう言う理由がある模様。
そのため、この町には、そういったモンスター達を討伐する人たちがいる。冒険者と呼ばれる人たちだ。この人達はモンスター退治だけでなく、護衛や採取依頼等もこなす、いわば傭兵のような職業についているのだそうだ。プレイヤーは、この冒険者となることで様々な冒険をすることとなる。
今重要な情報はこんなものか。それじゃあ、そろそろ先に進もう。まずは冒険者になるために、冒険者ギルドなる施設に行って、新規登録をする。そうすれば、僕は冒険者だ。場所は町の中心部。行ってみよう。
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時刻は丁度お昼頃、ドラントの町の冒険者ギルドは今日も依頼を受ける人や依頼の完了報告をする人で盛況だった。元々、モンスターが数多く出現するが故、常に大勢の冒険者たちがいる上に、数日前から、異世界からやってきたと言う異邦人達がこぞって押しかけたため、少し前までギルドはパンク寸前だったのである。その騒ぎがようやく一区切りついたか、と職員たちが安心していた頃に、「彼」は現れた。
「ごめんくださーい…」
静寂の中でその言葉が漂う。ギルドの中はいつも騒がしい。それでも、その青年の遠慮がちな言葉で一瞬でギルド内が静かになったのは、ひとえにその異様な風体のせいだと言えるだろう。
右目を覆い隠す白い髪、口元を隠すように巻かれた長い灰色のマフラー、黒いロングコートの左手にはめられた黒い手袋、そして、まるで拘束具のようなベルトがたくさん巻かれた左脚のブーツ。その全てが、見ている者に対してそこはかとない「異物感」を感じさせるものであった。
その状況を見て、彼は目に見えて動揺し出す。
「あの、ここが冒険者ギルドで間違いないですかね…」
一瞬、青年が持つ独特の雰囲気に飲まれていた職員も、その言葉で再起動を果たす。
「え…ええ、間違いないですよ。新規の方で…?」「はい」
青年はそう言いつつ、数多くの視線に晒されながら、ギルドの「新規受付」と書かれた看板のカウンターに向かった。
「こちらで冒険者ギルドに登録を行います。こちらの紙に自分の名前とジョブを記入して下さい」
カウンターを挟んで青年の前に座った赤髪の女性が、彼に羊皮紙と羽ペンを差し出した。
「はい、受け取りました。それではこちらの水晶に手を。こちらで貴方の魔力パターンを登録します」
青年が記入を終えて羊皮紙を受付嬢に渡すと、彼女は澄んだ水晶をカウンターに置いた。
「魔力パターン、ですか」「はい、冒険者の証は魔力に反応する特殊な材質でできているので、魔力パターンを覚えさせることで身分証明を行えるのです」
彼が手を置くと、水晶が軽く光る。
「はい、OKです。これで魔力パターンの登録が完了しました。ライセンスを発行いたしますので少々お待ちください」
そう言って受付の女性はその場を後にした。
それから数分。
「お待たせいたしました。こちらが貴方のライセンスになります」
そう言われて、青年…ベディが運転免許証ほどの大きさのプレートを見ると、そこには自分の名前、ジョブ、そしてアレンジされた文字で「F」と大きく書かれていた。
「この文字は?」「これは貴方のギルド内での格付けになります。冒険者の実力を表しているもので、貴方は登録したてなので、最下級のFからのスタートです。これから仕事内容を説明いたしますので、よく聞いてくださいね」
そう言って彼女が説明した内容は、以下の通りだった。
①冒険者ランクは、最上位のSからFまで存在する。
②ランクは、依頼達成率と達成数で判断される。
③ランクアップには、ギルドの定めたランクアップ試験を受ける必要がある。
④B以上のランクの冒険者には、名指しでの依頼や強制依頼が発生することがある。
⑤ライセンスを紛失した場合、再発行料として500G徴収する。
「説明は以上になります。何かご質問はございますか?」「いいえ」
「でしたら、これで新規登録は終了です。ドラント冒険者ギルドは貴方を歓迎します、ベディさん」
そうして、彼は首尾よく冒険者ギルドの一員となったのである。
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